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空色のラムネ、黄色いレモネード

アルコール依存症ゆえ、お酒が出てくる映画や物語は、できるだけ紹介しないことにしているのだけれど . . .
[本]のメルマガの高山あつひこさんの連載があんまりすてきなので、きょうはマイルール破ります。

味覚の想像力-本の中の食物 その39「幽霊と囲む食卓」その3『とほぼえ』
http://back.honmaga.net/?eid=979347

内田百けん(門がまえに月)の『とほぼえ』にまつわる、ちょっと怖くて愉快なお話。
わたしも真似て言ってみたい粋なセリフが登場するのだけれど、それについては慎もう。くぅ、残念 . . . 。ソーバー(飲酒が止まって)12年、お酒を我慢するのはもはやすこしも苦ではない。でも、こうした言葉遊びまでNGなのは、とてもせつないな。ごく個人的に「アルコホリックの悲哀ここに極まれり」って感じだ。

それにしても、高山さんの描く食べ物や飲み物の、いつもおいしそうなこと!

そういえば先日、「ラムネ」は、レモネードがなまった名前だと知ってうれしくなった。
わたしは子どものころから、ラムネもレモネードも大好きだった。ラムネはおもにあの瓶とビー玉とシュワッという音に、レモネードのほうは、あの匂いと味と色あいにきゅんとする。
それが、坂口安吾の『ラムネ氏のこと』とカート・ヴォネガットの『国のない男』を読んでからというもの、ますます好きになって、いまやどちらも「幸せのレシピ」に入れている飲み物だ。

If this isn't nice, I don't know what is.

レモネードを飲みながら、「これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ」っていう、カート・ヴォネガットの叔父さんアレックスの話は、もう何度も書いたけれど、今度もやっぱり引用しておこう。(下記)

ちなみに、アレックスおじさんは、AA(アルコホーリクス・アノニマス)のインディアナポリス支部を立ち上げて、87歳まで生きて、カート・ヴォネガットにも大きな影響を与えた人。

そして、AAあってこその「レモネードのおいしさ」、みたいなことも、わたしは身にしみてわかるわけで . . .
これは、「アルコホリックの喜びここに極まれり」だ。

それにしても、レモネードからのラムネ . . .
Lemonade → Lamune → Ramune
Lamuneまではしっかり黄色いのに、Ramune . . 頭の文字がRになったとたんに、イメージが青になるの、ちょっと不思議だ。
水色 . . . それとも明るい空の色?


★ :*:・' "
…… おじさんの、ほかの人間に対するいちばんの不満は、自分が幸せなのにそれがわかっていない連中が多すぎるということだった。夏、わたしはおじといっしょにリンゴの木の下でレモネードを飲みながら、あれこれとりとめもないおしゃべりをした。ミツバチが羽音を立てるみたいな、のんびりした会話だ。そんなとき、おじさんは気持ちのいいおしゃべりを突然やめて、大声でこう言った。「これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ」
  だからわたしもいま同じようにしている。・・・・みなさんにもひとつお願いしておこう。幸せなときには、幸せなんだなと気づいてほしい。叫ぶなり、つぶやくなり、考えるなりしてほしい。「これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ」と。"
(『国のない男』NHK出版  Kurt Vonnegut (著), 金原 瑞人 (訳) p.139-140より)

…… And his principal complaint about other human beings was that they so seldom noticed it when they were happy. So when we were drinking lemonade under an apple tree in the summer, say, and talking lazily about this and that, almost buzzing like honeybees, Uncle Alex would suddenly interrupt the agreeable blather to exclaim, “If this isn't nice, I don't know what is.”
So I do the same now, and so do my kids and grandkids. And I urge you to please notice when you are happy, and exclaim or murmur or think at some point, "If this isn't nice, I don't know what is."
―― P.132 ”A Man Without a Country”
資料:
★ :*:・' " 内田百閒の『とほぼえ』 小倉一郎さんの朗読が、YouTubeで聴けます。
https://www.youtube.com/watch?v=_sn-1EDY1Xs

★ :*:・' " 坂口安吾の『ラムネ氏のこと』 ―― 青空文庫で読めます。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/45864_32940.html

★ :*:・' " 写真は Getty Images より

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渋谷 やみぃ
ありがとうございます。🕊️🌈