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母のようなゲイ男子

ニューヨークに戻って最初の業務日は、インタビューとスタジオ・ビジットを二つ予定していて、ダンボ、ネイビーヤード、そしてハドソンヤードと、ずいぶんたくさんの距離を移動した。

最初のインタビューをセットアップしてくれたアーティストのマネジャーのMが、「もうひとり紹介したいアーティストがいる」と提案してきたので、その相手に会ってみることになったのだ。Mとは広報の会社に属していた時代からの知り合いで、今はフリーでアーティストなどの広報をやっている。彼が紹介してくるものが、ことごとく自分の趣味にドンピシャなので、彼のテイストは信用している。

最初のインタビューから、ふたつめのスタジオ・ビジットまでの距離は約15分。時間に余裕もあったので、Mの提案で、コーヒーを買って、プラプラ歩いて行くことにした。カナダ出身のMは、お母さんタイプのゲイ男子。今より頻繁に仕事をしていた頃は、たまに個人的な話などもしたが、ここ何回かはいつも誰か他の人が同席していることが多く、個人的なおしゃべりは久しぶりだ。

「そういえば、あの子とまだデートしてるの?」
とMが聞いてくる。誰だっけ?
「ほら、あのダークスキンのきれいな女の子」
心当たりはない。

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