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OnlyOneOf "savanna"&"desert"考察

こんにちは、ゆんです!この記事ではOnlyOneOfの"savanna"と"desert"についてフランスの詩人と哲学者、そして聖書の観点から考察しました。少し長いですが、ぜひ見ていってくださいm(__)m

なぜ"savanna"と"desert"?

"savanna"はOnlyOneOfのデビュー曲であり、"desert"は次のミニアルバムの収録曲。関連はないかと思っていましたが、"savanna"の歌詞を見ているうちに"desert"と重なる部分が出てきて色々と調べた結果、この考察を書くに至りました。そしてこの二曲に関して、『太陽と月に背いて』*1というフランス詩人ランボーとヴェルレーヌのお話をもとに考察していきます。

ランボーについて

ランボーはフランスの詩人でした。しかし詩人として詩を書いた期間は短く、10代~20代の間だけでした。ランボー自体は母子家庭で育ち、よく家出をしていたそうです。ある日、ランボーは既に詩人だったヴェルレーヌに自分の詩を見てほしいと手紙を出します。詩を見たヴェルレーヌがランボーをパリに招き、二人の親交が深まっていきます。ヴェルレーヌがランボーを一言で言い表すと「風の靴を履いた男」というほど、彼は自分の世界を追い求めていくような人物だったことがわかります。

ヴェルレーヌについて

ヴェルレーヌはランボーよりも10歳年上かつ18歳のマチルドという若い妻がいました。ヴェルレーヌは母親に溺愛されて育ち、いつもはっきりしないどっちつかずな人だったといいます。ある日、ランボーが送ってきた手紙を詩を見て、才能や秘められた荒々しさに惚れこみ、すぐにランボーをパリに迎え入れます。出会ってからは彼に夢中になりますが、かと思えばランボーを置いて妻に会いにいったりと、ランボーからしっかりしてくれと頼まれるような「哀れな兄貴」でした。また、ヴェルレーヌはそんな自身の弱さから妻に度々暴力を振るってしまいます。その一方でランボーから暴力を受けることもありました。

『太陽と月に背いて』あらすじ

ヴェルレーヌから届いた手紙の返事がきっかけでランボーは家出し、ヴェルレーヌのいるパリに出向きます。夜は一緒にバーでアブサンを飲み、妊娠している妻を置いてヴェルレーヌはランボーに夢中になっていきます。ところが、パリにうんざりしてきたランボーが突然「パリを出る」と言い出すと、すかさずヴェルレーヌも後を追うようにパリを出てしまいます。ランボーは夢見ていた「白い大地と風にはためく白い布」、「海」、「太陽」を探すために、そしてヴェルレーヌは彼に導かれるように外国を転々とします。しばらくの間は二人で人目を気にせずに楽しく過ごしていましたが、二人の違いから徐々に亀裂が生まれます。ヴェルレーヌは妻と再会したことで心が揺らぎ、彼女とランボーの間を行ったり来たりした結果、妻がついに離婚訴訟を起こしてランボーとヴェルレーヌの仲を引き裂こうとします。再びヴェルレーヌはランボーと再会しますが、不安定なヴェルレーヌは購入した銃を乱射させ、ランボーの左手を撃ってしまいます。その傷が癒えた頃、また去ろうとしたランボーを引き止めるために銃口を向けますが、恐ろしくなったランボーは警察に通報してヴェルレーヌは刑務所行きになります。

それからしばらく経ち、ヴェルレーヌの出所後にランボーと再会しますが、二人はそれ以降会わなくなってしまいます。ランボーは太陽を求めてアフリカへ渡り、ヴェルレーヌはパリで有名な詩人として名を立てました。ランボーは37歳の時に病気のため死亡し、さらにヴェルレーヌもその知らせを聞いた翌年に死亡してしまいます。

"savanna"ーランボーの視点から

ここからは話を曲に戻していきます。"savanna"と"desert"がランボーとヴェルレーヌの話だとしたら、歌詞などから"savanna"=ランボー、"desert"=ヴェルレーヌをイメージしているのではないかと考えました。そのうえで、まずは"savanna"の歌詞をランボーの視点から見ていきます。

[MV] OnlyOneOf (온리원오브) - "savanna"ーYoutubeより

歌詞和訳フル:ゆん OnlyOneOf"savanna"日本語訳より
(繰り返し部分は省略します。)

너와 마주 볼 때
君と向かい合うとき
메마른 입술이 트이고 갈라지는 게
乾いた唇が開き割れるように
물을 계속 마셔도 자꾸 목이 타 왜
水を飲み続けてもなぜか喉が渇く
Drinkin’ all day
一日中飲み続ける
이 분위기에 몸을 더 태워
この雰囲気に痺れる
I gotta overdriving, overflowed
駆り立てられ満たされた

뒤엉켜 있는 사람 사이로 몸을 또 숨기네
もつれ合っている人の間でまた身を隠す
갇혀 버린 것 같아
閉じ込められてしまったようだ
Like a jungle jungle 약육강식
弱肉強食のジャングルに
너와 몸이 맞닿아
君と触れ合う
Ride me on the river of time
時の川を流れていく
Lay your head down yeah
横たわって
I know you need it
君が必要としているのはわかっている
I don't give up shake what they think about us
奴らに分からせてやる

같이 적셔 맘대로 취해도 돼
この波に心のままに酔いしれて
지도가 필요해 찾고 있어 savanna
地図が欲しい savannaを探している
Trail to quarry
源泉への小道
You're like a beach from savanna, Beach from savanna
君はサバンナの岸辺のよう

Watchin' all your silhouette
君の影を眺める
한 번 더 마셔 Sweepin' huh
もう一度飲み干して
내게 몸을 맡겨줘 너는 바다가 돼
身を任せて 君は海になる
부드럽게 내게 밀려와
そっと押し寄せる
You knows how to tease me
からかわないで
You knows how to do it
知ってるくせに
짧은 숨을 또 뱉어내
またため息をつく

넌 딴 생각 하지마
他のことは考えないで
Nobody knows here
ここは誰も知らないから
여기엔 없어 단 둘이만
ここには僕らだけ
Baby you can take my time
焦らないで
Baby you can stand by ma side
そばにいて

歌詞の中に何度も「水」や「海」の象徴が出てきましたね。「水」については下のsavanna&desertまとめにてご紹介します。

「海」というと、あらすじにてランボーはそれを追い求めていたと書きましたが、ランボーが海に強い憧れを抱いていた理由は幼少期にあります。ランボーが幼い頃、父親が家を出て行ってしまい、それっきり会うことはありませんでした。そんな彼にとって海とは「消えた父親のような存在」であり、ヴェルレーヌに抱きついたときには彼に父のような雰囲気を感じ取ったそうです。

"desert"ーヴェルレーヌの視点から

[Audio] OnlyOneOf (온리원오브) ‘desert’ーYoutubeより

歌詞和訳フル:ゆん OnlyOneOf"desert"日本語訳より
(繰り返し部分は省略します。)

tell me where to go
僕を導いて
조금씩 네게 다가갈수록
君に近づいていく
깊이 빠지는 듯 해
深く嵌ってしまったようだ
stuck in the desert
この砂漠に
tell me where to go
僕を導いて
혼자서 그냥 남겨진 채
1人で取り残されたまま
나가는 길을 찾고 있어
出口はどこだ
but it ain't simple
簡単じゃない

태양은 더 짙어지네 보이지 않는
太陽がさらに熱くなる 見えない
끝자락 저 너머에
終わりがあの瀬の向こうに
계속 떠 있는 그림자 넌 어디에
浮かぶ影 君は今どこに
보이지 않는 midnight 끝없는 낮
見えない夜中 終わりのない昼
방향을 정해도 늘 제자리인 걸
行く道を決めても留まってしまう
빙빙 돌아가는 건 여전한 걸
ぐるぐると彷徨うのは常
발목을 잡는 수많은 모래알들도
行く手を阻む砂
우린 메말라가 like desert
僕らは砂漠のように乾いていく
굵게 내린 비에 젖길
降り続く雨に濡れた道
매번 기도하면서
祈りながら
thinkin that i don't need any fancy things
もう必要ないあんなもの
네가 남긴 추억 그 속에 잠겨
君の記憶 それに浸る僕
허우적댈 때 가까워져 가 나 너에게
もがきながら君に近づく

지평선 한가운데 위
地平線の上
내리쬐는 햇빛 Is it raining
降り注ぐ陽光 雨か?
갈라져 버린 관계 속 위기
割れる関係 そこに潜む危険
우린 필요해 젖어버릴
僕らには浸る何かが必要なんだ
something baby 멀지 않는 그곳에
もう遠くないあの場所へ
그늘진 밑에 머물고 싶어
日陰で休んでいたい
알 수 없는 이곳에 표류된 나
まだ見ぬ場所に彷徨う僕

아문 기억 forget too
記憶は捨て
아무 감정 없는 둘
感情のない二人
피우지 못할 너와 나의 관계 true
避けられない君と僕の関係
잠시 젖어버렸다가 지나간 비처럼
少し降っては止む雨のように
말라버린 감정도 지나갈 줄 알았던
乾いた心も消え去ると思っていた
Why are you staying in my world
でも君はなぜ僕の心にいるんだ

この曲では歌詞の「彷徨う」という表現がまさにヴェルレーヌのようだと感じます。ランボーと妻の間を彷徨ったり、『太陽と月に背いて』では「おれたちは多分、生きることはできない、流れていくことしか」と、この世界に生きることに対して退廃的な態度を取っています。詩を書くことによってのみこの世界に存在すると考えていたのかもしれません。
そして"savanna"では歌詞で「海」があったのに対して"desert"では「太陽」があったのにお気づきでしょうか。

また、「雨」が何度か出てきます。ヴェルレーヌは「忘れられた小唄Ⅲ」*2という詩の中で雨を涙に例えています。これも「水」との関連が考えられるので、詳しくは下のsavanna&desertまとめをご覧ください。

"savanna"&"desert"まとめ

ここまでそれぞれの曲の中の特徴をご紹介しましたが、二曲の中に「水」、「乾き」、「割れる」というワードが共通であり、二曲で「太陽」と「海」についての歌詞がありましたね。

ランボーはずっと「太陽」や「海」、「白い大地と風にはためく白い布」を追い求めていましたが、ついに「見つかったぞ。何がだ—永遠。太陽と手をとりあって行った海。」という詩の言葉をもって、自分が真に求めていたものを「永遠」としました。*1 太陽と海、これは恐らくランボーとヴェルレーヌのことなのでしょうが、これが象徴しているのは「創世記」が由来なのだと思います。旧約聖書の創世記*3によると、

初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、…神は光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。…「の中に大空あれ。を分けよ。」神は大空を造り、大空の下と大空の上にを分けさせられた。…「天の下のは一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。


ランボーとヴェルレーヌを例えるならば太陽(=天)と海(=地)になり、それらが最初には混沌だった=彼らはかつて一緒で永遠の存在だったのではないでしょうか。また、彼らを一つにしていたのはだったため、水に関する表現は以下の歌詞に良く表れているように感じます。

①desert

지평선 한가운데 위
地平線の上
내리쬐는 햇빛 Is it raining
降り注ぐ陽光 雨か?
갈라져 버린 관계 속 위기
割れる関係 そこに潜む危険
우린 필요해 젖어버릴
僕らには浸る何かが必要なんだ

②savanna

너와 마주 볼 때
君と向かい合うとき
메마른 입술이 트이고 갈라지는 게
乾いた唇が開き割れるように
물을 계속 마셔도 자꾸 목이 타 왜
水を飲み続けてもなぜか喉が渇く
Drinkin’ all day
一日中飲み続ける

地平線というと天と地の境界線で、その関係が割れる…混沌は去り、天地が創造されることを意味していると思います。水(雨)を渇望しているのはかつて彼らを一つにしていた水が彼らにとっての希望だったからでしょうか。

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『ウロボロス』ーWikipediaより

また、混沌は永遠の象徴でもあります。古代ギリシャからある永遠の象徴「ウロボロス」*4は自分の尾を噛み、「O」の形を作っています。これをふまえると、OnlyOneOfがOにこだわるのは相反する概念の一体化や完全性がキーワードになっているという可能性も考えられます。


"savanna"がデビュー曲だった理由

ここまで"savanna"と"desert"について考察しました。ここでは"savanna"がなぜデビュー曲だったのかについて考えてみたいと思います。

公式YouTube にて”savanna”は、

『ボーイズグループの中で生き残ることは”savanna”の歌詞にもある「like a jungle, 약육강식(the law of the jungle)」に等しい。』『OnlyOneOfのデビュータイトル曲”savanna”は禁断の果実の意味を込めた曲だった。』

と説明されています。(ゆん:"savanna"解説より)

갇혀 버린 것 같아
閉じ込められてしまったようだ
Like a jungle jungle 약육강식
弱肉強食のジャングルに

続いて、「ジャングルに閉じ込められた」についてサルトルの考えから説明していきます。サルトルはフランスの思想家、哲学者、小説家などと広く活躍していた人物です。小説では『嘔吐(La Nausée)』が有名です。OnlyOneOfのアルバム「Instinct Part2」でも同じタイトルの収録曲がありますね。そしてサルトルは物のあり方と人の存在について、物は先に目的があって作られるが、人間は先に生まれてその後に目的を探して生きると唱えました。さらに、人間は自由の刑に処せられているとも言いました。ある意味、この世界に閉じ込められたようなものです。このように考えると、ジャングルに閉じ込められた=禁断の果実を取ってこの世界に投げ出され、OnlyOneOfが誕生したことを示した捉えることができると思います。


最後に

長くなりましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。OnlyOneOfの魅力が伝われば嬉しいです。


―参考文献―
*1 黒田邦雄訳『太陽と月に背いて』1996年、徳間文庫
*2 宇佐美斉『象徴主義の光と影』1997年、ミネルヴァ書房
*3 日本聖書協会『聖書―新共同訳』創世記
*4 Wikipedia『ウロボロス』
*5 澤田直『新・サルトル講義―未完の思想、実存から倫理へ―』2002年、平凡社

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Twitter: ゆん @Yun_o_o_o

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