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15歳だった彼へ

(一応書いておくけど「彼」はこの写真の中にはいません)

大学時代、一応教職の資格も取っておこうと思い、教育実習に都内のとある高校へ出かけました。

行って判ったんだが、その学校は男子校で完全に授業は破壊されていた感じ。私は実習生だったからそんなには飛んでこなかったが、放送禁止用語が授業中に飛び交っていた記憶あり、はい、もちろん生徒から先生に対してね。

まあ、土地柄こんなもんだろうなあ・・と思いつつ、指導係の先生に適宜守られながら実習期間を無事に終えましたが、それまでは年長者に比較的護られてきた生活を送ってきた身としては、こういう子供たち、そしてその背後にある社会があるんだっていう事に興味津々。
確か定員割れしていたんじゃないかな。

それでも、生徒とは色々話す機会があって、(あのさあ・・一応ここは学校だし、私は先生なんだから そういう話題やめてくんない?みたいなことを何回か言った記憶有)その中で、小柄な子が

「ねえ、先生、先生、ぼくね、今度、ジャニーズからデビューするんだよ!」

って、目をキラキラさせて嬉しそうに私に話しかけてきたっけ。

「え~、すごぉ~い!いつ?芸名は?」

とか、いろいろ聞いた記憶があるんだけれども、もうあんまり憶えていない。

私は親に「芸能界=水商売」と叩き込まれているので、それを聞いた時、彼にとってはとてもいいことなんだろうなあ・と思った。というのは、周囲の子供たちが、高校生だからどこか素直な寂しさを保ちつつも教室を荒らしている中で、その子だけは嬉しそうで当にきらきら光っていたから。とても進学を目指しているとは思えないこの子たちにとって芸能界って、荒れた生活から抜け出して、なりたい自分になる為の数少ない道だという事が判ったから。

と、同時に、自分の中で「ここは自分の属している惑星ではない」ときっぱり線を引いていたっけ。

その後、間もなく彼はデビューして、TVを見ない私でもたまに雑誌の見出しなんかで名前(芸名ね)を見かける事があって、大変中頑張っているんだなあって、嬉しくは思っていた。

芸能界だけではないと思うけれども、仕事って

「道端で花を摘んでそれを病気のおばあさんのところに届ける様なものじゃない」(確か、村上春樹の小説でこういう言いまわしがある)から、そういう部分もあったのかもしれない。

特に昭和の時代では、鈍く無粋で生真面目過ぎた私には判らなかったし、ほとんどないが、それでも「おい、ここでその発言ってないよね~」みたいなことは40年近い仕事人生でたまに経験していた。

日本じゃないけれども、ホテル業をやっていた際には、上海の某外資系高級ホテルチェーンの総支配人(確かフランス人)が、フロント回りの若い男の子に対してこの種の事を散々やっていたという「噂」(だって実際に見ていないし・・)も耳にしている。それとなく観察していると、フロントでいままでは大人しくしていたかわいい子が急に出世したり、仲間に対して威張り散らしたりして、ちょっとがたがたし、暫くするとその子は辞職したりしていって、また次に新たな男の子が・・っていうのが繰り返されていた。

ジャニーズは知名度が高いからこんなに問題になったんだろうけれども、多分、この種の事って昔は結構あったんじゃないかと思う。

その子は、いろいろ苦労はしたのだろうが、まだたまにTVに出ているらしいし、ジャニーズを卒業して社会人として頑張って生きているみたい。

今回のジャニーズ公開処刑の様な騒ぎは、起こって当然だと思っている。でも残念なのは「張本人が存命のうちに」この騒ぎが起こらなかったこと。社会がそういう見えない暴力を許していたし、またジャニーズ以外のところでも、許容していたんだろうな。権力者だからしょうがないって。

そんな中で、あの目をキラキラさせて私を見上げて自分の夢を語ってくれた15歳の彼、いままでの人生を顧みて「いろいろあったけどまあ幸せ」って思ってくれているかな。そうであってほしいと思う。

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