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タバコとずるい人

真っ暗の部屋、2024年の2月中旬、午前3時。
私の人生は大学生も4年目に入ろうとしている。
でも、今でもコロナ真っ只中であった3年前と変わらない心がある。

大学1年生の夏が終わりかける頃、私は一人の男性に出会った。
其の人は28歳だった。
経歴だけ見ると変な人。喋ってみても変な人。
お酒は飲まないヘビースモーカーのギャンブラー。

初めは10歳上のお兄さん(というかおじさん?)、落とせたら面白い。そんな気持ちで近づいた記憶がある。話しかけられて、話して、奢って貰って、連絡取り合って、飲みに誘われて。仲良くなって。
いや、彼はきっと好きな女の子だったからじゃなくて、ただ一人の後輩としてそういうことをしていたんだと思う。
けれど私は馬鹿だから勘違いをしてしまった。
彼は私のことが好きでそういうことをしているんだと思ってしまった。
彼にとって私は特別な女の子なんじゃ無いかと思ってしまった。

でも、私は自分の気持ちに歯止めを効かせていた。というのも、好きになってはいけないと思っていたから。だったはず。

2021年10月初旬
仲が良かっただけだった関係を大きく揺るがした日がある。
初めて彼の家に二人きりになってしまった。
彼の家のベランダでタバコを吸って、花火をした。ZIPPOを貰った。
風呂を借り、彼は私の髪の毛を乾かしてくれていた。
ベッドに入る前、彼は私を抱いてくる。そして朝には身体まで抱かれてしまった。
私が分かっていたはずだった勘違いを揺るがし、歯止めが狂った。
というか、あの日からの数週間はきっと勘違いでは無くて、彼は私のことが好きだったはず。と、確信した私は彼のことが好きになってしまった。

が、クリスマスに突然悲しいニュースが耳に舞い込んでくる。
彼は前の彼女と復縁してしまった。
私はきっと歳が離れ過ぎているからダメだった、のかな?しか思わなかった。新しい彼氏が私にできたら私は諦められる、とも思っていた。このまま、仲良く友達に戻って普通の関係に戻れると思っていた。
ここからずっと引きずることになるとは当時の私は気づいていなかっただろう。

2022年4月末
3月に私には彼氏ができ、これで忘れることができる(忘れなくちゃ)という最中、彼からご飯の誘いが来た。
普通に仲が良かったから、普通にご飯を食べて他愛無い話をしてタバコを吸って帰った。
今思うと何でご飯に誘われたのかわからない。ただ暇だったからなはずがないと思っているけどきっとこれは考え過ぎだ。
そう、彼はとても変な人。何を考えているかわからないんだから。

2022年10月中旬
彼にはもうチャンスがないと思い込んでいた私はなぜか飲み会の帰りに先輩2人と彼との4人で、一年振りに彼の家に行くチャンスが訪れる。
他二人がいるのに関わらず、彼とはベッドで寝かせられる私。
腕枕をして、頭を撫でてくる彼と寝たふりの私。
嬉しさか悔しさか懐かしさかわからない感情に惹かれて、出てきそうになる涙を抑えて、静かにキスをして寝た記憶がある。
その次の日には抑えきれなくなった好きだったという感情を全て彼に声で吐いた。結果そんなこと今までずっと想われているとは思わなかったと謝られて、外方を向き、二人で寝た。
この日は悔しさで泣いていた。

そして、2023年が明ける。
何故か終わったと思った彼とは私を直面に振った日から絶えず連絡を取り合っていた。
年が明けた後、私は数回彼の家に泊まりに行くことになる。二人きりだったり、他の人がいた時もあったが。
でも、いつでも彼とは二人でベッドで寝る。私が強引に入る時もあったが、大抵はこっちで寝るでしょ?という顔をされるのだ。本当にずるい。
直面で振られたのが嘘なんじゃないかと思う、くらい抱き合って寝るんだ。
キスはしない、セックスもしない。ただ寝るだけ。
なんでだったんだろう、抱き合って寝て。彼が仕事に行く前には私に布団をかけて彼は出て行く。
夏頃までこのような関係が続いた。好き度は増して行くばかり。
でも、彼には彼女がいて付き合ってはくれないんだ。という気持ちを忘れずに、、関係を保っていた。

2023年11月
彼と二人でご飯に行くことはあまり無かったのだが、その日は何故か誘われて、行くことになった。日付は決めていたが、連絡が途絶えたから忘れている。と思っていた矢先、その日の朝に彼から連絡が来た。
「今日、どうする?」

夕方ごろに行きたかった店の最寄りで待ち合わせ、カレーを食べに行った。
彼は1時間遅れて来たが、心を整えるには良い時間だった。
出会った彼は黒いブーツに革ジャン。私のデートコーデは黒いロングブーツに革ジャン。側から見たらカップルだろうという格好であった。

カレー屋に並んでいる時、彼は珍しく彼女の話をしていた。珍しくというか、私が彼の口から彼女の話を聞くのは初めてだった。愚痴ばかりだった。腹いせか?と思ったけれど。

「食べられなかったら食べるからおいといていいよ?」
量が多く、食べるのが遅い私にこういうことを言ってくる。
本当にずるい人だ、私が好きだと知っていながら。
そんなことを思いながら彼の頼んだカレーを少し貰い、私のカレーを少しあげた。

カレー屋を出た私達は少し散歩をしてから、ダーツ屋へ行った。
ダーツ屋に来るのは想定内だ。ただ、ダーツを買って貰うのは想定外だった。まさか、本当に買ってくれるとは…と思いつつ初マイダーツを手にタバコを吸いながら投げる。
好きじゃないただの後輩に渡すものではない。友達でさえ、そんな値段は出さないだろ、というもの。え、ていうか私があなたのこと好きなのしっているよね、と思いながら。なんなんだ、本当に。

ダーツを投げ終えた私たちは外に出た。
23時前。帰宅にはちょうどいい時間だ。
「シーシャ行きたい」と彼は言った。
「今から行くと終電無くなるんだけど…?」
「明日何かあるの?」
「無いけど…」
「朝まで一緒にいよ」
こういうところだ。彼の罪は重すぎる。

隣で煙を吸う。タバコを吸ってはシーシャを吸う。
肩は当たっている。背は小さいくせに肩幅だけは大きい。
隣あって微笑んで話している。同じ空気を吸う。同じ飲み物を飲む。
はぁ、大好きだ。私はこの人のことがやっぱり大好きすぎる。
なんて思いながら、時間は朝の3時。タクシーで一緒に帰ろうと彼は言う。

タクシーを後にお酒を買い、一缶を二人で分けながら寒い夜の東京を歩きながら帰った。
帰った後は、ベランダでタバコ。
彼の家のベランダには背もたれのある椅子が一つある。
そこに座った彼の膝の上で吸うタバコが一番美味しいんだ。
火を付け合って、灰を落とす時は前に屈むから、私が落ちないようにぎゅってしてくれるんだ。

タバコを吸って酔いが回った私たちはいつも通り同じベッドに二人で寝る。
その日はいつもとは違う雰囲気だった。
彼は私のことを強く抱きしめている。そして、私もだ。
「私、あなたのことまだ大好きなんだけど、知ってる?」
言ってしまった。一年前に倣ったはずだった二回目の告白。
もちろん付き合ってくれる訳はない。彼女がいるからね。
「俺のどこがそんないいのさ。」
どこがとかじゃない。私はわからなかった。勘違いから始まった好きという気持ち。でもここまで来ると止められないんだ。
ていうか、「私のこと好きでしょ?」としか思えない行動ばっかじゃんか。

「好きだよ。」

えー、好きなんだ。好きなら付き合ってくればいいじゃんか、と思いながら、付き合えない理由は彼女と簡単に別れられないのが大きいだろうし、他の理由があるとしたら何となく分かっているから聞くのも無謀。私にも彼氏がいるし、何とも言えない。
「彼氏よりずっとずっと好きだけどね。あなたの彼女より良い女の子だよ。」
と言いながら、その日は抱かれた。
「今日だけだよ。」と言われながら。

今日だけのはずだった。
その日からグッと距離が縮まった私たちは結局年内に4回お泊まりをする。
もちろんそれまで無かった距離感で寝る。
夢かと思っていた。このままこの関係がずっと続けば…とも思った。

が、そう簡単には続かない。普通の友達に戻りつつある。

2024年2月
私は彼の家には2ヶ月ほど行っていない。彼とは二人でご飯に行くことはあれど。距離感は縮まったり縮まらなかったりするままだ。

私のこと、好きになって欲しい。そう願い、彼に囚われ続けて早3年。
大好きで大好きでしょうがない。心の底から愛している。
私しか知らない彼がいて欲しいといつも思ってしまう。

ほっぺが柔らかいところ。寝る時はメガネを外さないところ。
シャンプーはメリット、ボディソープはニベア。
朝、起きてから外でタバコを吸いながらゲームするところ。
タバコ吸ったけど眠たくて布団にもう一度戻ってくるところ。
お風呂に入った後のあなたの匂いもタバコを吸って布団に帰って来た時のあなたの匂いも大好きなんだ。
そして、私を抱き枕にして寝るあなた、私の体に布団をかけてくれるあなたが大好き。布団は口元まで覆わないと寝れないんでしょ。
私があげた誕生日プレゼントを毎日会社で使っているのも、あげたぬいぐるみが部屋に飾ってあるところも大好きなんだから。

出会った時は18歳。もう私は21歳だよ。
28歳だったあなたはもう31歳。
今の彼女と結婚なんてしてほしく無いよ。私と幸せになって欲しい。

こんなに大好きなこと知っているくせに、優しくしてくるんだからさ。
辞めたいけど辞めれないんだ。
本当にずるい人だ。
愛してます、ずるい人。

あなたと吸うタバコが一番美味しいよ、馬鹿。
だから、辞めたいけど辞めれないんだ。
全く、ずるい人だ。
世界で一番愛してます、ずるい人。


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