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最近聴いたもの(2016年10月中旬)

文章最後の「★」は最大4つの、アメリカの新聞方式

Suicide Squad - The Album:21パイロッツによる主題歌「ヒーゼンズ」を始め、今のアメリカの若い層にウケるアーティストや楽曲が、ぎっしり詰まってる。大予算ハリウッド映画のサントラは昔から、その時代に沿った、若い子ウケするアーティストを揃えるのが本当に巧いのだが、これもその例外ではない。全部新曲ではなく、古い曲も幾つか混じっているが、BGM代わりのサンプラーとしては抜群の内容だと思う。パニック・アット・ザ・ディスコのボヘミアンは、左右のチャンネルの使い分けに至るまで、かなり原曲に忠実。(★★)

De La Soul - and the Anonymous Nobody:このひとたちも80年代後半から淡々と、自分たちのペースで活動しているが、その時その時に得た「世間の」ではなく「自分たちの」流行を、アルバムに自然な形で反映させてくるのが昔から巧く、4年ぶりの新作であってもその辺は全然ブレてない。ファンクとヒップホップを土台に、曲のあちこちで実験を積み重ねているが、豪華なゲスト勢の適材適所ぶりもあって、全体の流れに淀みが無く、聴き易い。またリズム面の音作りが結構太いので(TrainWreckという曲が特に)、普段ロックしか聞かない私みたいなひとも、気持ち良く聞けると思う。(★★★1/2)

Sum 41 - 13 Voices:実際に入っている曲数は10だが、かなり絞り込んだのが分かるほど、無駄が聞かれない。曲のカラーは似通っているが、山あり谷ありのメリハリが明確、加えて全体ムードもやけにシリアスなので、37分の間に太い一本筋が通っている。私はレイトショーへの出演で今回のに興味を持ったのだが、流石10年以上のベテランだけあって、視聴者200万世帯の番組相手のパフォーマンスとしては最高のものだったし、コンサートも是非観たい。最後の曲の一部が、リンキンパークのトランスフォーマー主題歌ともろにかぶっていたが(twisted by designとacross this new divideを続けて歌っても、そのままハマる)、まあアレは7年も昔の曲だし、サム本人たちも気付かなかったんだろう。(★★1/2)

TAMTAM - NEWPOESY:ソロアルバムを出した頃のフルカワミキとサフィアン・スティーブンズが混じり合ったような、深夜に聴くとぴったりハマる、気怠さと仄かな明るさを行ったり来たりする楽曲のオンパレード。ちょっとした音の仕掛けやくすぐりがあちこちに張り巡らされているので、イヤホンでじっくり聴くのにも向いている。コーヒーピープルという曲名を観た瞬間、釋英勝の怪奇グロ昭和劇画「ハッピーピープル」を連想してしまったが、歌詞そのものはいずれも抽象的なのもあって、各楽曲の不思議感を増していると思うし、ムードの統一にはブレがない。下記の、別の方のレビューも、是非参考に。(★★★)

http://sikeimusic.hatenablog.jp/entries/2016/09/23

http://matome.naver.jp/odai/2141520531812520801

Blood Incantation - Starspawn:コロラド州にはこれだけ肉厚で不気味で、危ない爽快感を与えてくれる音を淡々と出しているひとびとが居るものかと言うか、ヘビーメタルに元来必要な、本当の意味でアンダーグラウンドで真っ黒な要素が、(迂闊に触れるとかぶれる漆レベルで)ここには塗り固められてる。インタビューによると、楽器の腕前を頼りに一発録りとのことで、今の時代に逆行したこうしたやり方にも、異様な説得力がある。全5曲で35分なのがまた、イニシャルの段階で興味を持った聞き手を飽きさせない長さとして、丁度良い。一応歌詞の内容は、精神と身体の分裂や隔離を宇宙的な視点から語ったもの、との事だが、私でもまるで聞き取れなかったぐらい、ボーカルの呻きが凄いデス。(★★★)

http://www.metal-archives.com/albums/Blood_Incantation/Starspawn/587776

https://darkdescentrecords.bandcamp.com/album/starspawn

http://decibelmagazine.com/blog/2016/7/29/full-album-stream-blood-incantations-starspawn-might-be-the-death-metal-album-of-the-year

Testament - Brotherhood of the Snake:中心メンバーが'60年代生まれにも関わらず、血気盛んな音に終始してる。50代でもこれぐらい攻めの姿勢を妥協しないのは、素直に格好良いと感じるし、自分への励みにもなる。昔からこのカリフォルニアンたちは国内外の社会問題にかなり敏感なのだが、今回は全編で、それらに対して強固な反発的態度を取っているのが頼もしい。今のアメリカ大統領選挙の茶番があるからこそ、それを風刺したStrongholdみたいな強烈な一撃が出てくるわけだ。中速になるとクドい、というか足回りが悪くなる欠点も、相変わらず引き摺っているが(通して聞くと、中盤が弱い)、有無言わさず殴りかかってくるようなアタマ3曲のインパクトは絶大だし、ラストをしっかり激走で締めてくれるのも、爽快だ。(★★1/2)