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『デカローグ』5・6

写真は、4月に観た『デカローグ』1〜4のパンフレットと、今回の5・6のパンフレットを繋げたところ。来月の7〜10を繋げると、団地の全容が見える様になる仕掛けの模様。楽しみ。

5「ある殺人に関する物語」

小川絵梨子さんの演出好きだなぁ。私が「演劇」に期待しているモノをきちんと届けて下さる。俳優の視線や照明、SE等で、そこに無いものを浮かび上がらせてくれる。

犬の声、子供達の声、鳩のシルエットと羽音、タクシーの四角い照明、写真屋やカフェのドアベルの音…。

ホンも当然に良いし、俳優陣のクオリティは言わずもがな。舞台美術もめっちゃ好き。音楽も秀逸だし、映像も素敵。

5は死刑反対論者である私には、一際刺さるお話しだった。
ピョトルが法について熱く語る姿は、『虎に翼』で「法」と言うものについて改めて考えてみる機会が増えている事もあり涙が滲んだ。

「罪」は「罪」として罰せられる必要があるのは分かる。
しかしその「罪」の責任は加害者のみに帰するものなのだろうか。
加害者が何故その行動を取ったのか。その因果は個人で背負い切れるものではない事も多々あるのではないだろうか。

映画「プリズンサークル」を観て、坂上監督のトークを聞いて書籍も買って読んだので、ただ加害者個人を責めるだけでは何も解決しない、と言う思いが強い。

だから死刑なんて仕組みはあっちゃいけないと思っている。
根本解決にはならない上に、冤罪だった時に取り返しが付かないのだから。

話を『デカローグ』に戻そう。
この作品は、加害者も被害者も、「普通の人間」として描かれている。
良い所もある。碌でもない所もある。それが人間で、それが当たり前。
何かに躓いて、転がり落ちていってしまう可能性は、誰にでも有る。

これは「特別な人たち」の話ではなく、どこにでもいる誰か、自分自身かも知れないし、身近な誰かかも知れない話なのだと思う。

6. 「ある愛に関する物語」

美しいお話しだったなぁ…。

重くなりがちな題材に、軽やかな笑いも挟みつつの、あのラスト!
救いが無いのか…いやでもきっとアレが正しい…てか正しいとか正しくないとかそんな次元ではなく、それが「ひと」と言うか「生きる」と言うこと、と言うか。

あの洗面所のシーンが印象的過ぎて、終演後に行ったトイレで「音姫」の音聞いて思い出してしまいましたよ。。

でもこのお話し、トメクがあんな可愛らしい青年だから微笑ましく見えてしまうけれど、生理的に受け付けないタイプだったりしたら…言葉も通じない異民族の青年だったりしたら…なんて事もふと考えてしまった。

やはり人は平等じゃないし、自覚していようがいまいが差別してしまう心根は自分の中にも有るのだと思い知る。

全篇に登場する喋らない彼は、喋らないからこその存在感があって、沈黙の美と言うか、その間(ま)が有るからこそ何かザワつく。
こう言う境地を目指して欲しかったなぁ、と言うのは、勝手な独り言。


デカローグ5・6 [プログラムC]
会場:新国立劇場 小劇場
上演期間:2024/05/18(土)~06/02(日)
上演時間:約2時間20分(第5話:55分 休憩:20分 第6話:65分)
公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog-c/




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