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【映画レビュー】アンダーテイカー葬る男と4つの事件

この映画を気に入らない人の気持ちも少し解る。でも、私はこの映画けっこう好きだ。

まずストーリーの話をする前に言っておきたいのが、この映画の17:30ごろにストリップシーンがあってそれが本当に魅力的なダンスなので、ここだけでも本当に色んな人に見てもらいたい。ストリップとは言ったが、Noおっぱいである。他のシーンでおっぱいが出てきたり、後半にもっと過激なストリップもあるが、ダンスとしての魅力は前半のこのシーンがとびきりだ。

私はダンスが好きなので、このシーンで心を掴まれてしまってかなり肯定的にこの映画を見たが、それでもジェシカ・ビール演じる主役のローズがとんでもないヒステリックメンヘラ女で、これを受け入れられない人は多いだろうなと思った。ちなみに日本版ではエディ・レッドメインがあたかも主役であるかのような売り方だが、彼の出番はそんなに多くない。それとこの映画を見た全員が口を揃えるだろうが、バカみたいな邦題が映画の内容と全く違う。原題は『Powder Blue』である。エディ・レッドメインの謎解き映画が見れると思った女性ファンがメンヘラ女のストリップを見せられるというのも気の毒な話だ。

このメンヘラ女の気の毒な境遇に同情し、ダンスの才能に免じて彼女への怒りを抑えて見れさえすれば、この映画はわりと良くできた群像劇だ。みな失敗や悩みや後悔を抱えながらも、善良でいようとしたり誰かの役に立とうとする。エディ・レッドメインの繊細そうなオタク役や脇を固めるおじさん達も大変魅力的だが、個人的にはダイナーでウェイトレスをしている年配女性をとても気に入った。夫と離婚し、ダイナーで働いているくらいなのでそんなに暮らし向きは良くないのだろうが、悩みを抱える知人に寄り添い、クリスマス前に家を少しだけライトアップしたり、前向きな印象を受ける。しかも他人に尽くすだけでなく、自分に正直で、相手を思いやりながらもちゃんと自分の意思表示をする勇気もある。かわいくて、幸せになって欲しいなと素直に応援できる女性だ。

意味がわからないようなシーンもなく、良いことが起こったり絶望的なことが起こったりしながらストーリーは上手く進むが、結末は違うものであって欲しかった。悲劇的ではあるが救いはある、みたいな結末として描かれているが、私も含めて多くの日本人は受け入れにくいだろう。でも、最後の締め方は大切だけど、最後の締め方だけを失敗した映画の全てを否定するのも違うと思うし、納得できない部分もあったけど基本的には良くできたストーリーという印象だ。

この映画、批評家たちに言わせると『クラッシュ』や『マグノリア』など有名群像劇の劣化コピーだと、あまり評価が良くないらしい。私は『マグノリア』は未見だが、『クラッシュ』はもう10年ほど前に見た。時間が経ちすぎてほぼ内容を覚えていないが、こんな面白い映画があるのかと驚いた記憶だけはある。私はこの映画はけっこう好きだけど、『クラッシュ』とどっちを見た方がいいかを聞かれたら『クラッシュ』と答える。でも、あのストリップシーンだけは別で見て欲しいなぁ。

『アンダーテイカー葬る男と4つの事件』 3.0

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