見出し画像

6月15日 晒される白人特権

2020年のBLMが始まって、これまでもときどき登場しては大拡散してきたレイシストのビデオがタイムラインに流れる頻度が上がった。

たとえば最近は、トーランスというカリフォルニアのアジア系人口の多い地域で、こんな映像が拡散した。

ワークアウト中のアジア系女性が白人の女性が罵倒されるビデオを見て、胸が痛くなった。なんという悪意だろうか。ワークアウトの様子をたまたま自分で録画していたために、白人女性が一方的にやってきて、口撃を始める様子がよくわかる。この女性は、トーレンスでアジア人を罵る常習犯だったらしい。

しかし、これを見ていて、急にはっとした。思えば、自分だってこういう目には遭ったことがあるぞ。警察に助けを求めて何もしてもらえなかったこともある。マンションの管理組合に苦情を言ったこともあった。

今回のジョージ・フロイドさんの件で、BLMムーブメントが再燃する前から、この手のビデオを見ることは珍しくなかった。ショッキングなビデオがソーシャルで拡散され、ビデオに映るレイシストの身元がTwitterポリスによって明らかにされ、そして、その人が解雇されたりして終わる、という定形がある。動画が増えているのは、そういう状況に遭遇したときに、動画を撮るという防衛法が、一般的に浸透してきたということだろう。

もうひとつここ数日の間に騒ぎになった事件がある。LaFaceというメイクアップ・ブランドの女性CEOが、自宅の壁にBLMのメッセージをステンセルしているフィリピン系の男性に近づき、違法行為をしているとして、警察に電話をすると脅したビデオが拡散したのである。「あなたはここに住んでいない」という言葉の裏には、「白人でないあなた」がこんなところに住んでいるはずはない、というニュアンスが感じ取れる。こうした事件は、おかしな人がたまにいる、レベルの話では片付けられない。これまでも、マイノリティ、特に黒人が何も悪いことをしていないのに、「ここに住んでいないに違いない」という理由で警察を呼ばれる、という事件はあまりにしょっちゅう起きてきた。2020年バージョンのBLMで、世の中の共通認識として生まれつつあるのは、「警察を呼ぶ」という白人特権行為が、誰かの命取りになることがある、ということだ。くだんの女性は謝罪をし、自分がレイシストであることに気がついたと発表した。彼女と一緒にいた夫も、勤めていた金融ファームから解雇されたという。

マイノリティがいたって普通の行動をしているのに、なにかと文句をつけて警察を呼ぶ女の人は、いつしか「カレン」と呼ばれるようになった。カレンは、白人特権の象徴だと言われている。(本当にカレンという名前の女性たちが大変気の毒である)。

こういうビデオが拡散されるのを見ると、いつもリプライを見に行く。Twitter探偵たちが、ビデオに映る人の身元を判明させるのに、大した時間はかからない。そして、その人の職場に連絡がいく。Twitterポリスは容赦がない。見ていて気の毒になるくらいなのだが、警察を呼ばれるマイノリティもたまったものではないし、白人の特権意識が誰かの命取りにつながるのだということが刻み込まれるためには仕方のないプロセスという気もする。

こういう状況に、白人たちはショックを受けている。「知らなかった」という声もよく聞く。そして、「知らなかった」ことが特権だったのだ、と気が付き始めている。だから、今、デモに驚くような数の白人が参加しているのだろう。


ここから先は

1,354字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?