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[TeaTime #21]イギリスの生活ってどう?『Sorryすみません 文化』

先日、イギリスの「Thank you文化」について書いた。

その話を英人親友に話したら、「面白いわね。じゃぁ、イギリスのSorry文化も書いてみたらどう?」と言われた。「うん、良いアイディアだね!確かに、Sorry文化がある!

イギリス人の「Sorry(すみません)」文化

英人親友が「自分に非がなくても、イギリス人本当によくSorryって言うよね

次のBBCの記事と自身の経験に基づいて、このトピックについて書いてみようと思う。

The British are famous for how frequently they say ‘sorry’ – even when they’re not at fault.

イギリス人は「すみません」とどれだけ頻繁に言うかで有名だ。非がないときでさえ。

https://www.bbc.com/future/article/20160223-why-do-the-british-say-sorry-so-much

これは、教えているイギリス人学生もそうだ。

まず、自身の経験から「イギリス人学生が使うSorry」から紹介していこうと思う。

1)自分に非があるSorry
例えば、遅刻することの連絡メールや、欠席した事についての報告メール

I’m so sorry for missing the two hour session this morning,(欠席)
I am sorry for coming to the class a bit late.(遅刻)

2)自分に非があるわけではないSorry

学生からの病欠のメールへの返信

I am sorry to hear you are unwell. Hope you will get better very soon.   ↑このSorryは「謝罪」の意ではない。

逆もしかり(私が具合が悪いとき、学生からもこのようなメールを貰うことがある)

番外編で、とても不思議なケースだが、「自分が良い成績をとれなかった」ことへの謝罪。例えば、試験を受けた直後に、出来が良くなかったと感じた学生からのメールの一部:

I just wanted to email you so if I don’t do very well you’re not too disappointed.
「試験の結果で先生をがっかりさせるかもしれません。ごめんなさい

実は、この手のメールをイギリス人大学生からよく貰う。

次に、BBCの記事によると、「イギリス人は天気についても「すみません」を言う。」

It is probably the most over-used word in the United Kingdom: whether they are sorry about the weather or sorry because someone else has bumped into them, chances are your average Briton has blurted out at least one apology in the past hour or two.

イギリス人は天気についても「すみません」を言うし、「誰かがぶつかってきても「すみません」と言う。1、2時間に少なくとも一回は「謝罪」を口走る。

https://www.bbc.com/future/article/20160223-why-do-the-british-say-sorry-so-much

確かに、実生活で、天気についてもすみません」と言われたことがある。しかし、どちらかと言えば、「すみません」より、皮肉な会話の方が多い。例えば、天気がとても悪い日に「今日は素晴らしい天気ですね」と真逆のことを言う。そうすると、イギリス人は「お主やるな!」と言わんばかりにニヤリとする。その瞬間私は心の中で「ヨシッ!」と。

3)Sorryと言うべき時にSorryを言いたくない?
親友が「でも、Sorryと言わなければいけない時に、Sorryって言わない人もいるよね~」と笑いながら言った。確かにこの経験もある。

親友が言った事を、The English and their Manners.の著者Henry Hitchings氏がhis aptly-titled Sorry!の中でも、次のように述べているのも興味深い。

“The readiness of the English to apologise for something they haven’t done is remarkable, and it is matched by an unwillingness to apologise for what they have done,

やっていない事に喜んで謝罪するのは注目すべきだが、同様に、やった事に対して謝罪の気が進まないことも注目すべきだ。

The English and their Manners

日本人の「すみません」文化

さて、日本での「すみません」文化も、イギリスのSorry文化と次のような類似点があるようだ。

日本人もイギリス人のように、反射的に「すみません」と言っている」と、Kate Fox氏は自身の著書「Watching the English」でそう述べている。

Only the Japanese seemed to have anything even approaching the English sorry-reflex,” Fox writes.

日本人だけが、このイギリス人の「謝罪の反射的行動」に近いものさえ持っているように見えた。

Watching the English

確かに、日本でも、「すみません」をよく耳にする。特に、「顧客サービス」の場面。自分が悪いわけではない時でさえも、お客に「すみません」を聞くのではないだろうか。

一方で、日本では、感謝の意を表す時「すみません」を使う時もある。なぜ、日本語の「すみません」は「感謝」もカバーできるのかSorryとすみませんの語源を見てみてみよう。

英語のSorryの言葉の起源

Sorry の起源は古英語の‘sarig’(distressed(苦しんでいる), grieved(悲しんだ) or full of sorrow(悲しみで一杯)

The origins of the word ‘sorry’ can be traced to the Old English ‘sarig’ meaning “distressed, grieved or full of sorrow”, but of course, most British people use the word more casually.

https://www.bbc.com/future/article/20160223-why-do-the-british-say-sorry-so-much

南オレゴン大学言語学者のEdwin Battistella氏によると、「同じ単語でも、アメリカとイギリスの「言語の文化的違い」がある」ようだ。

We use the word ‘sorry’ in different ways,Brits might say sorry more often, but this doesn’t necessarily mean they’re more remorseful.

我々は、様々な方法で「Sorry」を使う。イギリス人はもっと頻繁に「Sorry」を使うが、これは、必ずしも、「イギリス人の方がより「罪や後悔」も気持ちを持っている」と言う意味ではない。

https://www.bbc.com/future/article/20160223-why-do-the-british-say-sorry-so-much

更に、Edwin Battistella氏は、「雨」の例を使って「自分に非がないSorryを使う時は、相手に共感を表すためかも」とも述べている。

“We can use it to express empathy – so I might say ‘sorry about the rain’,” says Battistella. “It might be that British and Canadian speakers use that kind of ‘sorry’ more often, but they wouldn’t be apologising, per se.

我々は「Sorry」で共感を表すために使っているかもしれない。例えば、「雨が降って残念ですね」

多分イギリス人やカナダ人の方が、この手の「Sorry]をもっと頻繁に使うが、それは「謝罪」の自体の意味を表しているわけではない。

https://www.bbc.com/future/article/20160223-why-do-the-british-say-sorry-so-much

自分に非がないSorryは、同じ状況下で、その気持ちを共有しあう相手への共感」を表すためのものだとすると、日本語にも通ずるものがあるのではと思った。例えば、「おはようございます」。これは、「早い朝という同じ状況(朝日を見ながら)で、「お早いですね」とお互いが共感しあう」状況が目に浮かんでくる。


日本語の「すみません」の言葉の起源

日本語の「すみません」は、「済む」の否定形「済まない」からきて、「気持ちがおさまらない」の意味。

日本語の「すみません」も様々な使い方がある。
1) 相手への謝罪:相手に失礼なことをしてしまい、このままでは自分の心が澄みきらないことを表す。
2) 感謝の意:相手に何のお返しも出来ず、気持ちがおさまらない
3) 依頼や呼びかけ:軽い謝罪の意味

日本語では、「すみません(感謝としてお返しが出来なく心が済まない)」と言う意味から「すみません」が感謝の意として使えるのだろう。

なぜ、イギリス人は反射的に「Sorry」と言うの?

では、なぜイギリス人はアメリカ人に比べて反射的に「Sorry」を使うと言われるのだろうか?それには、イギリス社会とアメリカ社会に何か違いがあるかもしれない。

BBCの記事によると、

British society values that its members show respect without imposing on someone else’s personal space, and without drawing attention to oneself: characteristics that linguists refer to as “negative-politeness” or “negative-face”. America, on the other hand, is a positive-politeness society, characterised by friendliness and a desire to feel part of a group.

https://www.bbc.com/future/article/20160223-why-do-the-british-say-sorry-so-much

イギリス社会が尊ぶことは
1)他の人のパーソナルスペースを押し付けないで尊重しあう社会
2)自身に注意を向けないで尊重しあう社会
つまり“negative-politeness”社会:それほど親しくない人と、仲が悪くならないよう相手との距離を置く話し方

アメリカ社会が尊ぶことは
1)親しみやすさ
2)グループの一員であると感じたい欲求
つまり“positive-politeness”社会:相手との距離を縮めることによって、コミュニケーションをうまく行うための方法

BBCの記事が、この観点から、「イギリス人が見知らぬ人にSorryを使う訳」を次のように述べている。

The British will say ‘sorry’ to someone they don’t know because they’d like to ask for some information, or to sit down next to them – and because not saying ‘sorry’ would constitute an even greater invasion of that stranger’s privacy.

negative-politeness”のイギリス社会では、何か尋ねたかったり、隣に座りたかったりする時、イギリス人が知らない人に「Sorry」と言う。それは、Sorryを言わなかったら、その人のプライバシーを侵害することになるかもしれないから。

つまり、相手のことを思いやる、気分を害さないようにするための「Politeness(礼儀正しさ)」からではないだろうか。

では、日本社会は?

この“negative-politeness”と“positive-politeness”の概念はとても興味深い。

これを日本社会を考えてみると、日本語には敬語があり、敬語を使うのは「親しみを表すものではなく、相手との適切な距離をとるもの(personal space)」。これは、相手を思いやる「Politeness(礼儀正しさ)」から。そういう意味からも、日本語の敬語は“negative-politeness”を示していると考えてもいいのではないだろうか。

そういう意味で、「日本社会も、“negative-politeness”ではないか」と思う。相手と適度な距離感を保ちそれを尊重し、人間関係を築いていく社会だと思う。

日本での「人の心や領域に土足で踏み込まない遠慮や、「No」を直接的に言わない日本語表現は、必ずしも、イギリス英語でのコミュニケーションや英語表現方法と同じではなくても、両方の「Politeness(礼儀正しさ)」と「相手との距離(パーソナルスペース)を尊重」の程度は、なんだか類似しているように感じる。

ここで述べた内容は、BBC の記事からの引用とあくまでも私見によるものです。

今回引用したBBCの記事





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