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【映画レビュー】パリタクシー

どうしてこんなそっけない邦題をつけてしまったんだという以外は申し分ない映画。ベタで笑えて泣ける、映画らしい魅力にあふれた万人にすすめられる作品だ。

パリのタクシードライバーの男が乗客のおばあさんとの思いがけないロングドライブの中で、彼女の身の上話を聞き人生を振り返る話。身の上を語りながら人生を振り返るストーリーはわりとよくある型で、ベタではある。でもその語られる人生の中身や、聞き手に及ぼす影響など、ありがちな中にも特別な面白さを感じる。目新しくはないけどちゃんと面白くてゲラゲラ笑えるし、想像した通りの結末だったけどちゃんと感動できる。

パリという華やかな街でも、そこを走るタクシードライバーはストレスに満ちた労働者である。そんな生活に疲れたドライバーを、酸いも甘いも全部経験してきた奔放なおばあさんがどんどん変えていくのがめちゃくちゃ面白い。なんだこのばあさん、いきなり若い頃のキスの話とか始めて……とか最初はちょっと引いてしまっていたのに、いつの間にかおばあさんの事を大好きになっている。そして、こういう只者じゃ無さそうなばあさんは若い頃から型破りなんだな……なんて尊敬のようなものを覚える。そういう特別なエネルギーを持ったおばあさんの魅力を感じられるからこそ、その影響でタクシードライバーが変化していくのに共感できる。

華やかなだけじゃないパリを描いているとは言え、やはりさすがパリだなぁという華やかな景色も楽しめる。押し付けがましくないジェンダー問題の扱い方も上手い。笑って泣いて、元気をもらえる映画だ。

『パリタクシー』 4.0

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