見出し画像

【映画レビュー】そして僕は途方に暮れる

どこにでもいるクズ男を描いた、あまり面白くない映画。クソっぷりを楽しめるタイプのクソ映画でもなく、なんだか消化不良だ。

まず、私はジャニオタ(STARTO)なので、所属タレントの出演作品というきっかけで興味を持って見ている。だからよけいそう思うのかもしれないけど、基本的には映画でもドラマでも登場人物を好きになりたいし共感したいと思って色んな作品を見る。そういうタイプなので、人間に魅力がないとがっかりしてしまう。
そういうわかりやすい魅力ではない愛すべきクズ男を描いているつもりなのかもしれない。でも、藤ヶ谷演じる主役のクズ男に愛すべき点を全く見いだせない。本当に普通のどこにでもいるクズ男でしかない。フィクションっぽい、特徴が強いキャラクターを避けたかったのかもしれないけど、そういうその辺にいる人を描こうと思ったら腕がいる。そういう腕力がないのに、ただ王道を避けただけの映画だ。

単に自分と趣味が合わなかっただけなのかもしれないけど、下手だなぁという印象は各所に感じた。
まず会話がつまらない。普通の人が普通の会話をしていてつまらない。どことなく劇団ノリっぽいつまらなさを感じた。個人的に劇団の人とはノリが合わない事が多いとずっと感じているのだけど、その匂いがちょっとあった。劇中で映画にまつわるメタ発言がかなりあるのだけど、それにも冷めてしまった。上手くハマれば効果的だったのだろうけど。
そもそも主人公が映画好きだった過去がある事はいろんな場面で描写されているのに、主人公の経歴や性格にそれがどう反映されているのかが全く描かれていない。映画の道を志して失敗したのか、志す勇気もなく逃げた先が今なのか、そういう過去の関わりが少しずつわかっていけばキャラクターを理解できるのに、それがない。周りから主人公の映画好きが語られるのも、周りが映画にまつわるメタ発言をする為でしかない。キャラクターやストーリーが上手く絡んでないから、単に主人公がピンチになりそうなイベントを次々発生させているだけに見える。時間が進んでも物語が深まっていかず、表層をコロコロ転がるだけだ。
それと、登場人物のしゃべり過ぎも気になる。例えば主人公が口先ばかりでなにも行動しない信用できない奴として描かれるためにしゃべり過ぎる、とかは表現としてアリだ。でも、全員がしゃべり過ぎている感じがした。これがコメディで、ムダ話も面白いならそれでも良いが、普通のキャラが普通の話をしていてしゃべり過ぎているのはつまらない。このしゃべり過ぎは、好みによるところが大きいと思うので、気にならない人も多いだろうが。

個人的には「ここがラストシーンだな」と思った部分から続きがあった映画で、そこから先が面白くてもっと良いラストシーンがあった作品には出会った事がないのだけど、この映画にもそれを感じた。全体的に脚本が合わなかった。ただこの作品、監督と脚本を同じ人が務めていて、監督の仕事の方には撮り方にこだわりも感じたし映像そのものは良かったと思ったので、この監督は良い脚本に出会えば良い映画を撮るのかもという可能性は感じた。

『そして僕は途方に暮れる』 2.0

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?