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続・財政課に配属された皆さんへ

予算編成時期の財政課は不夜城で
夜も昼もないんだってさ
へえ。昼夜勤務交代制なの?
#ジブリで学ぶ自治体財政

かつて私が財政課への配属を命じられた時に真っ先に思ったのは「全庁で最も忙しい職場」という噂への不安でした。
実際に異動してみてわかったことは,膨大な量の情報処理を限られた締め切りまでにこなさなければならないその業務密度。
特に11月から2月まで続く当初予算編成の時期は休日返上,深夜までの長時間勤務は当たり前で,風邪をひく暇もないと自嘲したものでした。
私は幸い無事でしたが,過酷な労働環境のなかで生活のリズムを崩し,心身に不調を来し,あるいは家庭内不和に悩み,隙あらばこの蟹工船から逃げ出したいという逃避欲求が蔓延するヤバい職場でした。

こんなことを書くと,着任して1か月も経たない現段階で,皆さんもここから今すぐ逃げ出したいという気持ちに駆られることと思います。
労働環境の改善は職場全体で取り組むもので,異動したての職員が孤軍奮闘しても限界がありますので,ある程度は覚悟しないといけないとは思いますが,それでもできることや持つべき心構えがありますので,今日はこの記事を書いています。
なお,私自身が財政課に9年間在籍していた間,この問題をどのように受け止め,どう取り組んだかについては,過去に投稿した記事をご参照ください。

財政課の業務の大半は情報の処理です。
庁内各部局から事業遂行に必要な予算について予算要求や執行協議を受け,それを財政課の組織内で共有し,その重要度に応じて必要な階層で判断し,各部局に返す。
あるいは国や県から予算編成や執行,決算等の財務状況についての照会,問い合わせを受け,庁内各部局に割り振って調査を行い,その結果を財政課で集計して国や県に返す。
財政課の業務は財政課の中で完結するものではなく,常に自分起点ではない他律的な業務としてその身に降りかかります。
そしてその忙しさの本質は「膨大な業務量」「タイトな締め切り」「正確性の追求」です。

業務量が多いなら人を増やせばいいという人もいますが,財政課が担う情報処理(例えば予算編成)は最終的には自治体単位で一つに統合される必要があり,分担して作業したものを集約するという工程の都合上,分担が細分化しすぎるとかえって非効率になることから,増員によって個人当たりの業務量を減らすことは非現実的です。
また,常に受け身の他律的な業務であるため,締め切りも他律的にならざるを得ませんし,数字を扱う仕事である以上,正確でなければならないのは言わずもがなです。
このような状況で,個人的な努力で多忙な財政課での労働時間の短縮を図る秘訣があるのでしょうか。

幸いなことに,財政課の業務の多くはルーティン。
毎年度同じ時期に,同じ業務が繰り返し行われるという性質を持っています。
ということは,反復する業務を効率化するノウハウを蓄積しやすいということ。
先輩や過去の担当者が作ったツールやマニュアルをうまく活用することで時間の短縮が図られますし,そろばんから電卓,表計算ソフトへと技術革新も進んできましたので,新たな技術の導入で集計作業の効率化を図り,ミスを少なくして手戻りを減らすといった業務の改善,効率化も可能です。
分担しているとはいえ,財政課の各担当の業務内容はほぼ同じでノウハウも共有しやすく,各部局の財務担当者とも一緒になって業務の効率化に取り組めばその成果は後世に遺せますので,ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

また,ルーティンなので年間のスケジュールが見通せるという利点もあります。
昨年度,一昨年度の年間業務スケジュールを確認し,繁忙期や比較的余裕のある時期を把握すれば,繁忙期に備えてプライベートスケジュールとの調整を図り,まとまった連続休暇を取ることも可能です。
繁忙期になると十分に時間を割くことができない懸案事項について,事業担当部局と解決に向けた検討を行ったり,予算編成時に議論になりそうな項目を前倒しで共有して議論したり,というかたちで業務の平準化を図ることも工夫次第です。
経験豊富な先輩のやり方を見習い,他律的なスケジュールを自律的にコントロールして,業務量を均していきましょう。

財政課の業務は分担によって成り立っています。
課内では担当者やラインごとに水平に分担し,事業担当部局とはその業務の流れによって前後の工程を分担します。
分担なので,自分の与えられた役割を与えられた時間内に求められる水準でやり遂げなければならないというプレッシャーはありますが,逆に分担だからこそのメリットもあります。
水平分担の場合,自分がやっていることとほぼ同じことを同じ時期に周りでもやっているということなので,わからない時に周りに尋ねやすい,一緒に考えてもらいやすいといった利点があります。
前後工程の分担の場合,普段から施策や事業について共通の情報を持ったうえで,それぞれの後工程を思いやり,自分の分担を締め切りや正確性といった水準を維持して遂行することでそれぞれの後工程の仕事がやりやすくなります。
いずれにせよ,自分ひとりでやっているわけではないので,自分ひとりで抱え込む必要がない仕事なのです。

とはいえ,これまでの職場とは質の違う忙しさに戸惑い,悩むこともあると思います。
また,長時間労働の解消に向け,個人の努力ではどうしようもない,組織全体で取り組むべき課題の大きさにおののくこともあるでしょう。
そんなときは,この投稿を見返していただき「約束が違うじゃないか」と私に文句を言っていただいても,愚痴をこぼしていただいてもかまいません。
まずは,健康第一で来年の春を笑って迎えられるよう,必要があれば個別にご相談に乗り,私にできる範囲でアドバイスしたいと思います。
もし困ったことがあったら,いつでも気軽にお声がけください。

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