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【映画レビュー】パブリック・エネミーズ

銀行強盗と警察の攻防を描くクライム映画であり、ちょっとオシャレな恋愛映画でもある。実在の犯罪者、ジョン・デリンジャーの半生を描く伝記的な映画であるが、描かれている人物についての知識がなく結末を知らないため、純粋なフィクションのようにネタバレ無く楽しめる。

ジョン・デリンジャーは魅力的な男である。仲間を大切にするし、銀行強盗のやり方もスマートだ。銀行では金持ちの金だけを狙い、撃つのは警察だけだ。服装もオシャレで、女性に一途で、優しいが強引なところもあって、スマートだけど驚くほど大胆な事もする。彼が義賊である事がすぐにわかるよう、ちゃんと描かれている。
銀行強盗という悪人でありながら、女性たちが彼に惹かれるのがよくわかる。しかしそんな中で一人の女性を愛し続けるところもまた良い。キザなセリフも彼が言えばカッコいいし、言葉だけでなく行動で愛情を表現する。
そんな男をジョニー・デップが演じているのも良い。顔でごまかした見かけだけのイケメンではなく、ちゃんと行動の説得力で魅力的だと示している。さすがジョニー・デップと思わされる演技力だ。

しかし、ただ魅力的な義賊としてだけ描いている訳ではない。彼らは大犯罪者として、警察に追い詰められていく。
先頭に立って指揮を執るシカゴ警察署長を演じるのはクリスチャン・ベールだ。善人か悪人か読めないが、絶対に仕事ができる事は間違いない顔のあのクリスチャン・ベールだ。物語が進むにつれて、ジョン・デリンジャーが追い詰められていくのと同じく、追い詰めている方の彼もまた追い詰められているように多くの犠牲を払う。

犯罪者をカッコよく描き過ぎることなく、警察を無能に仕立てたりズルすぎる悪人にすることもなく、二人の男の戦いを上手く描いてある。
そして男女の恋愛も、その戦いの中でうまく絡み合って結末まで描かれている。
結末の決まった伝記的なストーリーを、納得できて魅力もある物語に仕上げてあるのが素晴らしい。

『パブリック・エネミーズ』 2.5

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