読書の記録 『八本目の槍』

子供の頃は、関ヶ原によく遊びに連れて行かれた。古戦場跡とか、今はもう更地になっているらしい遊園地「メナードランド」とか。
小学校のときの野外合宿も関ヶ原だった。夜間の肝試し的イベントは本当に“出る”と言われていたし、その辺りを掘れば武士の骨が出てくるという噂もあった。
実家の墓がある場所の近くには、大谷吉継ゆかりのお寺とか徳川家康の陣跡とか、戦国の世に思いを馳せることのできる史跡が多い。

関ヶ原古戦場は、今行っても楽しい。単純に歴史好きというのもあるけれど。
そして大河ドラマ『真田丸』は、熱狂的に1年間見続けた稀有なドラマだ。その中でも山本耕史さん演じる石田三成が最高だった。私の中の三成像は完全に真田丸の石田三成で固定されてしまっている。

そんな私が『八本目の槍』を読んだ。

賤ヶ岳七本槍の加藤清正(虎之助)、糟屋武則(助右衛門)、脇坂安治(甚内)、片桐且元(助作)、加藤嘉明(孫六)、平野長泰(権平)、福島正則(市松)。彼らの目を通して見た小姓時代、賤ヶ岳、関ヶ原、大坂、そして石田三成(佐吉)。

無駄なことが嫌いで、人がどう思うかにも無関心。真田丸でもそういう印象だった。そして、聡明というにはあまりにも尖りすぎていた佐吉。未来人かと思うほど思考は現代的で、先の先まで見えすぎていて恐ろしささえ感じさせる男。
そんな佐吉が、同期7人の前でだけほんのり年相応の青さとか人間らしさを見せると、読んでいてほっと肩の力が抜ける。
この7人と佐吉の間にある絆は強い。だからこそ時には捻れ、対立もする。関ヶ原ではそれぞれ守るものの違いから東西に分かれて互いに命を奪い合うことにもなった。

1章から、1本目の槍・虎之助を筆頭に語られていく物語。7章目は7本目の槍・市松の物語で、市松が他の7本槍を訪ねて話を聞いていく。その道のりの先で、やっと見えた「佐吉が遺した呪詛の正体」。七本槍の中で唯一、全てを知った市松が最後に大坂城で言い放った言葉に、私はただ涙した。

佐吉が誉れ高い七本槍に名を連ねることはなかったけれど、小姓時代から共に過ごした仲間たちが市松と同じ思いでいたと信じたい。

読み終わってすぐ、また読み返したくなった。
七本槍、みんなみんな大好きだ。



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