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【映画レビュー】パーム・スプリングス

ジャンル的にはSFコメディって感じだろうか。でも、SFとは言ってもタイムループものなので先端科学のガジェットや未確認生命体が出てくるようなものとひとくくりにSFと言ってしまうのも違うな、と思った。「今ある当たり前を失った現実」で人間がどう行動するか、という話だ。

この映画には複数のタイムループしている人がいる。彼らは同じ一日をずっと生きる。厳密に言うと、死ぬか眠るかすると11月9日の目覚めた瞬間に戻るので、眠らないでいる間は先へ進める。しかしせいぜい数日で、寝たらまたリセットだ。
自分の記憶だけが残って、何もかもがリセットされ繰り返される世界では、失敗が怖くない。何をやっても翌日には元通りなら、どんな無茶も帳消しになる。彼らがどんどん大胆になっていくのも面白い。タイムループはイヤだけど、失敗を恐れなくていいのは羨ましいなと思う。

この世界でループしないものは、タイムループしている人たちの記憶だけだ。唯一記憶を積み重ねていく彼らはループする世界の中で同志である。一緒にばか騒ぎしたり、敵対したり、この世界をそれなりに受け入れる者とループを抜け出したい者の間で溝が生まれたり、彼らの関係性は変化する。他のものは何も変化しない世界の中で。

一ヶ所だけ意味が変わらないというか筋が通らないシーンがあったのが気になった。時空がバグってる世界なんだからアリだと主張されそうだけど、でもそれならこの部分以外にももうちょいバグが散見されないと、唐突感あるよなぁと思った。

世間の評価がやや高すぎる印象ではあるけど、気軽に見られるコメディとしても人間について深く考えるきっかけにもできる、どんな気分にも合ういい作品だなと思った。

『パーム・スプリングス』 3.0 

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