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MANKAI STAGE 『A3!』 ACT2 ~SPRING 2022~ 香川公演観劇記録

はじめに

※ATTENTION※
今作を東京凱旋公演中に初観劇予定の方、大千穐楽の配信で初めて見る予定の方は、どうかこの記事をすぐに閉じてください。
どうかなんの前情報もなく作品と出会ってください。
初めて作品を観る時に感じる衝撃に身を委ねてください。
それがまだ出来る方が本当に羨ましい。

東京公演千秋楽の配信視聴済み。
香川公演1日目、2日目マチソワ合計4公演観劇。
ネタバレ含んで感想を書いていきますので、作品未観劇未視聴の方は閲覧ご注意ください。
主には香川公演の感想がメインですが、東京千秋楽配信の内容も入り乱れると思います。
ビックリするほど文章長めです。

作品概要等は下記の公式サイトで御確認下さい。


劇場のススメ

実に3年振りとなるMANKAI STAGE 『A3!』(以下「エーステ」)の本公演が始まった。
過去、コロナの為に冬組公演が中止となった香川公演を含む東京、兵庫、香川の3都市4会場での開催だ。
Four Seasons LIVE 2020(以下「フォーライ」)、Troupe LIVE(以下「トルライ」)がずっと東京公演のみだったことを考えれば、本当に久しぶりの地方公演を含む本公演だ。
公演会場の発表があった時に香川会場の文字を見て、四国在住の私が歓喜したのは言うまでもない。
遠征に行くのに瀬戸大橋か明石海峡大橋を渡らなくていい。
エーステ側から四国に来てくれる。
しかも、最推しである春組が!!!
もう、今行かずしていつ行くというのか!!!
私のこれまでの自粛期間は全てこの日の為にあったんだ!!!
と、日程的に無理のない香川1日目と2日目の4公演を申し込んだ。
まさか全公演当たると思っていなかったので、心底驚いたが、エーステの会場に行けなかった3年分が一気に来たと思って堪能しようと決めた
しかし、初めての劇場での観劇にあたり、私には一つ悩みがあった。
東京公演千秋楽の配信を見るか見ないかということだ。
せっかく初めて生で見ることが出来るのに、事前に配信で見てしまうのはもったいなくないだろうか。
作品との初めましては劇場の方がいいとは分かっているが、オミクロン株に置き換わってからは急に幕が下りることもある。
見られるときに見ておくことが大事ではないだろうかと色々と自分の中でせめぎあいが起こっていた。

悩みに悩んで、私は配信を視聴することを選択した。
けれど、見終わった瞬間に後悔したのだ。
「この作品から受けた最初の衝撃を最初に画面越しではなく、劇場で感じたかった」と。
それだけ作品が素晴らしすぎた。
配信を観たことに全く後悔はなかったが、もう何も知らない状態で舞台を観ることは出来ないので、ただただこれから劇場で作品と初めましての体験する人たちが羨ましくて仕方なかった。

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何がズルいって冒頭シーンがロミジュリの劇中劇から始まる点に尽きる。
シトロン演じるロレンス神父にスポットライトが当たった瞬間、私は今何が始まろうとしているのか全く理解できなかった。
そして、次々とロミジュリ衣装で登場してくる春組キャスト達。
正直に言っていい?
私、ティボルトの衣装を着た至さんの姿を直接見る日が来るなんて思っても無かったから、ティボルト至が出てきた瞬間一瞬心臓が止まるかと思ったよね…。
(観劇を重ねると余裕が生まれてくるので、3回目辺りではお衣装のディテールとか小道具のもって来かたとかマニアックな所を重点的に見てたんだけど、ティボルトのお洋服のお袖が想像していたのと違っていて、「この衣装そんなデザインだったんだ!? 幸ちゃん凄いな!!!」って、1人でテンション上がってた)

この劇中劇はMANKAIカンパニーの地方公演。
地方公演から春組メンバーが帰ってくるところからOPへと続いていく。
香川公演の時は、地方公演のお土産がリアル香川土産で笑ってしまった。
4回中1回は「うどんパイ」で3回が「かまど」だった(笑)
5/14ソワレの時はシトロンがかまどのパッケージを真剣に読み始めてからの密に無茶振りしに行ったので、珍しく密がおめめ真ん丸にしてて可愛かった思い出。
個人的に「灸まん」もおススメではあったけど、あれはスタッフさんがわざわざ現地調達したのかな?

そして、始まるOP
今回作品全体を通して思ったのは、歌声に重厚感が増したということだ。
元々高音と低音のハモリは有ったけれど、今回はその二つの中間部分の音をよりカバーするような形で歌声に厚みがついているように思う。
だから、歌声の音圧が最高に気持ちよかった。
4回とも有難いことに1階席だったわけだが、半分は通路を挟んで後方のブロックに座っていた。
劇場の音響効果は後ろに行くほどその素晴らしさを発揮するわけだが、後方席で観劇した時の歌声が本当に最高だった。
OP曲、咲也が夜の劇場で千景に語り掛ける家族の歌、そしてカーテンコール曲と本当に歌声に包まれるというのはどういうことなのかを肌で感じ取ったのは、まさに至高の時間だった。
あと、劇中劇「エメラルドのペテン師」の東西の魔法使いがオズの正体を見破って怒り狂っているシーンの歌も最高だ。
西の魔法使いを演じる茅ヶ崎至役の立石俊樹さん(以下「立石くん」)の歌声が素晴らしいのはもちろんだけど、東の魔法使いを演じる皆木綴役の前川優希さん(以下、「前川くん」)とのハモリが本当にカッコいいので是非劇中劇のクライマックスシーンの歌声を堪能してほしい。
「言っただろ、俺の目は何でも見通すのだと」って歌っている時の西の魔法使いのお顔の歪みっぷり最高。からの「遊びは終わりだ! 真の大魔法を知れ~」って所の二人の歌声の圧が心地いいです。配信でも堪能できると思うから大千穐楽を配信で見る予定の人は是非とも注目して置いて欲しい。

新劇団員千景さん

今回なんと言っても外せないのは新しい劇団員である卯木千景役の染谷俊之さん(以下「染さま」)だ
もうね…本当にね。
染さまの千景さんヤバい。
何がヤバいって、私は最初に見た時に「そうだったー! 千景さんめっちゃ嫌な奴だったー!(誉め言葉)」って心の中でめっちゃ叫んでいた。
と同時に、アプリゲームをプレイ中にこのシナリオの間中「どうしよう…千景さんが好きじゃない…」って思いながらプレイしていたことも思い出した。
今でこそ春組のおじいちゃん&劇団のセコムとして絶大な信頼を寄せている千景さんだけど、初登場の時は本当に苦手の一言に尽きていたのだ。
そして、そんな苦手だった千景さんがまんま板の上に現れたわけだから事件以外の何物でもない。
本当に染さまは狂気を孕んだ眼力が半端ない。
特に前半パート最後の春組が真澄を奪還して「家族ってなんだろ 繋がりって何だろう 心が寄りかかろうとしてる」って歌っている時に「家族だってさ」って目を見開きながら密に対して歌ってるのマジで本当に怖いんだよ。
完全に密とMANKAIカンパニーをロックオンしている様子がありありと伝わってくる。
その狂気を孕んだ様子を見せつけてからの一幕終わりで休憩挟んで2幕に行くわけですよ。
1幕の最後、春組が千景さん見つけて一緒に寮の中へ入っていくシーン、一人だけ残って振り返った時の笑顔が照明と相まって波乱の2幕を予言しているの本当にヤバい。

で、2幕ですよ。
シナリオ上、一人芝居になるのかな?と思っていたけど、厳密にいうと一人芝居ではなかった。
この演出はとてもいいなと思ったのが、千景が監督を監禁した後で唐突に芝居のセリフを言われた場面とカンパニーでは二人の帰りを信じて待つと決めて、支配人が千景のセリフを代読する場面とクロスしていく演出だ。
あのすべてのセリフを監督が千景に向けて発していると思った時に、千景のセリフを代読している支配人の語り口がただただ優しくて…「国にやり残したことがあるのだ」の辺りで毎回泣きそうになっていた。
硬く強張った千景の心に少しでも届くように馴染むようにと監督が語り掛けているようで、支配人の声が体に沁み込んでいくようだった。
でも、その声のトーンはこの時の千景さんには決して心地いいものではなくて、苛立ちを隠せない反応がとても良かった。支配人の声が静かに響くからこそ、千景さんの色んな感情を刺激しているのだと思う。

唯一の家族を失った悲しみ、そして、生き残ったもう一人の家族を憎まざるを得ない状況に陥ったエイプリルが辛い。
冬組の皆のお陰で記憶を取り戻すために眠った密は、大切な家族の元へと駆け付ける。
密から伝えられる真実に取り乱していく千景。
自害薬は記憶をなくす薬にすり替わっていると伝え、証明する為に薬を飲もうとするディセンバーの手から瓶を叩き落としたのは、他でもないエイプリルだった。
あの瞬間に、口でどれだけ憎まれ口を叩こうが、激しい憎悪を抱いていようが、千景にとって密はオーガストと変わらぬ大切な家族だと証明している。予想外の自分の行動に何とか密の所為にしようと仕向けた矢先、エイプリルはディセンバーの言葉が真実だったことを知る。
本当の自害薬は甘い香りがする。だけど、割れた瓶からは一切甘い香りがしない。
それは、ディセンバーの記憶を取り戻した密の言葉を真実だったことの動かぬ証拠だった。
大切な家族を失ったその日から、もう一人の家族を裏切り者として憎まなければならなかった千景の苦しみが「俺はどうすればいい…。たった一人の家族であるお前を裏切ったのは俺の方だった」に集約されている。
ここのシーンずっと泣いてたし、感想まとめている今も泣いている。
密に舞台に立って欲しいと言われ、もう自分の他にも家族がいるんだと言われた千景は劇団に戻ることになるが、それまでの調子はどこへやら…。
このままでは劇団に迷惑をかけると劇団の去ろうとした千景を引き留めたのは、春組リーダーの咲也だった。一度も勝ったことのないコイントスに勝つ咲也。
その理由は、千景の性格をよく分かった上での判断だった。
コイントスに勝った咲也は以前ドタキャンされた劇場で一緒に寝ることを提案する。
そして、このままでは劇団の評判を落としてしまうという千景の話を聞いてもっと大切なことがあるという咲也は「子供の頃から家族というのが分からなかった 客席から眺める遠い存在、安らげる居場所はどこにもなかった」と歌い出す。
アプリゲームで3幕を履修している身としては、もうこのフレーズに号泣するしかなかった。
家族というものは遠い存在だと思っていた咲也だからこそ、傷ついた千景の心に寄り添うことができ、千景の心に言葉を響かせることが出来た。
そして、咲也の言葉に呼応するように春組みんなの歌声が千景を包み込んでいく。
本当にね、5人が千景に向ける歌声が素敵。
まさしく、春組が6人家族になった瞬間だったし、翌朝のシーンに繋がっていくわけだ。
そして、自分の内側に入れたあとの千景さんのデレが凄い。
無事に初日が終わって、乾杯前に「しょうがないから監督さんのこと守ってあげるよ。だって俺達家族なんでしょ?」のお顔と言い方ズルくない???
マジで、本当に。
嫌いから好きになっていくふり幅が凄すぎて、この千景さんを見事に演じきった染さまが本当に本当に素晴らしいの一言に尽きる。

そして、染さまの身体能力がエグい。
劇中劇で竜巻に巻き込まれるシーンで回転するセットの中を跳躍しながら移動しているわけだが、重力って言葉をご存知ですか???っていうくらい軽々と移動されていて、本当に凄いなって思ってる。
ACT2! には千景さんの存在は不可欠なわけで、その千景さんに染さまをキャスティングした運営さんはさすがです。

春組末っ子真澄親子のリスタート

そして、ACT2! で不可欠な存在はもう一人。
退団渡米騒動に揺れた真澄くん。エームビではご出演があったけど、エーステでは初めての高橋怜也さん(以下「怜也くん」)が演じるわけですが、いやぁ…真澄くんが年相応というか本当に可愛らしかった。
未成年の高校生の元に疎遠だったお父さんが急にやってきて学校も劇団もやめて一緒に渡米しろって言ってくるの割と横暴なわけですよ。
かかってきた電話に出ないという無言の抵抗をしていたけど、実際にお父さんが目の前に来たら委縮しちゃっていつもの憎まれ口は鳴りを潜めて、言いたいことを言うことが出来なくなる。
そんな真澄くんの繊細さを怜也くんはよく表現していたし、春組の末っ子感がとてもよく出ていたように思う。
だからこそ、岬パパに対して咲也達春組が挑んでいけるというか、真澄が委縮しちゃっているのに気付いているからこそ、皆が必死に庇って守っている姿がもうただただ家族だった。
おばあちゃんからの手紙の後、「皆といたい」と泣きながら言っていた真澄くんと守るように側に寄り添っている春組4人が本当に尊かった。
パパもね。不器用なんだよね。
威圧感あるし、高圧的だし、すっごいモラハラというかパワハラっぽいけど…会社での社長である自分と父親である自分をうまくコントロールが出来なかった大人の典型というか…。
お母さんの手紙のお陰で、思っていたことをようやく口にすることができて、ここから親子としてのスタートラインに立てたというか、不器用なりに関係を再構築していく姿に、私は「岬パパ!!」って毎回泣きそうになってた。
怜也くんの真澄くんは庇護欲を掻き立てられるというか、守ってあげなきゃ!ってなるタイプの真澄くんだった。
ちなみに1日目ソワレで真澄くんがファンサしている姿を目撃したんだけど、すっごく幸せそうに指ハートやってて、「監督さん激ラブの真澄くん」の破壊力の凄まじさを垣間見ました…。あれはヤベェ…とんでもなかった。

日替わりパート

さて、忘れてはいけないのが各回日替わりのネタパート←
我らがシトロン役古谷大和さん(以下「大和くん」)の本領発揮の場面と言っても過言ではない。
直前にエイプリルとディセンバーの涙なしでは見られない和解のシーンがあるわけだけど、その余韻を一切引きずらせない容赦のないお笑いパートに毎回「この感情をどう持っていけばいいんだー!!!」ってなっていた監督さんは私以外にもいると思う。
先にざっと覚えている範囲で日替わりパートを記述するけど、たぶんうろ覚えで間違ってる所も多いので、その点はご容赦を‼

千景と監督が帰ってきてからの稽古冒頭
5/13マチネ
・物販の売り物を考えようと言い出すシトロン。
・ゲームを売りたいと言い始める至さん。
・プレイヤー至さん、キャラクターシトロンで実演が始める。
・VS大人の歌詞「投げ抜けA級入りまーす」とナチュラルにぶっこんでくる至さん。
・ラスボスが雄三さん。
・捕獲されるシトロン

5/13ソワレ
・いきなり歌い始めるシトロン「~芽~(春夏の至さんソロ名曲)」の替え歌
・それに乗っかる至さん
・無駄にいい声でハモル二人
・珍しく咲也が乗っかってくる
・野菜泥棒にされる綴
・フェスか!のツッコミにダメ出しをされる綴
・ツッコミの説明をさせられる綴
・雄三さんにもダメ出しをされる綴
余談
春組全員で寝てるシーンで「フェスって…」って夢の中でもフェスの説明をしようとしていたつづるん

5/14マチネ
・居酒屋のお通し問題に対して一石を投じるシトロン
・客役を押し付けられる綴、店員役はシトロン
・料理に「フランス魚」をつけてなんとかおフランス風にしたいシトロン
・2回目の「フランス魚」で思わず顔を背けて笑ってしまう至さんと真澄くん
・店長として召喚される至さん
・「ナスの揚げびたし」とか「そら豆」とかオシャレな料理名出してくるのに必ず最後に「余りものです」って付け加える店長至。
・オーナーで雄三さんを召喚しようとしたけど盛大に怒られる。
余談
千景が監督を連れ去った後の場面でシトロンが「カミカミシネ!」って叫んでるシーンにつづるんが2回「神隠しな」ってツッコむところがあったんだけど、なんとこの日のマチネで「カミカミシな」って言っちゃって、そのセリフきっかけで咲也のスマホなるんだけど、音響さんの神対応で一瞬だけ音が止んだ。
そして、高速で綴にツッコみ返すシトロンという大変珍しいものを観た。
シトロンのツッコミ返しがさく裂したタイミングで全員のスマホが鳴るという音響さんのファインプレー素晴らしかった。

5/14ソワレ
・春組で座禅をすると言い始めるシトロン
・雄三さんから竹刀を奪い取るように借りるシトロン
・座禅が分からなくて最初正座していた咲也
・周囲を見ながら、胡坐→手元と2段階でフォームを変える咲也
・うっとり監督を見つめている真澄
・綴が笑うように仕向けるシトロン
・雄三さん登場。全員に正座をさせる
・足首が硬すぎて正座できない至さん。めっちゃ雄三さんに怒られる
・ちょっと崩した正座をしている至さん
・「悪かったと思ってる奴手を上げろ!」と言われてふざけながら手を上げたら怒られるシトロン
・シトロン以外が手を挙げなかったことにお怒りの雄三さん

どの回だったかはっきり覚えてないんだけど、「我関せず」な状態の真澄くんの元にものすごい速さで駆け寄る雄三さんがめちゃめちゃ面白かった。

本当にこの日替わり場面とシトロンのはっちゃけシーンは雄三さん役の鯨井康介さん(以下「鯨井さん」)なくしては、場面が締まらない。
むしろ、鯨井さんがちゃんと締めてくれるって分かっているからこそ、春組があれだけ好き勝手に日替わりが出来ているんだと思う。
鯨井さんの冴えるツッコミは最初の稽古指導の時にも見ることが出来る。
「悪くない」と褒められたシトロンが嬉しすぎて色々と羽目を外すんだけど
・大喜びで舞台中央まで行ってはしゃいでたら「戻ってこい‼」って怒られる
・雄三さんの竹刀を奪って、箱馬に座って「ワタシが演技指導スルネ」って言い始めて、春組全員に「後ろ…後ろ」って指さされてる
等々、本当にシトロンのボケを全部綺麗に回収していくのは、鯨井さんの雄三さんあってこそなので、日替わりパートはとてもとても安心して観ることが出来た。

本当に、全公演分日替わりパートを収録してくれまいか。
むしろ、日替わり特化の円盤出してくれないかな。
言い値で買うよ???

3組の家族と1つの運命共同体の物語

今作は、3組の家族と1つの運命共同体の物語だ。
春組と真澄親子と月下組と冬組。
それぞれの関係性に視点が移動しながら物語が展開していく。
相変わらずエーステの脚本と演出は素晴らしい。限られた時間の中で原作のストーリーを違和感なくまとめていく手腕は本当に推せる。
特に春組と月下組の対比が切なすぎた。
真澄奪還後、カンパニーで「家族ってなんだろ」って歌い始めた時に、一緒に並んで最初の振りを踊ろうとした密が動けなくなって呆然としているシーン。
一緒に動いていくけれど踊ることが出来なくて、その姿が途方に暮れた迷子のようで見ていて本当に辛かった。
その後、千景に「お前の新しい家族をめちゃくちゃにしてやる」と言われている反対側で、楽しそうにサイレントモーションで集合写真を撮っている春組との対比が悲しい。
大切な家族なのに傷つけ合わないといけない組織組。
和田琢磨さん演じるオーガストの声が響くたびに、幸せだった頃の様子が思い起こされて余計に密を苛んでいく様子がどうしようもなく悲しかった。
だけど、そんな密の様子をちゃんと察知してそっと寄り添う誉さんと東さんの様子に静かに寄り添う優しさを感じたし、そんな冬組だったからこそ、密は「また記憶をなくすだけだ。皆は受け入れてくれる。思い出はまた作っていけばいい」という台詞に繋がっていくんだなってすごく思った。
エイプリルとディセンバーにとってオーガストを含めた3人は唯一の家族だった。
けれど、千景と密として再開した二人は、家族の記憶と絆はそのままに新しい家族の存在を受け入れていく。
春組は4組の中でその関係性を「家族」と評されることが多いが、今回のACT2! のメインテーマは「家族」の一言に尽きると思う。
最終的には支配人や雄三さんを含めてカンパニー全体が「家族」だなと思っているのだが、「血のつながりよりも~」と真澄くんのおばあさまがお手紙に書いたように、MANKAIカンパニーは心の繋がりによって結びつく素敵な家族なのだ。

4公演を観劇して、物語の展開は知っているはずなのに一度として同じものはなかった。
それは演者たちが間違いなく舞台上で今を生きていたからこそ感じた感想だったように思う。
本当に本当に素晴らしい演劇をありがとう。
特に自分が出かけていくしか観劇の機会がない地方在住者にとって、自分のテリトリーに推しカンパニーが来てくれることがどれほどの奇跡だったのかと今でも思っている。
香川に来てくれれありがとう。
四国に来てくれて本当にありがとう。
人生で初めて生観劇したエーステがこのACT2! で良かった。
私はこの2日間で見た景色をこれからもずっと忘れない本当に素敵な演劇を届けてくれてありがとう。

さて、綺麗にまとまったところで、作品について知りたかった方はどうぞここで読むのを終了してください。
これから先は私のエーステに対する重すぎる想いを羅列していくので、興味があったり、お時間ある方だけ引き続きお付き合いいただければ幸いです。

おまけ:私とエーステ

エーステは私が立石くんを推すようになったきっかけの作品だ。
職場の同僚からアプリゲームの「A3!」とエーステを同時におススメされた時に「至さん役の方は素面でも至さん」とおススメされたことを覚えている。
2.5次元ではある程度メイクによってキャラクターに寄せていると思っていた当時の私は「またまたそんな大げさな」と思いながら、貸してもらった春夏公演の円盤を見始めたわけだが、映像特典のバクステを見て度肝を抜かれた。

「至さん…メイクオフってもマジ至さん!!!」

あまりのお顔の綺麗さに、こんな綺麗な人がこの世にいるの???
という強い衝撃を受けて、気が付いたらお名前を検索して今は卒業されたIVVYのサイトに行きつき、その当時公開されていたFirst&LastのMVにノックアウトされて、CDを取り寄せてみるは、カレンダーを購入して見るはと…本当に分かりやすく沼に落ちていって今に至る。

円盤を借りた時期がちょうど秋冬公演大千穐楽間近だったこともあり、その次に控えていた春単独公演のチケットはもちろんソールドアウト。
地元でライブビューイングもされなかったので、配信で作品を堪能していた。
そして、その時に私は固く心に決めていたのだ。「次は絶対に現地に行く!!!」と。
だから、2020年の年明け早々に公開されたフォーライの開催発表にどれだけ歓喜したか分からない。
「絶対にチケット戦争を勝ち抜いて現地に行くんだ」という決意は、未曽有のコロナ禍によって露と消えた。
地方在住の私にとってあの当時、東京に行くということはどうしようもないほどリスクが高かった。
チケットを取る時に状況が落ち着いていたとしても、開催時期がどうなっているかは分からない。
泣く泣く現地を諦めて、配信を買いまくっておうちで楽しんだ私は「次こそは!」と、また決意を新たにしていたわけだが…。
翌年2021年碓氷真澄役の牧島輝くん(以下「輝くん」)の卒業発表と共に情報公開されたトルライ春公演。
折しも世の中デルタ株のまん延真っただ中。
あの状況では仕事柄とてもじゃないがチケットを取る決断を下すことは出来なかった。
先行申し込み期間の間、ずーっと自分に言い聞かせて本当に断腸の思いで見送った。
実際、開催時期の状況ではチケットを取っていたとしても行けなかったわけだが、涙をのんだフォーライ、そしてエーステにハマるきっかけをくれた初演組ラストであるトルライを断腸の思いで諦めた私にとって、このACT2の公演は本当に心から待ち望んだ公演だった。

去年のトルライで輝くんが卒業すると発表された時、「あぁ…もしかしたらこのまま立石くんの至さんを直接見ないまま卒業する日が着てしまうのかもしれないな」と、多少なりとも覚悟を決めていた節もある。
だからこそ、ACT2! の公演決定がアナウンスされた時に「これは夢ではないか」と本当に嬉しかったことを覚えている。
3年越しの初至さんなので、もう劇場にいられるだけで幸せだった。
オペラグラスでひたすら推しの定点カメラに慣れる時間が至福だった。
普段だったら「ここがいい」「あれがいい」と好き勝手に感想を書くのだが、至さんは思い入れが強すぎて「至さんが…目の前にいる!」という状況だけでもう大満足だった私がいる。
推しにハマるきっかけになった作品と言うのは、場合によりけり実際に観劇出来る機会が失われていることも有りうるので、同僚に円盤を借りたあの日から苦節3年の時を経ての念願の観劇だったので、もうずっと胸がいっぱいだった。
劇中のキャラクター達の関係性が深まっていることに加えて、キャスト達もこの3年でそれぞれが色んな経験を積んで、春組としての関係性も深まった状態なので、もうなんか本当にただただ「春組が目の前でワチャワチャしている姿」が愛おしくて仕方なかった。

もちろん、推しを褒める点は多々あるが、いつもnoteに書いているように「推しの感想に終始しない作品はいい作品」だと常々思っているので、今回のACT2! もまさしくそれだった。
そんな中でも、日替わりコーナーで爪痕を残してみたり、春組の年長者社会人として真澄パパに抗議している姿とか、壁つたいの移動で無理はしない様子とか、劇中劇で役に入っている時の様子や歌声、本当に立石くん自身が積み上げてきた経験が存分に発揮されていて、ずっと目は離さなかった。
第3回公演に引き続き片眼がつぶれているキャラだったけど、あれは衣装とメイクの早替えどうやってるんだろう???ってずっと気になっているし、全然見えていない状態でなんの違和感もなく動いている姿にプロとしてのスキルの高さを見せてもらったように思う。
最初の方でも触れたが、今回は楽曲全体として歌声に厚みが出ているので、立石くんに担っていた部分も大きかったのではないかと思っている。
本当に東西の魔法使いが怒り狂って攻めてくるシーンの歌声めちゃめちゃ最高だから、出来ればライブ音源を収録してくれまいか!!!
収録音源も絶対素敵なの分かってるんだけど、ライブ音源に勝るものはないようにも思うのだ。

今回初めて客降りも体験したわけだが、あれはヤバい。
約三時間感情のジェットコースターを体験した後で、残り10分で殺しにかかってくる劇団員たちが本当にヤバい(誉め言葉)
有難いことに4回観劇して、3回至さんが真横の通路を通って行ってくれたんだけど、そんな至近距離で推しを観たことがなくて…どういう状況なのか頭がパニックになったよね。
特に最後のソワレの時なんて、曲のタイミング的に傍で止まられて、ゆっくり至さんメイクの推しのご尊顔を見ることが出来て、「私の命日は今日か???」ってなるぐらい驚いた。
しかもね。
一日目のソワレね。
春組キャストも1階フロアでファンサをしてくれていたんだけど、立石至がどうやって監督さんを殺しにかかっているのかをすぐ近くで観察出来て私は幸せでした。
一枚一枚丁寧に紙吹雪手渡していたの!!!
それは!!!貰った監督さん!!!死ぬよね!!!
至さんのファンサヤベェな!!!!っていうのがその時の感想だったよ。

ちなみに(これは自慢なんで読み飛ばしてもらった大丈夫です)
1日目のマチネで真澄パパからめっちゃ高速で移動しながら名刺を受け取るように紙吹雪をいただきました。
あと、二日目のマチネでは雄三さんが降らせてくれた紙吹雪をいただきました。
2日目のソワレは、さっきも書いたけどめちゃめちゃ近くに至さんがいてひえぇ!!!ってなる前に、雄三さんと目が合って、東さんが指ハートを返してくれるという奇跡が起こりました。
3年分の色んな想いが詰まっているから、ここはルールの範囲内で全力でカーテンコールを楽しもうと思っていたので、めちゃめちゃ楽しかったし、振りもバッチリ覚えていったからキャストの皆と一緒に踊ることが出来て幸せだった。
一番最初に観劇した時はビックリしすぎて終わった後も手が震えていたので、エーステの客降りって本当にヤバいんだなっていう感想にしかならなかった。
帰りの出口で全員に紙吹雪のプレゼントをしてもらえるのも嬉しかった。
様々は制限がある中で、どうにかこうにか本来のエーステの形に持っていこうとしていた運営サイドの想いや努力が本当に有難かったし、素晴らしかったと思う。

本当にこんなにマチソワを連日はしごしてずっと楽しい作品ってなかなかないと私は思う。
公演が始まった時、大千秋楽まで無事に完走できるようにと願いをかけた。
それは各地方公演初日にも変わらず願い続けたことだ。
だから、地方公演を無事に完走して、東京凱旋公演の幕が上がったことが本当に嬉しい。
昨日から始まった東京凱旋公演がどんな演出になっているのか、今から大千穐楽の配信が楽しみで仕方ない。
どうか無事にカンパニーの皆が健康で、満開の笑顔で大千穐楽の幕を下ろせますように。
いつも新しい試みが始まる時に先頭を切って新しい姿を見せてくれる春組のことが心から誇らしい。
素晴らしい演劇をありがとう。

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