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「ヘルパーだけどシェアメイト、その暮らしの経験から」What's インクルーシブ? 【インタビュー】
SDGsって何だろう?
誰ひとり取り残されることなく、人類が安定してこの地球で暮らし続けることができるように、世界のさまざまな問題を整理し、解決に向けて具体的な目標を示したのが、SDGs(持続可能な開発目標)です。
SDGsという言葉を聞く機会が年々増えてきています。
直近の2030年までに成し遂げたいマイルストーンが書かれた「2030アジェンダ」というものがあるのをご存知でしょうか。
そのアジェンダ(計画)には、インクルーシブという単語が何度も出てきます。
インクルーシブとは「包括」「全てを包み込む」という意味の言葉です。反対の意味の言葉はエクスクルーシブ。これは「排除」を指します。
つまり、誰も排除しない、支えあうことを目指すのがインクルーシブです。
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医療成績の向上やテクノロジーの発展で、在宅医療を受けながら生活する人、福祉機器を利用しながら生活する人など、生活スタイルにも多様な選択肢ができてきました。
一方で、共生社会を実現していく裏には、その生活を支える人たちの存在があります。
今回お話を伺ったのは、車いすユーザーの介助のお仕事をされていたという、みかやんさん。重度訪問介護のお仕事を通して見えた世界を伺いました。
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シェアハウスで一緒に暮らすヘルパーという経験
− どんなお仕事をされていたのか、教えてください。
今は広島の小さい島にある休暇施設で働いているのですが、福祉系の仕事をしていたのは去年の2月末まで。丸3年間です。
コロナが始まったタイミングで札幌に引っ越したのですが、その時にもともと知り合いだった女性に「こっちに来て介助の仕事をしてみない?」とオファーをもらいました。彼女とはシェアハウスで一緒に暮らし、時にはシェアメイト、時にはヘルパーとクライアント(利用者)という関係の生活をしていたんです。
−介護施設みたいなところで働いていたのかなと想像していたのですが、生活を共にしていたんですね。
そうなんです。私が携わっていたのは「重度訪問介護」という重い障害のある方が自宅で暮らすために必要な支援を受けられるための公的サービスです。重度の身体障がいを持つ方のほかに、知的障がいの方、精神障がいを持つ方も利用ができます。
私が介助していた方は、生まれた時から骨がすごく脆くて、骨折してしまうという特徴があり、車いすを使って生活をしていました。
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一緒に暮らす日々で、時にはぶつかり合うことも
− 生活を共にすると、仕事とプライベートの境目がなくなってしまいそうですが、大変なことはありましたか。
もう、笑いが出るぐらい大変でした。私が仕事を始めた2020年の2月はちょうどコロナが始まった時です。雪がすごい中に外出制限も重なって。でも、一緒に行動していく中で、いろんな場所に行ったりいろんな人に会ったり、新しい世界を見られたのは良かったですね。あちこちで講演もしている方だったので。
辛かったのは、自分が「自覚なく差別している」という事実を感じたことですね。それは今までの学校教育や社会の中で作り上げられた常識からきていて、決して自分のせいではない。でも、私はその常識の中で物事を決めてきてしまっていた。これから何を信じていけばいいんだろう、どう進めばいいんだろうって分からなくなってしまうことがあって。それで八つ当たりしてしまうこともありました。
− 一緒に暮らすからこそ、ぶつかってしまうこともあったんですね。
私は家族ではないですが、そのくらい近い距離にいたので。喧嘩というか泣きながら話し合ったり、感情をぶつけ合うみたいな時もありましたね。
そういう経験があったからこそ思うのは、やっぱり家族介護って推奨されるべきではないということ。もっといろんなサービスが充実していかないと、介護する側も、介護を受ける側もお互いにしんどくなってしまう。しんどくなるっていうところを超えて、自分自身を失ってしまったり、生活が壊れたりするんじゃないかなと思いました。ずっと家族内の誰かが介護・介助するという状況から、もっと社会に頼れる制度が充実していってほしいですね。
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分断をなくし、心地よい生活を実現するために
− 他にも、介助をされる中で課題だと感じたことはありますか。
社会にはバリアが溢れていて、物理的なバリアはもちろんたくさんあるのですが、それよりも「人の心のバリア」をどうやって取っていくかが重要だと感じました。
私が介助者として携わっていた方も「人間の心のバリアが一番辛い」と言っていて。例えば、階段しかない駅に行った時に、周りに助けを求めても誰も助けてくれなかったり。バスに乗るときに嫌な視線を感じたこともあったそうです。意図的ではなくとも、みんなの心の中にバリアが染み込んでしまっているんですよね。
でも、誰でもいつでも車いすユーザーになれる可能性はあって。私も以前は、「健常者」である自分には、「障がい者」の問題は関係ないと思って生活していましたが、そうではない。例えば事故や病気になったときのオプションは、生きるか死ぬかの両極ではなく、もうひとつ「障がい者」になるという可能性もあるんですよね。
−最後に、 支援する側として考える理想の暮らしの形を教えてください。
どんな人でも、無理せず心地よい生活を続けられることですね。
重度訪問介護って長時間の訪問をすることが多いんです。私の場合は1日8時間、その時間の中でその方のしてほしいこと・必要なことをするという仕事をしていました。重度でない一般的な訪問介護だと、時間が短いことが多く、やることも決まっている。食器を洗う、掃除する、料理を作るといった作業を短い時間の中でバタバタとやっていかないとならないんですね。
重度訪問介護では制度の中で“見守り”も仕事の1つとして認められているので、「今はテレビを見てるから後ろで待機してて」なんていう要望もあったりして。これをしなきゃいけないって決められていることはなくて、利用者さんが起こしたアクションに対してこっちが反応する。だからその方の生活リズムに合った本人の望む生活を実現するお手伝いができるんですよね。
そういう「受け身」というか、生活する方自身を尊重する制度って良いなと思ったし、介助者も利用者さんによって違う支援をすることで色々な経験ができました。
だから、無理せず、自分にとって心地よい時間が増えたらと思っています。そんな生活ができるようになる社会になると良いなと思うんです。
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おわりに
様々な制度が増えてきている一方で、当事者はまだ分断も強く感じているというお話が印象的でした。ハンデがあってもなくても、すべての人に「生活」という土台があり、紡いでいる暮らしがあります。だからこそ、一過性の支援ではなく、すべての人がグラデーションのように重なり合い、支え合う。SDGsが掲げる「誰ひとり取り残さない」未来を実現するためには、人と人とが心地よく交差できることが重要なのかもしれません。そんな共生社会が実現することを願うばかりです。
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