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浮気症

彼と遊んだ。
彼氏ではない、片思い4年目に突入した違う彼の方だ。(前の記事参照)

ここ最近はたまに遊ぶ仲だったが、去年末までの仲良さは無く、ご飯を食べて少し遊んで終電では帰るという仲だった。
もう私はそれが限度だと思っていたし、そう多くは求めようなんて思ってもいない。毎日連絡をくれるだけで嬉しいし、何かがきっかけでご飯を一緒に食べれることが幸せだった。それ以上になることに対しては前よりかは希望を持っていない。

しかし、一昨日の夜遅くに、LINEで「ひま」と言われた。こんなことはかなり珍しい。相当暇だったんだろう、忙しい人だからどうせ暇すぎて呟きたくなったんだろう、と思い、「明日の夜なら暇だよ」と言った。そうしたら、「俺も」って返って来た。でも、自分から誘うのも狙いすぎかと思い、そのまま話題を変えて気づいたら次の日の昼になっていた。

「起きた、すぐ出れるよ、どこいく?」
遊ぶんかい。と、思いながら内心はニタニタ。誘われることなんて滅多に無い。まあ、いつものようにご飯食べてダーツして帰るだけだろうなと思っていた。でもなんか今日は行ける気がする。そんな気持ちもあったので「シーシャ行きたい」といつもと違うルートになるように道を傾かせた。

午後7時に駅で待ち合わせ。
二人とも同じ時間に到着し、いつもの駅なのでいつも通りにばったり出会う。
「今日、距離近い…!」なんとなくそう思った。
お腹が空いていなかったが、喉が渇いていたので、雨の中コンビニで買った紙パックのジュースを二人で飲み、マックで少しご飯を食べた後、いつも通りダーツを投げる。調子は良かったり悪かったり。二人でよく行くお店だったため、店員さんは顔を覚えていてくれている。カップルって見られていてほしい。いつも投げながらそんなことを考えている。もちろん、そんなことを考えながら投げた矢は思うようには飛んでくれない。

終電まで残り2時間。終電に乗るにはちょうどいい時間でシーシャへ移動する。横並びの席だ。2人の間には少し距離がある。
シーシャは一台、フレーバーは私たちが好きなすっきり系の味。マウスピースは変えずに吸う。いろんな話をしながら煙を吸う。
彼はきっと帰る気だった。だから1時間で味が終わるレギュラーを頼んだのだろう。
シーシャの味が切れた。終電の時間は迫っている。
私は気づいていた。でも、彼は気づいていなかった。私はもっと一緒にいたい気持ちが勝ってしまった。

「あ、終電ない」
もちろん演技だ。でも好きな人を目前に帰るなんてことは出来ない。
「あーあ。」
彼はそれだけ言って、また話の続きをした。まるで逃していたことを分かっていたかのように。
そこから、話すわ、吸うわ、飲むわ。時間は午前2時を回っていた。酔いもいい感じに回っていた。距離があった私たちの距離は近くなっていた。彼の腕は私の肩の上にあった。

隣の席のカップルが帰った10分後に、「さ、帰ろか。」と頭を撫でられた。体が自然に寄りかかってしまう。久しぶりに心臓がギュッってなった。

会計を済ませて、すぐタクシーに乗り、彼の家まで向かう。
車内では何の脈絡もなく音楽の話になった。二人で音楽を聴きながら口ずさむ。
『どうかこの夜が 朝にならないで 強く思うほど 願うほど』/「C7」GO!GO!7188
これを流して二人で口ずさんでいるのは大罪だ。

家に着いた私たちは、ベランダでタバコを吸う。もちろん彼の膝の上に座って吸う。彼は私の腰に手を回し、今日も膝の上から落ちないように支えてくれる。後ろに沿うと彼の頬と私の頬があたる。

ベランダを後にして、洗面所で二人で歯を磨く。何を言っているのか分からなかったが、向かい合って会話をした。私は鏡越しで彼の顔を見ていた。

ベッドに入る。腕枕をされる。戯れ合う。
気づいたら唇が重なっていた。私は気持ちが止められなくなってしまった。いつもは控えめにいっていたが、昨日は違った。激しく何回もキスをした。
体を重ねることは途中でやめてしまったが、たくさん触られ満たされた。

力強く抱きしめる。彼も私の事を力強く抱きしめてくる。
「好き?」と聞いたら、無視された。
「好き?」ともう一度聞いたら強く抱きしめられながら「嫌い」と言われた。
質問を変えて「好きでいてほしい?」と聞いたら「お互いに相手がいるでしょ?」と言われた。私は拗ねた。そしたら、こんな自分を好きで居続けてくれるなんて「変わりもんだね。」と言われた。お前もな、と思いながら私は無視をした。

外は明るくなってきた。彼の頬には私が擦りつけたアイシャドウのラメが付いている。彼の腕はまだ私の下と上にあり、強く抱きしめられている。
その腕を強く握り締め、「大好き…」と呟いて私は目を閉じた。

起きては寝るを繰り返して、気づいたら昼の2時だった。
風呂に入り、ゲームをして夜の6時に先週行こうと約束していた焼肉屋に連れて行かれた。ほっぺがとろけ落ちるほど美味しい肉だった。前にあるニュース番組を見ながら肉を頬張る。好きな人に食べさせられる肉は絶品だ。肉が美味しいのか、幸福度で美味しく感じるのか、そんなことを考えながら次々と肉を口に運んだ。

別れの時間が近づく。幸せな気持ちと訪れるかわからない幸せへの不安と寂しさに襲われて心はぐちゃぐちゃだった。
帰り道、私は久しぶりにいつもとは違う表情をしていたことに気づいた。
楽しかった時は本心で笑って、褒められて嬉しかった時は心から笑顔になり、身体を触られていた時は彼氏とする時とは全く違う表情をしていた。

満足感が高いのはこれが浮気だからだろうか。それとも、相手がずっと好きな人だったからなのだろうか。

今まではこれは浮気じゃない、純愛だと貫き通してきたが、ここまで相手の彼女の存在を認識してしまうと、彼は私に浮気をしていて、私に付き合うチャンスはきっと無いのだろうと諦めてしまう気持ちが出てきた。
それでも彼を求めてしまう私は罪人であり、如何に彼に固執してしまっているかが理解できる。

だから、この満足感は”浮気だから“あるものなのだろう。
そして彼はこれを“浮気“として認識してしまった。だから昨日は私に対する好意が溢れていた。最近はずっと溢れている気がする。そして、それを私が分かってしまったから私はいつもとは違う満足感を得てしまった。

去年の12月までは本気で付き合いたいと思っていた。
でも私は今の彼氏と付き合って1年が経ってしまって、彼は結婚を考え始めてしまって、彼を好きになった3年前とは全く別の状況になってしまった。
そろそろ付き合えると希望を持てることに関しての時効を感じている。

でも繰り返し彼との”浮気“を求めている自分に腹が立ってしまう。
断ち切れたらどれだけいいか。
彼も同じ気持ちなのだろう。だから頑なに「好き」とは言ってこない。でも強く抱きしめてくる。私といる時だけにしか見せない笑顔もある。

互いのパートナーに知られてはいけない。相手のパートナーには絶対に関わってはいけない。
見せかけは友達。でも、私たちは付き合えない運命を持った好き同士。
こんなことにロマンを持って興奮してしまう私は”浮気“をしてしまっている。
そんな私から離れられない彼もまた”浮気“をしてしまっている。

前の彼氏に「浮気は病気。浮気をする奴は浮気しているのが好きで、繰り返すんだよ」と言われた記憶がある。
ああ、私は浮気をずっと繰り返していたのか。
気づきたくなかったことに気づいてしまった気分だ。

彼との恋愛は病だ。彼の私との恋愛もまた病だ。

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