アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ネタバレなしとありの魅力 感想

まずはネタバレなしの魅力
原作とも実写映画とも違った良さがこの映画にはある。物語の抑揚がしっかりあり山場は盛り上がり谷は心が沈む。気持ちのコントロールが良くできている。まず冒頭から作画のきれいさやアニメーションの見せ方がうまくて序盤から心をつかまれる。中盤と終盤にも山場がある。どん底もある。アニメでしかできないような目の表現だったり動きだったりアニメだからこその味も感じる。原作からある障がい者のつらさも描きつつ、外の世界を知らないジョゼに対して恒夫が夢を見せるところなどに前向きになれたり、夢を追いかけたくなれたり、背中を押してくれたりする作品。ストーリーも自然な流れで繋がっていて対比が効いているところには変化に泣ける。エンドロールとアフターストーリーまで素敵な話。おもしろい大阪ネタやひねくれネタなどにクスッと笑い、たびたび出てくるうまい表現が出てきて唸らされる。キャラクターも好きになれる。とてもよく現代版アレンジができた傑作映画でした。完全な○○エンドです。
ぜひ劇場で見てください。

おすすめの人は
とてもおもしろい映画が見たい方
恋愛映画が見たい方
夢がある方
背中を押してほしい方
落ち込んでいる方
挫折したことがある方
アニメが好きな方

あらすじ
海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れを自分の目で見ることを夢みてバイトに明け暮れる学生。
ある日坂道を車椅子で猛スピードで下ってくるジョゼを助ける。ジョゼの祖母によると誰かに押されたんだという。お金がない恒夫は祖母にジョゼの注文を聞くというバイトを持ち掛けれる。恒夫は留学費用のために引き受けるが、ジョゼには辛辣に当たられる。それでもだんだんと関係を縮めていくが・・・

ネガキャンについて
実写映画を見た方に少し障がい者に対して差別が足りないのがダメという方も見ましたが、そういうのはアニメ映画でもありますし、実写映画で十分やっているのでいいでしょう。というか実写映画を原作と思っている人のネガティブキャンペーンが酷すぎます。原作とアニメ映画の本質を見ずにネガキャンしないでほしいです。さらに言えば、そういった人は障がい者を下だと思っているということでしょうか。私は対等だと思っているので違和感を覚えませんでした。

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』のネタバレありの魅力

この作品は、魅力が多いのでひとつひとつ上げていきます
①抑揚がしっかりある
まず冒頭からいいんですよね。アニメをよく見ている人ならなおわかると思いますが、きれいなダイビング映像や自然な恒夫の日常描写からいいんですよ。いい感じの音楽も流れて期待感がぐっとあがります。恒夫がどういう人物かもわかる。そしてジョゼを助けるシーンのジョゼと恒夫の周りをスピード感よくぐるりと回るカメラワーク。つかみはばっちりでした。ジョゼの幻想の世界もよかったですね。
しかし海に行く途中まですこし暗くなるんですよね。四つ葉のクローバーで願いが叶わなかったり、外に出れなかったり、難しいことが出てきたり、舌打ちされたり、ぶつかられたり。
だが、映画の中で初めてジョゼが笑ったところで空気感を上手く変えて盛り上がる。空気感の変え方もうまいですね。楽しい外の世界を見せてあげる。祖母の命令に背いてまで。ジョゼがはしゃいだり自発的に笑ったりこちらまで幸せを感じる。前半の山場。
盛り上がりがいったん落ち着いたら懸念点が出てくる。少し行き違いも起きる。
しばらくして恒夫が歩み寄って仲直り。前半2回目の盛り上がり。
しかしまた祖母が亡くなったところから暗くなり恒夫の事故で気分はどん底です。このときはバットエンドかと思いました。
そこで舞がたきつけてジョゼが恒夫に夢を見せる。お返しをする。恒夫が夢に向かって歩き出す。歩き出す瞬間ってたまらないですよね。
恒夫の退院の日。この映画の唯一の悪いところ。詳しくは悪いところに書きます。
ラストのシーンの山場も最高です。
エンドロールとアフターストーリーも素敵でしたね。
懸念点も払拭されて二人とも夢に向かって歩いている完全なハッピーエンドでした。とても感動しました。

②対比表現もすごい
たくさんいい対比があるのですが、私が特に話したい3つの対比を書きたいと思います。
一つ目、ジョゼに変態と言われたときの恒夫の反応
1回目はジョゼを助けたときに変態と言われて嫌悪感をいだく。
2回目はジョゼを海に連れていくために担いだときに変態と言われるがジョゼの夢をかなえるために構わずにつれていく。
二つ目、海にきてジョゼが言うしょっぱい
1回目はずっと来たいと思っていた海を感じてしょっぱいという。
2回目は最後に過ごす海での涙でしょっぱいという。
1回目のときは恒夫との関係が近づき、夢を見始める。2回目のときは恒夫との関係がなくなろうとしていて、夢を諦める。1回目は楽しく2回目は本当につらい。
三つ目、ジョゼを助けたときの反応
1回目は恒夫に対して変態と言い、恒夫は嫌悪感をいだく
2回目は恒夫に対して大丈夫かと言い、恒夫は好きだと言う
2回目のときはかなり仲が深まっていて二人とも変わったなと感じる。成長を感じて幸せを感じます。
他にも、桜並木のときに最初はジョゼが仕事をしていない恒夫が留学することをいえてないなど懸念点があったのに対し、エンドロール後は懸念点はなくなっているところなどいい対比がたくさんあって変化に泣けました。
対比があることでより引き立つんですよね。

③前向きな気持ちになれる
外の世界を知らないジョゼに対して恒夫が夢を見せるところやジョゼの紙芝居や恒夫が歩き出すところなどに前向きになれたり、夢を追いかけたくなれたり、背中を押してくれたりする。

④アニメでしかできない表現
アニメでしかできない冒頭のシーンだったり、悲しい嬉しい目の表現だったり、幻想的な世界だったり、アニメだからこその表現がありアニメの意義を感じる。

⑤キャラクターを好きになれる
ジョゼは、はしゃいだり見栄を張ったりツンデレしたり可愛いところや恒夫のために頑張るところが好き。
恒夫は、命令に背いてまでジョゼを外の世界に連れて行ったところや自分だけで頑張るところが好き。
ジョゼの祖母は、ジョゼのために恒夫を雇ったりジョゼの幸せを喜んだりするところが好き。
は、恒夫に一途なところやジョゼをたきつけるところが好き。
隼人は、恒夫を支えてあげるところが好き。

⑥うまい表現や構成
舞がジョゼより先に映画に出演していて、ストーリー上と映画上でも先に恒夫が好きだったのはうまい構成だなと思いました。
表現は対比の方でたくさん書きましたが、恒夫がジョゼにあげたクラリオンエンゼルフィッシュが壊れたとき恒夫の夢が壊れたんだなと思ってうまいなと思いました。

⑦自然な流れで繋がっている
お金がないからジョゼのところでバイトをする。とても自然な理由です。自然にジョゼの不自由さを入れてきたり、エア切れを入れてきたり、とても自然なストーリー展開です。

⑧その他
その他ジョゼのひねくれや大阪ネタなどクスッと笑えたり一目でわかるキャラクター性だったりしっかりした車椅子描写だったり良いところがたくさんです。

悪いところ
悪いところは何と言っても最後の盛り上がりの前のときに退院したての恒夫を長時間歩かせたことですかね。最後の対比は素晴らしかったですが、隣で見ていたカップルも「めっちゃよかったけど、けが人歩かせたらあかんやろ」って言ってました。そこだけがダメなシーンですね。
変えるとしたら退院した恒夫がジョゼの家に行く途中でジョゼが下ってくるってのはどうでしょうか。道順が違うならまた工事やっててとか、より対比が増しますよね。

あとがき
やっと書きれました。もっと人気になってほしいです。
脚本やキャラデザや色彩など細かいつくり込みについてはパンフレットやNew type2月号の特別付録を買って読んでみてください。そこも良かったんだよなって思えます。


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