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続・対話への目覚め

2008年10月、夢のような半年間の研修生活が終わり、私は新しい職場へと配属されました。
古巣の財政課でも、研修でプロジェクトを立案した行財政改革に関連する部署でもない「スポーツ振興」というまったく異なる初めての分野で一から仕事を覚え、山積する課題を解決するために汗水たらす毎日が始まりました。

そんな中、半年間の研修成果を市役所内部で報告する会を企画することになり、3週連続、3回にわたって少人数での座談会形式で行うことにしました。
それぞれの回では、研修を通じて感じたことを冒頭に20分程度話した上で、参加者を2グループに分け、その日のテーマでのグループでの意見交換を行ってもらうというもので3回のテーマはそれぞれ以下の通り。
詳細は過去のブログ記事をご参照ください。

「市政において求められる市民参加とは」
https://ameblo.jp/yumifumi69/entry-12550825784.html
「よりよい行政経営を目指すには」
https://ameblo.jp/yumifumi69/entry-12550825799.html
「どうしたら仕事がうまく進むのか」
https://ameblo.jp/yumifumi69/entry-12550825803.html

振り返ってみると、実はこの座談会形式の報告会が、自分が研修の成果を活かすために進むべき道筋を明らかにしてくれたように思います。

初日の「市政において求められる市民参加とは」では、市の進めている施策・事業の現場で、市民参加の必要性や方法、効果について悩み苦しんでいる職員の姿が浮き彫りになりました。
どんな施策・事業でも、賛同する人もいれば賛同しない人もいる。
最終的にその施策・事業を実施するにあたり、その賛成や反対の意見がどのような環境下で形成され、その意見が施策・事業にどのような影響を与えるか、を十分見定めたうえで、リスク回避のための戦略を立てる、という考え方や具体的な手法が、今の我々には欠けているのではないか。
市民との「対話」が現状では不足していること、その結果、事業実施に当たって多くの負担を強いられていること、またそれを回避するためにきちんと仕組みづくりができていないことを課題として強く感じたことを覚えています。

第2回目のテーマは「よりよい行政経営を目指すには」。
この回の意見交換で感じたのは「市がどういう方向に向かっているのかがわからない」という不安や不満を抱えている職員が多い、ということでした。
どの職場でも自分の与えられた役割をこなしてはいるが、それが「何のために」「市の政策のどの部分を担うものとして」行われているのか、が整理されておらず、それを考え、理解して仕事をする、ということが習慣づけられていない。
これが組織の上下関係、あるいは横のつながりを希薄にし、みんな「たこつぼ」に入ったままになってしまっている、というのが実情だというものです。

上下の意思疎通の不足については、市長や幹部職員がもっとやれることがあるのではという指摘が多く、組織の壁や担当者同士の壁についても自分の領域だけでなく相手の領域にも興味を持ち、自分の仕事の目的とどこでどうつながるのか、想像力を持って建設的に接することが重要だ、との意見がる一方で、職場でのコミュニケーションが重要なのはわかるが、職場にそういう雰囲気がなく、自分一人では何も変えられない、という意見もありました。

当時のブログに私はこう書いています。
確かに、特に若手の職員は職場での上下関係からなかなか人を動かして職場を変革していく、ということは難しいかもしれないが、まずは共感できる仲間を増やす、というところから始めるしかない。
日ごろの仕事の中で疑問に感じることを、誰かに相談し、共感を得ることができるか。
この仲間同士の連帯を市役所全体でどう広げていくか。
自分が何をすべきか、という視点でもう少し考えねばなるまい。

この数年後に起こったことを考えると、まるで「預言の書」のようですね(笑)

そして第3回「どうしたら仕事がうまく進むのか」
研修で学んだプロジェクトマネジメントの技法について語るつもりでしたが、意見交換では「職場での人間関係」が中心となって語られる展開になりました。
最も印象に残ったこととして私は、市役所の根本的な問題として「対話不足」というベーシックな課題が横たわっていることを挙げ、これは福岡市の「Core Problem」なのではないだろうか、と当時のブログに書いています。
まさに今につながる市役所最大の問題意識を発見し、自覚したのはこの時かもしれません。

そして私はこんな決意を表明しています。
報告会を通じて「市役所かくあるべき」と偉そうに語っても、自分の行動が伴わなければ意味がない。
しかし、ややもすると自分も日々の業務に埋没し、研修で得た素晴らしい知識や経験、その中で得た「気づき」を錆びつかせてしまうおそれもある。
だが、今回の研修で改めて気がついたのは、これだけの市職員から関心を持たれている、ということは、自分にはそれだけ励まし合える仲間がいる、ということなのだ。
独りで役所を変える、なんて夢みたいな話はなかなか信じられないが、今のままではいけない、なんとかしなければ、と思っている職員一人一人の気持ちに対して自分のような人間が小石を投げ、そこから起きる波紋から、気づきの連鎖を広げていければ、少しずつゆっくりであっても確実にいい方向に変わっていくことができるのではないか。

そして私はこの回のブログをこう結んでいます。
福岡市の「Core Problem」が「対話不足」だとすると、この日の縁を、気づきを、どうこれから生かしていくのか。
それが、3回の研修会を終えた自分に新たに課せられたプロジェクトである。
まずは最低限、自分の職場で与えられた課題を解決すること。
そして、周りの人間関係、職場環境の改善を図ること。
そういった日々の仕事を通じて、仕事で接するいろんな人にこの研修の成果を感じ取ってもらえるように頑張る、というのは大事なことだと思う。
仕事以外でもいろんな人に接して、これからも「気づき」の連鎖をつなげていく場を持てたらいいな、とは思うのだが、自分一人の力でどこまでできるのか、どこまでやれるのか、もう少し考えてみよう。

これが2008年11月のことです。
私が実際に福岡市役所で、職場や立場を離れて自由気ままに語り合うことができる「ゆる~い対話の場」を開帳する2012年の5月まで、さらに3年半の歳月が流れるのです。

★「自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?」について
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