仏教×SFの化学反応 『天駆せよ法勝寺』


ぶっ飛んだ設定と世界観に「恐ろしいものを読んでしまった......」と戦慄した『天駆せよ法勝寺』。このたび期間限定で短編版が無料公開されているのでご紹介。


天駆せよ、との言葉通り、法勝寺は空を飛ぶ寺。空を飛ぶどころか宇宙空間を爆進する。
「佛理学」のような「あれ?そんな学問あったっけ?あったような気がする!」みたいな良くわからんけど受け入れてしまう造語の数々に引っ張られ、あれよあれよと「法勝寺、発進。合掌!」で宇宙へ飛び立つ。
寺が飛ぶ絵面だけでも面白い。小説を読みながら頭の中に映像が流れるタイプの人は、絶対に楽しめるはず。

とある使命を持った少女を宇宙の果てにある紫釈院に送り届けるために飛ぶ法勝寺。
飛ぶために必要なエネルギーを蓄積するためには、本来4万6千日かけて祈念しなければならないところを「交響摩尼車群の高速読経」という謎技術で100分の1に短縮。なんだよ「交響摩尼車の高速読経」って。
ちなみに摩尼車とは「回転させると、回転させた数だけ内蔵された経・真言を唱えるのと同じ功徳がある」という仏具。今生で徳を積んで来世は猫になりたいわたしが是非とも手に入れたいアイテム。

宇宙を飛ぶ寺に搭乗するのもただの僧ではない。宇宙僧だ。僧としての修行に加え、宇宙僧として4年の間厳しい修行を重ねた猛者たち。彼らを乗せ、法勝寺は四十九日の旅に出る──。


仏教とSFってこんなに相性良かったんだ!と気付かされた『天駆せよ法勝寺』。来年には長編版も刊行されるらしいので楽しみ。



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