(仮)会を求めて①

扉が開き、ホームへ降りる。

「あちぃー」

 そびえ立つ駅前ホテルを見上げながらボヤいてみる。海からの潮風も相まって既に肌がべたべたしてきている。
 隣駅が県庁所在地にあるので、新幹線から降りてくる乗客も多い。スーツ姿のサラリーマンが目立つ。仕事帰りの時間だ。
 と、後ろから肩を掴まれ背筋が凍りつく。恐る恐る振り返ると、デカい声が降ってきた。
 
「なんや、みお同じ電車やったんや!なんしよーん?」

 兄貴こと長野和(なごむ)は大学病院の小児科医だ。

 「兄貴かぁ…通報しようかと思ったわ…相変わらず行動がおこちゃま!」
 「妹に通報されてたまるかい。普段子どもの相手しよるからついつい。」

 こんな兄貴だが頭の方は私なんか比較にはならない。愛宕ヶ丘高校ではトップクラスの成績を誇り、大学入試も医師国家試験も現役で通ってみせた。兄貴の愛高在学時小学生だった私には「キラキラ光る自慢のお兄ちゃん」だったし、「愛宕ヶ丘に通いたい」と小学生ながらに本気で思ったものだ。今だに「みお」呼びだし、なにかと子ども扱いしてくるが、尊敬できる自慢の兄だ。
 

 「兄貴、今日仕事は?」
 「博多で学会や。昼からやったけど、質疑応答が長いでからさ…この時間っちゅうわけ。みおは?」
 「熊本よ。あたしも一応仕事帰り。」
 「見えんな。ただのバックパッカーやん。」 
 「うっさい!」

 兄妹の些細な会話も改札口までたどり着き一旦途切れた。

 「俺は乗り換えやけどみおは?」
 「私は道場行って帰る。美月さんによろしく。」
 「おう!お土産ありがとねー。」

 兄貴は新婚だ。さっさと帰って女房殿に会いたいのだろう。
 
「やっぱりおこちゃま。」

 兄貴の背を見送り、私は改札口を抜けた。

面白いアニメ聖地があれば教えてください。読者様がお望みでしたら、どこでも駆けつけ取材したいと思います。