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[TeaTime #11]イギリスの生活ってどう?『文化相違の苦い経験:職場編』

前回の記事([TeaTime #10 ]イギリスの生活ってどう?『英語の苦い経験:職場編』)で英語からの私の失敗を紹介した。

今回は、文化の相違からの苦い経験を紹介したい。

その事件が起こった当時、勤務していた大学図書館は3年をかけての建て替え工事中で、とても職場環境は混乱していた。図書館のインフォメーションデスクは狭く暗い地下1階に設置され、利用者はここから図書館に入っていく。入り口が狭いこともあり、様々な渋滞や混乱を防ぐために、地下一階の窓口は、「情報を与えたりするのみ」という図書館ポリシーがあった。

本は専門ごとに1階から3階に置かれていて、利用者は自分の専門に応じてその階に行き、本を借りたり読んだりする。自動チェックアウトはそれぞれの階に設置させているから、地下一階の窓口まで本を持って来て図書館職員にチェックアウトしてもらわなくてもよい。

本を返却する時も、1階に自動書籍返却マシーンがあり、地下一階の混乱や渋滞を防ぐために、「本を返却するときは、1階の自動書籍返却マシーンで自分で返却」の図書館のポリシーがあった。

今回の苦い経験はこの「返却」にある。

暗い狭い図書館メインデスクに座っている時、中高年の浅黒い肌の男性が私の方へ近づいてきた。

私「What can I help you?」

男性「I would like to return these books here.」

私「I am sorry, but we are currently asking customers to return books through the self-return machine on the ground floor.」

男性「Can you check in here? Coz my family is waiting for me.」

私「I am afraid not, because of the university library policy.」

というと、男性はムッとした顔で本を持って上に行って本を返しにいった。

規則は規則、全ての人に公平に同じサービスをしなければいけないと思ったから、彼のために「私が地下一階で受け取り、上に持っていく」過剰なサービスはしたくなかった。他の利用者には「自分で返却するように」お願いしているから。この人には過剰なサービスをして、あの人にはしないとなると、サービスの一貫性を保てない。ただ、身体的にハンディを持っている利用者などに対しては臨機応変に対応していた。

それから数日後、上司のJennyが「Yumiko, Can I have a word with you?(ちょっと時間いい?)」と。

私は「Yes, sure」と答え、別室に移動した。(他の人に聞かれないように彼女の配慮)

「先日貴方に本を返却するように窓口に来たアラブ系の客員教授の男性覚えてる?」

「はい、覚えています。私は規則にしたがって、1階の自動書籍返却マシーンを使うようお願いしました」

「その客員教授の男性が、それに激怒して、図書館の最高責任者と話したい、と来たのよ」

「でも、私は間違ったことはしていませんよ」

「そう貴方にはなんの落ち度もないわ。その客員教授の男性に、次席の責任者である私(女性)が対応しますと言っても、だめだ最高責任者(男性)を呼びなさい!と言い張ったの。だからStephen(最高責任者)が話したわ」

「すみませんでした」

「貴方は全く悪くはない。これは、文化の違いからきたものね」

ここで彼女が何を言いたいかわかった。

1)アラブのある国出身(あえて国は言わない)で女性蔑視(私とJenny)

しかも

2)アジア人(女性)

アジア人女性から、家族の前で「指示された」屈辱から、こういう事態になったのだろう

彼女の言葉からそんな風に行間を読めた。

私もこう思った。

思うに、彼はイギリスの大学に着任したばかりで、私生活は家族か同じ国の人たちで、イギリスにいても、自分のアラブ国の価値観や文化やしきたりで生活をしているのだろう。しかも(彼の国では)大学教授という立場でかなり尊敬されていただろうが、こんなアジアの小娘から指示されたのが我慢ならなかったのだろう。

1年間という短い期間しかイギリスに滞在しないようだが、滞在中に西欧の文化や価値観にも触れてもらいたいと思った。

上司のStephenとJennyは素晴らしい人格者で、私を責めたりしないで、優しくかばってくれた。

私はこの出来事を一生わすれない。そしてこの二人の上司のことも一生忘れない。こんな良い出会いをしたから、色んなことがあっても「イギリス人とイギリス」を好きでいられる。

冒頭の写真は散歩中に出くわした牛たち。こんなイギリスの自然も大好きだ。自然と動物が身近にある環境は心のビタミンをもらえる。


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