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卒業したいというけれど

異動内示なかった
これで財政課5年目突入
いつになったらカレンダー通り休めるのかな
#ジブリで学ぶ自治体財政

私は今年で市役所生活31年目を迎えましたが,そのうち財政課の在籍が最も長く,係長で5年,課長で4年,計9年も捕らわれの身になっていました。
私は幸い9年で済みましたが,以前は係員時代が7年,係長時代は5~6年が当たり前で,出戻りも含めて10年選手というのはごろごろいたように思います。
全国的にたぶんそうだと思うのですが,財政課は在籍年数が長くなる傾向にあり,過去の経験者が係長,課長として出戻るケースも他の所属に比べて多いように思います。

財政課の業務は,膨大な業務量を正確にこなし,重責に押しつぶされることなく長時間労働に耐えることができる,屈強な体と頑丈な心を持つ選ばれし者に任せられる傾向にあり,人事課はそういう目線で役所内の人材を見渡して適任者を送り込んでいるものと推察されます。
それでも激務に耐えかねて心身の不調を訴え,あるいは家庭内不和等のトラブルを抱えて短期間で異動を希望する職員も多く,人事課としてはそのようなミスマッチで欠員が生じることを恐れて長期在籍や出戻り等の手法を駆使して財政課職員の品質保持に努めていただいているのだと思います。
人事課の皆さん,いつも気にかけていただきありがとうございます。

財政課在籍時はそのことをありがたく受け止めつつも,一方で「本当にこのままでいいのか」という疑問を感じていました。
それはnoteの投稿で何度も力説している,財政課と現場との対話不足。
互いの立場が違う状態で長く固定されていると,情報の非対称性が拡大し,互いに見ているものも知っていることも違う異世界の住人になってしまい,同じ言葉を話していても分かり合えない,同じ方向を向くことすらできないというコミュニケーション不全に陥ってしまいます。
私は財政課に異動する前に,大きな予算を使うプロジェクトの進行管理をする部門にいましたので,財政課と現場のそれぞれの立場,気持ちがわかりましたが,財政課での長期在籍や企画や人事,行革といった官房部門ばかり渡り歩くことで現場感覚が失われてしまい,現場の職員との意思疎通がうまくいかないという悲しい現実もしばしば目にしました。
それはその当事者自身が悪いのではなく,おかれている環境のせいですから,当事者自身を責めるわけにいかないのですが,そういうことが積み重なると職員の中に「財政課が嫌い」という経験が積み上がり,払しょくできない悪印象として残ってしまうのです。

また,長期在籍が当たり前になると,財政課職員の仕事に対するモチベーションが上がりません。
毎年のつらく苦しい予算編成の冬を終え,やっと春が来たと喜べるのもつかの間,またあの冬がやってくる,あと何年冬を越せば自分は外に出られるのか,先輩たちがまだ順番待ちしているから自分はまだまだなのだなあ,と落ち込み,秋の勤務評定時には毎年かなうことのない異動希望を書き,課長から「あと1年頑張って」と空手形を切られ毎年裏切られて4年も5年も在籍する。
業務の量や質を考えるとある程度経験年数のある職員に任せなければ職場が運営できないことはわかりますが,私自身,係長で5年目に突入した時はさすがにかなり精神的にきつかったですね。

5年間の係長時代を終え,5年間外の空気を吸った後に出戻った財政課長時代は,相も変わらず過酷な労働環境に耐えかねて,私以外のすべての職員が異動希望を書くという異常事態も発生しました。
こんな職場に持続可能性があるわけがありません。
職員からは嫌われ,過酷な労働が不夜城と恐れられて誰も希望して異動してくるものもいない。
誰が先にこの蟹工船を降りるのか,いつ自分はこの苦役から解放されるのか,そんなことばかり考えて毎日を過ごすような職場でまともな仕事ができるはずがないし,今後,優秀な人材が集まるはずがなく,もしいい人材が異動で来たとしても定着するはずがありません。

いつか財政課は人材不足で大変なことになる。
そう思った私は,財政課の係長,係員の在籍年数を最長で4年とすることを課長として公言し,異動による新陳代謝を常態化しました。
4年に満たない者でも希望を十分に聞き,短期での転出希望もかなえました。
加えて,長時間残業の原因となっている業務の是正改善を図り,年間で30%近く時間外勤務を減らすことができました。
在籍職員の心理的安全性を確保し,ここから逃げ出したいという気持ちを持たずに仕事に打ち込めるようにしなければ,財政課の未来はないと感じたからです。
私が課長として取り組んだ具体的な事例は以下の記事をご参照ください。

財政課から出ていく異動のサイクルを短くした理由はもう一つあります。
3~4年で職員が入れ替わることで,財政課経験のある職員が役所の中で増え,財政課OBとして現場の職員と入り混じることで,現場と財政課の情報の非対称性を解消し,互いの言葉が通じるようにしたかったのです。
これは,私が別に推進した「枠配分予算」の仕組みと相まって,相乗効果を生みました。
財政課の中で何が行われているか,どんな視点で現場を見ているのかが現場に伝わり,全体最適を考え,自律経営できる組織を育てることにつながったのです。

全国の自治体では,今,財政課はどのような人事戦略のもとで運営されているのでしょうか。
財政危機を乗り越えることも大事ですが,深刻な「財政課危機」を乗り越えることも,自治体運営の屋台骨を支える組織をきちんと機能させ,維持していくためにはかなり重要な課題だと思います。

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