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冨樫由美子
2021年10月31日 16:37
珈琲や人生の苦さも味わい深さもまだ知らなかった高校時代、世界は半ば本の中の言葉でできていて、抽象的なものだった。 国語の授業中、便覧を盗み読みしては未知の言葉を自分の中に蓄え、そこから作品を紡いだ。たとえば。 枕詞の一覧を見て「あしひきの」が山にかかると知るや、読んだばかりのヘミングウェイの小説に出てきた山の名にかけてみる。小説では雪だったが、キリマンジャロの「キリ」と韻を踏ませて霧にする。