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大空に羽ばたく鳥のように

ここから眺めるとまちのすべてが見えるんだね
登ってくるのが大変だからみんなあまり知らないけど
みんなにも見せてやりたいなあ
#ジブリで学ぶ自治体財政

このところの投稿で,財政課があたかも流刑地であるかのような表現になり,新たに財政課に異動になった方や今年も残留してしまった方のモチベーションをずいぶん下げてしまったのではないかと危惧しています。
確かに過酷な職場ではありますが,私はこの職場で9年間も過ごせたことを本当に感謝しています。

私の財政課時代の思い出はこれまでもいくつかご紹介してきました。
職場の労働条件の過酷さは別にして,一番つらかった思い出はこれ。

査定することだけが自分の使命だと思いこんで思い上がっていた若かりし日の苦い思い出です。

そんな未熟な粗削りの異端児が、この職場でいろんな経験を積み、先輩方、現場の皆さんに教えていただき、いろんな能力を伸ばしてもらいました。
一番成長できたと感じるのはこれ。

自己中心的で相手の話を最後まで聴かないことが欠点だった私が、気がつけば対話の場を創り、話したい人の言葉をただ聴くことだけで満足できるようになりました。

財政課では様々な事業部門の査定を担当し、9年間でいろんな事業を査定してきましたが,査定で一番印象に残っている思い出といえばやはりこれ。

財政課の果たすべき役割がおぼろげながら見えた、係長時代一番の思い出です。

そのほかにもいろんな思い出が詰まっています。
特に2002年から2007年まで,係長として財政課で過ごした時代から15~20年の歳月が流れ,あのころ思い描いていた未来が現実にどうなっているか,答え合わせができる未来にたどり着いています。
私が財政課に在籍してよかったと思うのは,財政課の職員として市政全般にかかる様々な政策立案,意思決定の現場に立ち会えたおかげで,現在のまちの姿,市民の暮らしについて,あたかも自分が手掛けてきたかのような感覚で過去から現在を展望することができるということです。

土地神話に逆風が吹き破綻寸前まで追い込まれた港湾埋立事業は起死回生の神風が吹き今や計画人口を上回る勢いの良好な市街地になりました。
老朽化した公共施設の移転再整備にも数多く立ち会いましたが、立地場所や機能、費用、事業手法など喧々諤々の議論を重ねたものが今はすべて開館し、市民に愛される施設になっています。
教育、子育て、福祉施策についても大きな転換点で関わることができ、「都市の成長」で得た果実を「生活の質の向上」に振り向け、その「生活の質の高さ」が様々な人を呼び込み、それが再び「都市の成長」を支える経済活動へとつながる好循環を作ることができたと思っています。

しかし考えてみればこれらはすべて予算を査定した自分の手柄ではなく、その施策事業を立案し、実現できるまで現場で関係者と汗をかいて走り回った事業担当部局の手柄。私はただそのプロセスを一部始終見ていたにすぎません。
自分は財政課で与えられた役割を果たしていたといえるのでしょうか。
今思うと,そうでもないんじゃないか、査定で街づくりの重要な判断を担っただなんておこがましいと反省しています。

そうすると、私は財政課で何を得たのでしょうか。
福岡市役所という巨大な組織で、どこで誰が何をしているのか、それがどういう目的で、いつからどういう経緯で始まって、どんなゴールを目指しているのか、政策分野、空間、時間軸を超えて大空を舞う鳥の目で俯瞰し、福岡のまちがどう変化し、育ち続けているかをずっと見ていられたことそのものが私の財産なのかもしれません。

もっと全体を見ましょう。
もっと俯瞰して眺めましょう。
もっと多角的にとらえましょう。
こんなことをすべての職員に投げかけることができるほどの高みに上り、その眺めを心行くまで味わうことができたからこそ、その視座から見えるものをすべての職員と共有したい、共有することで一人の千歩ではなく千人の一歩を踏み出すことができる組織になると悟ることができました。

財政課に異動になった皆さん。
財政課に残留になった皆さん。
この眺めのよい場所に立つことができるのは、皆さんの特権です。
査定で個別の事業に入り込み、経費を切り刻むことに血道を上げるのではなく、国や県の調査でエクセルシートのセルを埋めるのに夜を徹するのでもなく、財政課でしか見ることのできないまちの成長の瞬間を観察し、そのダイナミズムを体感しましょう。
限られた人生の貴重な時間を過ごすうえで、きっと得難い価値ある体験になるはずです。
財政課に在籍したのなら必ずその高みに立ち、そこから見えるものを心に刻んでください。
きっとその後の役所人生が変わるはずですし、限られた者にしかその特権が与えられないことを考えれば、その経験を活かして自分の役所人生をぜひ変えていってほしいと私は思います。

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