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【映画レビュー】FALL フォール

共感できない部分も多いし、粗もあるけど、ちゃんと作ってあるなぁと感じる部分もある。評価できる部分とできない部分がかなりハッキリしている映画。

恋人を亡くしていつまでも悲しみに暮れる主人公のもとに久しぶりに友人が現れ、女二人で高い塔に登って吹っ切ろうぜ!という物語だ。
この映画には共感できない部分がたくさんある。亡くなった恋人の男性も含めて3人はクライミングが趣味だったが、その最中に落下事故で恋人の男性が亡くなってしまう。彼女は1年近くもその事故を引きずって自暴自棄な生活をしている。私はそういう趣味がないので憶測で言ってしまうのだけど、そういう命の危険がある趣味って死に近づく事を楽しむような人がやっているイメージで、だから恋人の死を1年も引きずるようなマインドになるものなのだろうか?と思ってしまう。自分のミスで恋人が命を落としたとかなら引きずるのもまだわかるけど、そういう過失もない。
そんな彼女のもとに、旅に出ていた友人が現れる。友人は旅をしながら危険な事をやって、それを動画で配信して金を稼いでいる。その友人が動画のために今は使われていない電波塔に登るので、一緒に登って恋人の事を吹っ切ってしまえと主人公を誘う。まあ、いつまでもうじうじしてるよりは、そういう達成感のある事をした方がいいのかもしれないとは思う。でも、動画のために立入禁止の電波塔に勝手に登って、あげく事故で降りられなくなって救助を呼ぶなんて迷惑な奴らだなと思ってしまう。
そもそもクライミングを趣味にしていたような人たちが、立ち往生したからといって救助を求めるばかりで自力で降りようと試みない事や、危険な事をするのに準備を怠っている事にも地味に腹が立つ。これは日本人的というか、他人に迷惑を掛ける行動については潔癖な考え方の人が多いと思う。

ただ、そういう共感できない部分はあるものの、映画として上手いなと感じる部分も多かった。まず、高所の映像が本当に肝が冷える。そういうリアリティはある。それに、結構ちゃんと伏線を引いて回収している作りとか、騙し方の上手さとか、ちゃんと映画らしい事を上手くやっている。主人公にはあまり共感できないけど、主人公の友人はまぁまぁ良いヤツだ。完璧に良いヤツって訳じゃないけど、ポジティブで良い事をいっぱい言う。

そういう良い部分を、共感できない部分と一緒くたに否定してしまうのも良くないかなと思う。悪い部分もあるけど、面白い部分もある。全部には感動できないけど、感動できる部分もある。後から考えてみると実は低予算映画だったのだろうなと思うけど、見ている時には全くそう感じさせなかったのもすごい。

『FALL フォール』 2.5

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