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【「禿げ山の一夜」の名演から8年】ヴラディーミル・フェドセーエフ&モスクワ放送交響楽団:祝典序曲「1812年」~ロシア管弦楽曲集・2【8年後のモスクワ放送響】

8月26日の記事=「晩夏のゾーッとするクラシック」第1回で、ヴラディーミル・フェドセーエフ&モスクワ放送交響楽団の「ロシア管弦楽曲集 Vol.1」を紹介しました。→【晩夏のゾーッとするクラシック・1】ロシア管弦楽曲集 Vol.1/ヴラディーミル・フェドセーエフ&ソビエト国立交響楽団【悪魔、妖怪、蛮族の乱舞】|Yuniko note 今回はその8年後に録音された同じ演奏者による「ロシア管弦楽曲集 Vol.2」です。
8年という短いような長いような年月が指揮者とオーケストラにもたらしたものについて考えます。

ヴラディーミル・フェドセーエフ&モスクワ放送響 ロシア管弦楽曲集 Vol.2 ジャケット表

曲目と演奏者

ピョートル・チャイコフスキー:祝典序曲「1812年」
アラム・ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」より「剣の舞」
アレクサンドル・ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」
ピョートル・チャイコフスキー:弦楽のためのセレナーデ

指揮:ヴラディーミル・フェドセーエフ
モスクワ放送交響楽団
モスクワ放送合唱団
1989年(平成元)6月6日~9日 モスクワ放送大ホール

前回の「ロシア管弦楽曲集 Vol.1」は、日本ビクターが当時最新のデジタル録音機をモスクワに持ち込み、ストラヴィンスキーの「春の祭典」や「ロシア管弦楽曲集 Vol.1」を録音しました。録音年月日は1981年6月15、16日。
翌82年の春に発売され、旧ソ連のオーケストラの荒々しい迫力のある音色をみごとに捉えた録音として注目されました。その好評を受けたにしては間が空き、ちょうど8年後の1989年の6月に録音されたのが、この演奏です。

演奏について

前作「ロシア管弦楽曲集 Vol.1」と比べて、「1812年」や「剣の舞」など、よりポピュラーな名曲が収録されています。
収録曲4曲のうちチャイコフスキーが2曲を占めています。まあ、ロシアで一番有名な作曲家はチャイコフスキーですから・・・・
ただ、チャイコフスキーの作風はボロディンやムソルグスキーと比べると洗練されていて華麗で、ロシアの民族的な雰囲気を味わうのとはちょっと違います。そのせいか、演奏自体も前作と比べると大人しいような・・・・

でも、今回はモスクワ放送合唱団も演奏陣に加わっており、「1812年」と「だったん人の踊り」は合唱付きのヴァージョンです。
特に、合唱が加わった「だったん人の踊り」はすごい迫力です。
チャイコフスキーの「弦楽セレナード」はよい演奏なのですが、モスクワ放送響の音色は「弦楽セレナード」にしては切れ味が鋭すぎ、美麗な音に酔いしれるというわけにはいかなそうです。

ペレストロイカ前とペレストロイカ後

これから私が記すことは、勘ぐり過ぎなのだろうとは思いますが・・・・

1981年 Vol.1を録音
1985年 ミハエル・ゴルバチョフがソ連共産党書記長に就任。ペレストロイカを進める。
1986年 チェルノブイリ原子力発電所事故
1988年 エストニアがソ連邦から離脱
1989年 Vol.2を録音。東欧諸国の革命。ベルリンの壁崩壊
1991年 ソ連共産党のクーデター。ゴルバチョフ失脚。ソ連最高会議が連邦解散宣言

Vol.1からVol.2が録音される間の8年間は、ソ連にとって激動の時期だったことが分かります。
Vol.1の充実した演奏と比べて、Vol.2が(敢えて言えば)わずかに覇気に欠けるように聞こえるのは、そうした激動の日々の社会不安を反映しているのでしょうか。それとも、ペレストロイカ、チェルノブイリ原発事故、ソ連邦崩壊という歴史上の大事件をリアルタイムで知っている私の思い込みなのでしょうか。
複雑な思いを呼び起こすディスクです。
なお、フェドセーエフ&モスクワ放送響は1991年8月のソ連クーデターの起きたまさにその日、モスクワでショスタコーヴィチの交響曲第5番を録音し、それもディスク化されています。

<次回予告>
R6.9.13-9.17 鳥取に帰ってきます-小学校&高校の同窓会 兼 取材旅行-
帰省のごあいさつです。

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