「採用基準」〜地頭より論理的思考力より大切なもの〜 伊賀泰代

今日は、昨日一気読みしてしまったこの本を紹介します。

著者の伊賀泰代さんは、コンサルファームのMcKinsey & Company で、採用業務やトレーニングと講師などを12年間担当し、多くの候補者にあってきた。

マッキンゼーの面接といえば、一流大学を卒業した優秀な人はこぞって応募する入社倍率の高い会社のイメージがある。しかし、それでも著者は毎年求めている人材を確保するのには苦労したそう。

なぜなら、マッキンゼーが採用したい人物像が、世間から誤解されている「地頭の良さや論理的思考力が優れている人」ではないからだ。

したがってこの本では、マッキンゼーが採用したい人材、ひいては日本が必要としている人材について書かれている。これからキャリアを築いていく学生や若手のビジネスパーソンにとっては、その資質が非常に重要であるから必見!

マッキンゼー、そして日本が求めている人材は・・・

では、マッキンゼーが採用したい人材は、結論「将来Global Leaderとして活躍できる人」です。

Globalについては後ほど触れるとして、Leadershipを発揮できる人がなぜ重要なのか?それは、現状を変えていくには、他者を巻き込み意思決定をしていく強力なリーダシップが必要だからである。

たとえ完璧な解決策を考えることができても、実行できなければ意味がない。 (逆に技術的な問題はアウトソーシングできる。)

世の中には「どうすればいいのかみんなわかっているが、誰もやろうとしないために、解決できないまま放置されている問題」が溢れている。

なのでマッキンゼーでは、Problem Solving Skills<ロジシンやフレームワークを使った問題の整理・分析、解を解くための技術>とProblem Solving Leadership<解くべき課題の定義・分析設計・関連組織や人とのコミュニケーションなど>という言葉が頻繁に使われるそう。


全ての人に求められるLeadership

リーダーシップというのはリーダーだけが持つべきものではなく、全員が持つべきもの。なぜなら、全員がリーダーシップを持つ組織は、一部の人だけが持つ組織よりも圧倒的に高い成果を出しやすいから。

1人だけがリーダーというチームでは、メンバーは問題が起こるたびにリーダーの判断を仰ぎにやってくるため「指示待ち」の人になり、リーダーは全ての指示をするために時間が取られる。一方で、全員がリーダーシップを持っていれば、それぞれが直面した問題の多くをそれぞれが判断し処理される。またマニュアルでは対応できない大事件が起きた時にも、各メンバーが問題解決にあたろうとする。

だからメンバー全員が「個別メンバーとして成果を出すことはもちろん、チーム全体の意見をまとめ上げ、チームとしての結束力を高めることも自分の責任である」と考えるチームは強い。

リーダーシップは鍛えられる

そしてリーダーシップは、全ての人が日常的に使えるスキルであり、訓練を積めば誰でも学べるスキルであることを認識する。

たとえば飲み会で持ち寄ったお菓子が残っている時、「このお菓子持って帰りたい人はいますか?」と声を上げることも、リーダーシップをとっている。

たとえば、人身事故が起きてタクシーの列が長いため他の人に相乗りの声をかけるべきかもと思ったら、「○○方向の方いらっしゃいませんか」と声を上げる。

何らかの問題に気づいた時、「それを解決するのは誰の役割(責任)か」と考えるのではなく、「こうやったら解決できるのでは?」と自分の案を口にする

問題の大小にかかわらずリーダーシップを発揮する機会は日常的に存在している。だから、日常的な場面でリーダーシップを発揮しない人に、大きなプロジェクトや非常時の問題でリーダーシップは発揮できない。

リーダーがなすべきことは突き詰めると4つ

①目標を掲げる

まずリーダーに求められるのは、チームが目指すべき成果目標を定義すること。なぜなら、人が辛い環境の中でも頑張れるのは、達成すれば十分に報われる目標が見えているから。

面接で、過去にその人がどんなゴールを設置したことがあるかと尋ねられるのは、「一度でも自分で目標設定をしたことがあるかどうか」「それは十分に高い目標であるか」「高いゴールを設定することの意味を理解しているか」を聞き出そうとするためです。

「変化に対応する力のある人」ではなく、「変化を起こす力のある人」が求められる。

②先頭を走る

先頭を走るということは、自らの欲求を犠牲にせざるを得ないほど大変なこと。(逆に人の後をついていくのは相対的に楽なこと)

集団の中で新しいアイデアが披露された時に、周りの様子を伺うのではなく、すっと手をあげて「私がやりましょう」と声を上げるのがリーダー。それは、結果がうまくいかない場面も含め、そのリスクや責任を引き受ける覚悟があり、恥をかいたり損する可能性も受け入れる。議論する時に最初に発言する人、大勢が同じ意見を述べている時に異なる意見を発する人。

③決める

リーダーとは、たとえ十分な情報が揃っていなくても、時間が足りなくても、決めるべき時に決めることができる人。議論を打ち切り、決断すべきタイミングはどの時点なのか判断できる人。過去の情報を整理してまとめることではなく、未来に向けて決断すること。だから、「情報がまだ足りないので決断はもう少し後にする」と言っていたらいつまでも決断できない。

“A Bad Decision is Better Than No Decision”

なぜベストな決断でなくても、決めることが重要なのか。それは決断することで問題を浮かびあがらせることができるから。

④伝える(説明責任)

言葉によってひとを動かすことは、一定人数以上の組織/多様な価値観を持つ人が混在する場面では必須。態度では通用しない。

問題の原因や、対処方法の選択肢、選定の根拠も言葉で説明する必要がある。

許可を求めるな、失敗してから謝罪しろ

これは上司から教えてもらったことですが、

自分が正しい/やるべきと思ったことは自分で決断し、それによって起こりうる非難や苦情は自分で受け止めると決め、誰にも相談せず判断する。上司に判断を求め、その指示通りにしておけば、後から出てくる苦情は上司に流せるが、それでは指示待ち人間。

できるようになる前にやる

ではどうやったらリーダーシップを学べるのか?マッキンゼー流リーダーシップの学び方がご紹介。

①バリューを出す(何らかの成果/付加価値を生む)

たとえば「会議で発言ゼロの人はバリューゼロ」も同じ。一言も話さなければ、その人がそこにいてもいなくても、会議の結論は変わらない。ストリーミング配信で良い。たとえ稚拙であっても何か発言をすれば、他の人の思考を整理したり刺激したりする可能性もある。だからたとえ新人でも、会議中の発言ゼロは許されず、給料泥棒とみなされるらしい💦

②ポジションをとる

「あなたの意見は何か」「あなたが意思決定者だとしたらどう決断するのか」

まずは、自分の意見を言え。その後に分析の結果や理由を述べよ。なぜなら、問われるのはプロセスではなく成果であり、成果につながる可能性のある結論(メッセージ)が明確でなければ「何のための作業か分からないから」

早めにポジションをとることで、様々な問題点が浮かび上がり(たとえば外部から反対意見を集めるなど)、改善や修正を行える。

③自分の仕事のリーダーは自分

「自分の仕事に関しては自分がリーダーであり、関係者をどう使って成果を最大化するのか、それを考えるのはあなたの仕事」。なので、会議の中では、上司には何をして欲しいのか、「自分の担当分野の結論の質を高めるために」どう貢献して欲しいかと事前に考える。

④ホワイトボードの前に立つ

議論のリーダーシップをとるには、会議の参加者が発する意見を全体の中で捉え、論点を整理して議論のポイントを明確にしたり、膠着した議論を前に進めるために視点を転換したりと様々なスキルが求められる。

先輩がやるのを見ながら学んでいくのではなく、とりあえずやってみて、本当にできない部分だけを誰かに助けてもらうという方法で鍛えられる。悔しさを感じながら学ぶ!

グローバル人材の誤った認識

欧米における優秀な人の定義で決して抜けることのない項目がLeadership(他にはCreativity, Intiative, Judgement,)

チーム「みんなでやるより、自分1人で集中して取り組んだ方が高い成果が出る」と考える人に、ついて行きたい人はいない。「みんなの力を結集したからこそ、この成果を出せた」と考えるリーダーがまとめた解を、人は自分ごととして考える。

・カリスマリーダーではなく、リーダーシップを発揮できる人数の少なさにある。

・リーダーは地頭のいいひとを使うことができますが、頭の良い人がリーダーシップある人を登用し、成果を出すのはありえない。


アクションプラン


・「私がもしリーダーであれば、こういう決断をする」というスタンスで意見を述べる。(❌「ここを変えてください」「こうするべきではないでしょうか」と言った意思決定者への要請ではなく)

・会議の際は「みんなで議論したいこと」「特定のメンバーに頼みたいこと」「最終決定したいこと」などその会議の達成目標を整理して臨む。

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