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超短編童話「さくらのなみだ」

 公園のさくらのはなびらがはらはらはら散っています。さくらのはなびらのかたちは、なみだのようだとユウナちゃんは思いました。カナコちゃんとけんかして帰るゆうがたです。春の終わりのいちにちの終わり、ユウナちゃんのかわりにさくらが泣いているのかもしれません。泣きやまないさくらのなみだを浴びながら、ユウナちゃんはしばらく立ちつくしていました。
 そのころユウナちゃんとわかれて歩いていたカナコちゃんのところへ、ひとひらのさくらのはなびらが流れてきました。
「あ」
 思わず声をあげたカナコちゃんのほっぺたに、はなびらがはりつきました。すると、カナコちゃんのかなしみが心からあふれだしそうになりました。カナコちゃんは、ほっぺたからはなびらをとって、だいじにハンカチにはさみました。それから、いちもくさんにきた道をひきかえしました。
 公園のさくらの木の下で、カナコちゃんはユウナちゃんをみつけました。
「ユウナちゃん」
「カナコちゃん」
 ふたりは、顔をみあわせて、にっこりわらいました。
「さっきはごめんね」
「わたしこそごめんね」
「さくら、きれいだね」
「でもかなしいね」
「うん。かなしいから、きれいなのかもしれないね」
 さくらとふたりのかなしみが、うすやみの空にすわれていきました。
 
 

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