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【映画レビュー】アステロイド・シティ

砂漠の町のキュートな色あい、シュールで変人だけとものすごく魅力的なキャラクター、めちゃくちゃなのに何だか納得感があってどんどん期待が高まっていくのに最後にとんでもないブン投げをかますストーリー。思えばそこらじゅうにウェス・アンダーソン監督らしさが散りばめられていたのに、鑑賞後に調べるまで気付けなかったのが不思議だ。

所々でそれっぽいと思いながらも断定に至らなかったのは、劇中劇とその舞台裏の現実を行ったり来たりするやや複雑な構造のせいかもしれない。いや、劇中劇と現実を行ったり来たりすること自体は別に珍しくも複雑でもない。ただ、劇中劇と現実の切り替えで、ただでさえ難解なシュールな世界に思い切った時間経過を作り、さらに難解になっている。現実が劇中劇を補完する構造になっているようで、現実もまた難解なのだ。面白さと意味のわからなさのバランスが絶妙なウェス・アンダーソン作品だが、今作に関しては難解さが強めだったかなという印象だ。
映画のはじめに、現代演劇の内幕を忠実に再現している事を表明しているから、きっと演劇の内幕を描く事で何か訴えたい事があったのだろう。しかし私にはそれはわからなかった。だからこの映画はちょっと難解すぎたなと感じているのだと思う。

私は過去に『ダージリン急行』『ムーンライズ・キングダム』『グランド・ブタペスト・ホテル』と3作のウェス・アンダーソン作品を見ていて、いずれも大変気に入っている。この監督の代名詞は、一目見れば見ればわかるくらい個性的な映像美だろう。確かに、今回もあの砂漠の町の映像もそうだけど、何がと言われると上手く説明できないけど独特でめちゃくちゃかわいくて魅力的な景色だ。でも、それ以上に私が大好きなのは、その景色の中に存在するにふさわしいシュールでキュートで変人で愛さずにはいられないキャラクター達だ。今回の映画も、そういうキャラクター達がたくさんいた。でも、たくさんいすぎたのかもしれない。個々のキャラクターについてもっと掘り下げ欲しいと思うほど魅力的で変なキャラクターが多すぎた。

さらにウェス・アンダーソン作品の魅力の、最後にいつも予想とは全く違う唐突に思えるぶん投げ方も、なんだか今回は私にはハマらなかった。何だよそれ!って言いながらゲラゲラ笑えるところが好きだったんだけどなぁ……。

『アステロイド・シティ』 3.0

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