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【映画レビュー】サクラメント 死の楽園

実際に起った事件を基にした、ドキュメンタリータッチの映画。ホラー作品という触れ込みで、霊や超能力の類は出てこないものの確かにホラーを感じさせる恐ろしさがある。

とある宗教施設に取材に訪れた撮影クルーたちの持つカメラ視点で話が進む、POV方式の作品。全編が登場人物のカメラ視点であるように見せかけて、所々で上手く神視点が挟まれているのがテクニカルだ。リアルにあちこちカメラを持ち運ぶので、えげつない画面酔いに見舞われれてしまった。しかしブツブツと場面転換してリアルっぽさを演出したり、何気なく置かれたように見えるカメラの画角で起こる事に驚かされたり、POV方式を上手く生かした映像づくりがちゃんとされている。

潜入した宗教施設で事件が起こる様子を描くストーリーだけど、あまり宗教施設について深く描かれないまま唐突に事件が起こってしまったような印象を受けた。これは実話に基づく物語なので、もしかしたらアメリカでは有名な事件で鑑賞者にある程度事件の知識があることが前提で、描く必要がないという判断なのかもしれない。全く予備知識のない者からすると、もう少し宗教施設の日常をはっきりと認識してからじゃないと、突然崩壊が始まってしまった理由がぼんやりしてしまった。
ただ、教祖の男性の、押しても手応えのないもどかしい感じとか、いかにも信者が心酔しそうな雰囲気など、説得力のある場面もあった。それに、ホラーの手法なのか恐怖を描くのが実に上手い。ゆっくりじわじわくる恐怖や、突然冷水を浴びたような恐怖、無力感から襲われる恐怖など、バリエーションを感じた。

実話を基にしたせいであまりドラマチックに作れなかったのかな?と思うようなところもあったけど、なんと後から知ったが実話のほうがヤバいらしい。これより大規模で劇的な事が実際に起ったなんて……と思うと現実のホラーぶりに恐ろしくなってしまった。

『サクラメント 死の楽園』 2.5

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