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「外国籍の方のご入居は難しいとの回答でした」

これは先日賃貸物件の問い合わせをした際に不動産仲介業者より伝えられた言葉である。この言葉の前にも、「外国籍の方でも問題ないか確認しますね」と言われていた。

日本で生まれ育ち、大学まで日本の教育を受け、日本の企業で働き、さらには現在「日本語」での執筆・編集を生業にしている私だが、「外国籍」というだけで住む場所を探す機会を平等に与えられない。これが日本の現実である。

差別ポリシーを堂々と設けている大家もしくは不動産管理会社は言うに及ばず、もっと恐ろしいのはこのポリシーを悪気なくそのまま伝えてくる仲介業者である。少なくともこれが差別であり、人権を侵害していることを認識していたらそのまま伝えてくることはしないだろう。そのポリシーに何の疑問も持たずに差別行為を行っているのだ。抗議すると「配慮が足りなかった」と謝罪が来たが、足りないのは配慮ではなく人権意識そのものである。金輪際こんな企業と付き合うつもりはないが、この「何が差別かわかっていない人が差別をする」というのはよく感じることだ。

こうした差別は去年出張であるホテルに宿泊した際にも体験した。チェックインの際にパスポートを求められたので、日本の住民である旨を伝えると今度は「在留カード」を見せろという。私は特別永住者なので在留カードはないと伝えると、今後は特別永住者証明書を見せろという。しかしそもそも特別永住者証明書に携帯の義務はないうえ、ホテルのフロントで提示を要求されるなどありえない話だ。

念のため日本国籍の客にも身分証提示を求めるのか尋ねると、それはしないという。つまり全員に対して行う身分確認ではない。では何のためかと聞いてもただ「決まりですので、申し訳ございません」しか繰り返さない担当者。埒が明かないので持っていたカード形式の証明書を渡すと断りなくコピーを取られた。

ホテルに宿泊する際に明確な説明なく個人情報を、ましてや特別永住者証明書という特定の身分証を求めること自体当然ながら問題だが、もっと愕然としたのは、担当者がその行為の意味を理解しないまま差別行為を行っている点である。私からの「何のために必要なのか?」という質問に対してすぐにマネージャーに確認するなどはせず、ただただ「申し訳ございません」でその差別行為を押し通すのは思考停止していると言わざるを得ない。

その後ホテルのマネージャーに対して、証明書を提示するよう求めた理由を明確に説明して欲しいと伝えた。特別永住者証明書に携帯の義務はないこと、そして理由や必要性なく属性によって扱いを変えるのは差別に当たることも。結局「特別永住者証明書に対する認識不足が原因」との謝罪が来たが、こちらも不足しているのは「証明書に対する認識」ではなく人権意識である。

以前「差別をふんわりと覆ってしまう残念な『映画の邦題』」にも書いたが、日本では差別や偏見に向き合うという意識が総じて薄い。そうした話題は何か「気まずいもの」として避ける人が多いように感じている。その結果たいして何も学ばず、「何が差別行為に当たるのか」を理解しないまま思考停止してしまう。そんな人たちは何も考えずに差別行為をはたらく。

毎度のことながら、こうした差別に直面するとぐったりしてしまう。そしてそのたびに絶望感が澱のように溜まっていく。でもこんな現状を変えるには、差別を受けた側がこうして声を上げるしかない。正直不当な扱いを受けている側がなぜ頑張らんとならんのだという気もするが、それをしなければ差別があるということすらまったく気付かない人が多いのが今の日本だ。だから私は不本意ながらもできることをやっていく。

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(Photo by Travis Saylor from Pexels)

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