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【映画レビュー】JUNK HEAD

ちょっと前に「現代の技術を使えば短編映画を一人の天才が作る事もあり得る」みたいな話をしたが、そう言えば一人で何年も掛けてストップモーションの映画作った人いたよなぁ……と思い出してこの映画を見た。

映画『JUNK HEAD』は堀貴秀監督が7年掛けてほぼ一人で製作した映画だ。そういう事前情報があると、やはりそれをふまえて見てしまう。つまり、文句が言いづらい。でもやはり、一人でこんな映画を作ったなんてすごい!で終わらせるのもフェアじゃないので、個人的な感想を書く。

全体的に、拙さというかプロならこうはしないんだろうなぁという部分は散見される。全てがそう、という訳ではなく、色々な所で散見されるという印象だった。カメラワークも、キャラクターの動きも、音楽も。でもまぁ、それを素人くさいと取るかこの映画にしかない味と取るかは人それぞれなので、別にまぁいいかなと思う。個人的には、ずっと味がある状態ならそういうものとして受け入れるんだけど、なんでこの部分だけ雰囲気の違う音楽を入れたんだろう?とか、今の動きだけ重力が不自然だったなとか、そういうバラつきが気になった。

ストーリーはSF的な地下世界の話だ。前半はけっこう情報が少ない状態で、あまりストーリーらしいストーリーもなく、地下生物や映像のお披露目という感じでちょっと物足りない。しかし後半は起伏のあるストーリーや伏線の回収などがあって、一気に映画らしい盛り上がりが出てきて面白かった。
もう少し前半から情報を小出しにして欲しかったのと、この作品は三部作の第一作らしいので謎が残るのは構わないんだけど、もう少しこの第一作で「なるほどぉ!」と思える情報を増やして欲しかったなと思った。別に全ての情報を手取り足取り教えることを映画に求めているわけではなくて、謎として残しておく方が面白いものと、ちゃんと説明されて納得できるものの両方をバランス良く配して欲しい。

SFって、全てを作者の思い通りに作り込める代わりに、全ての常識が常識じゃなくなるので緻密に論理的に世界観を構築しなければいけないものだと思う。グロくてコミカルなキャラクター達は独特な世界観で面白かったけど、地下世界がなぜコンクリートやスチームパンクのくすんだ世界なのか、どうやって築かれてどういうルールの中で生物達が生きているのかは三部作の中で解明されて欲しいなと思った。

まあ色々言ったけど、7年かけてこの映画を作って、今もまだ続編を作り続けているという堀監督が、ライフワークとしてこれだけ熱中できるものがあるというのは楽しそうですごく良い人生だなぁと思う。

『JUNK HEAD』 2.5

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