【映画レビュー】グレーテスト・ショーマン
話題になったけど自分は通ってこなかった作品を、流行りが終わってからのんびり見るのも楽しい。いろんな所で見かけて曲も何度も聞いた事があるのでつい知った気になってしまうけど、実際に映画を見ないと本当に知っている事にはならないし。
まず、この映画は圧倒的にミュージカルシーンが素晴らしい。ショーを扱う作品なので劇中劇のサーカスがきらびやかで魅力的なのはもちろん、街中や酒場などの歌と踊りのやりとりもとても魅力的だ。曲に乗せていろんな場面がシームレスに繋がって次々と色んな事が起こったり、ミュージカル映画ならではの映像の巧さもある。
でも、歌う事が魅力的な演出になるシーンって、やっぱり喜びや怒りや奮起などの感情を爆発させる場面だなぁと思う。悲しみや後悔を繊細に歌い上げる曲がこの世に存在しない訳ではないけど、歌わずに台詞で伝えて欲しいと思ってしまう。悲しみの曲なしでミュージカルが成立するとも思えないので、難しいとわかっていても避けられないのだろうけど。
劇中劇のキラキラゴテゴテ衣装や派手な演出を見て、やっぱり過剰なほどに着飾って歌って踊る事ってすごく価値があるなと改めて感じた。最近の風潮として、素朴で飾らないエンタメの方がカッコよくて真に価値があるように言われがちだけど、やはりそれはキラキラした過剰な非日常のエンタメへのカウンターであって、本流はやはり派手で着飾ったものだなと思う。もちろん素朴で飾らないものにも価値があるものはたくさんあるけど、それだけが本物で虚飾はフェイクでカッコ悪いという風潮が強すぎる事に疑問を感じているだけだ。
映画の中には変わり者がたくさん出てくる。日常生活の中では後ろ指をさされる人々は、サーカスの中で輝く。エンタメの醍醐味は非日常で、そこでしか見られないものに大きな価値があり、人々を魅了するんだなぁと思わせる。
まぁ、これは映画が訴えたい事からは少し外れた感想だという自覚はあるが。
ストーリーはとてもシンプルで、成功と失敗を繰り返しながら大切なものを手に入れる物語だ。成功を手に入れるって、大変だなぁと思う。どん底から這い上がっても、ほんの少しの慢心で全てを失う。持つ者には持たざる者の気持ちを理解できず、分断が生まれる。しかしそれを乗り越えた先に手に入れられるものが提示されていて、希望を感じるストーリーだ。
主役のヒュー・ジャックマン演じるP・T・バーナム、決して魅力的に描かれている訳ではないけど、たった一度、ここぞという時に献身的な行動を取る。ここぞという時に腹を括れる人間は強いな、と思った。
『グレーテスト・ショーマン』 3.0
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