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着物コーディネート相談をした話

暗黙のルールに満ち溢れた世界

着物警察ということばを聞いたことがあるだろうか。夏祭りなどに慣れない浴衣を着た若い人に「なってないわね!」と厳しいコメントを浴びせかけ、着物初心者に頼まれてもいないのに「そんな着物を着てくるなんて!」と知識をぶつけて萎縮させる人たちという一種の都市伝説のような話だ。
確かに着物を着始めた頃は右も左も分からないから、母に持たされた着物や帯を着付けの先生に見せては「この着物とこの帯なら格が合っているからOK」「帯揚げと帯締めはこっちの方がいい」とアドバイスをもらい、センスのいい人(その先生のクラスには元モデルや俳優の卵も通っていた)の組み合わせを参考に自己流で合わせていた。
着付け教室を辞めた後も着物の雑誌や本を頼りに少しずつ小物などを買い集めてマイペースに楽しんでいたが、自己流でのコーディネートでいいのか今ひとつ確信が持てなかった

もちろん私が着るのは礼装ではなく、おしゃれ着の範囲だから多少ルールを外しても差し支えない。友人たちからは一般的な着物イメージであるはんなり系をほとんど着ないこともあってか、面白いセンスの持ち主と思われているようで(こんな柄とか着ているから無理もない)、コーディネートや着物の着方を相談されたり、自宅で着付けオフ会を開催することもあった。

最近は着物を着ない友人たちから「母たちの着物を整理したいんだけど、何が必要で何が不要かすら見当もつかないから、そのうち箪笥の中を見てもらえない?」という相談もあり、みんな着物との付き合い方に悩んでいるのだなぁ、と感じていた。

もしかしたら着物警察ということばはそのあたりのもやもやした感覚や着物への暗黙のルールの謎を集約した表現なのかもしれない。

ステイホームで着物と向き合う

コロナ禍で着物を着て外出という機会も激減したが、3月に久々に和服で夫とプラネタリウムへ出かけたら思いの外楽しかった。一方で着物を着る感覚がだいぶ落ちてしまったことがショックだった。




それ以来コロナが終わったら着物で出かけるためにも家の中で週1回位着物を着て手持ちの着物を見直そう!と決意した。それと同時に着物ブロガーの記事を少しずつ読むようになった。
私がマイペースに着物活動をしている間に着物ブロガーや着物You Tuberが次々出て来て興味深い記事を書き、ネット動画を配信していた。いつの間にかネットの着物界は百花繚乱だった。私が着付けを習い始めた頃とは天と地ほどの差でまさに浦島太郎状態。むしろ情報の波に溺れそう。
そんな中永遠のJガールさんという方が書いている還暦着物好き日記に度々登場する佐藤チアキ先生という方が帯締めコーディネートや上布・紬の目利き講座などを開いているという情報を知った。しかも東京でもやっている講座があるらしい!

オンラインでの相談に挑戦


残念なことに先生のことを知ったのはデルタ株が日本に上陸した頃。仕事柄コロナが落ち着くまでは文字通り不要不急の外出を避けなければならず、感染者が減ってきたらまずは人の接触が少ない勉強会に行こうかと考えていた。

ある日久しぶりに先生のブログを訪問したらなんとオンラインでの着物相談を始めるという朗報が!これなら感染を気にしなくてもいいではないですか!!やったね!!!

ということで喜び勇んで申し込んで先生から頼まれた自己紹介動画も送り、当日の朝慌てないよう前夜のうちに着物や帯などをリビングの一角に運び込んだ。

そして、参考になりそうだからと何を血迷ったのか先生に少し前にインスタグラムにアップしたアオザイ姿の画像のリンクを送信。

…先生すみません!(パーソナルカラーがウィンターで、骨格がウェーブ寄りのナチュラルだというのは分かりやすかったかと)。
他にも過去に受けたパーソナルカラー診断の結果やネットでの顔タイプや骨格診断の結果も伝えると、チアキ先生からは「洋服姿の画像も送ってください」とメッセージが届き、早速全身が写っている画像を何枚か送信して当日を迎えた。

知識や理論+経験の重要性

ビデオをつなげて挨拶が終わると早速先生の説明からスタート。事前に送ったパーソナルカラーや顔タイプの結果はどう思うか?と尋ねられたので
・パーソナルカラーについては納得している
・大人顔だとは思う。でも、ネットの顔タイプチェックではエレガントとなったが、もっとクール寄りだと思っている
・コントラストがある組み合わせの方が似合うと感じている
・小さめな柄(特に小花柄)は苦手で幾何学的な模様や個性的な柄が好み

と回答すると「ですよね」と。「それに村上さんは大人顔なんだけど、子供要素も結構混じっているからネットに掲載されている質問項目だけだとうまく結果が出ないと思います。
きちんと計測してないから顔タイプは断言できないけど、話し方や性格を踏まえると、お好きな装いは、クールとクールカジュアルの間あたりではないか?とのこと。

…あれ?これって私が発達相談などで親御さんや他機関の人とやり取りしている内容とよく似ている気が。
「うちの子は遅れているのですか?」「療育って必要ですか?」「ASD(自閉症スペクトラム症)なんですか?それともADHD(注意欠如多動症)?」といった問いかけは現場でよく質問される。
それに対して
「誰しも得意なところと苦手なところがあるのは当たり前で、個人差も大きな年代です。まずはお子さんとの生活でお互い暮らしやすくするために必要な関わりについて考えましょう」
「療育は専門機関へ行くことだけではないですから、まずはご家庭や保育園(幼稚園)でもできそうなことから取り組みましょう」
「ネットや本に書いてあるような診断基準だけでは分からないことも多いです。今日はお子さんの様子からアドバイスできることをお伝えしますね。
詳しい診断などはお医者さんがされますので、その時参考になるように今日の記録をまとめておきます」

といった答えをすることがあるが、立場が逆になると内容こそ違えども親御さんがそんな質問したくなるのも何となく分かってきた

そんなことを薄っすらと感じつつも、先生からのアドバイスに「おお!自分では思いつかないコーディネートだ!」「なるほど!こういう考え方で組み立てていくといいのか!!」と説明を聞きながら写真を取り、先生の指示に沿って(時々遅延したが)組み合わせていった。
似合う・似合わないの特徴や理由も理論立てて説明してもらえるから感覚的に分からない場合(発達障害当事者には意外といる)は参考になることも多いと思う。

似合う柄の着物
似合う柄の着物
苦手な色柄の祖母形見の着物
苦手な色柄の祖母形見の着物

オンライン相談自体は先生の説明も分かりやすく、自分にとっての万能帯や帯締めも判明したし、今度は今回相談できなかった単衣や夏物などについて聞いてみたいと考えている。
そして、今回分かったことを自分自身に落とし込んで自分なりに組み立てながら応用してみたいとも思っている。

相談はスタート

発達相談業務をしていると相談にたどり着くまでが大変な状況(予約がすぐにうまるため)だけに、相談に対して多大な期待を寄せられているのを感じることがある。
ただ、どんなに優れた相談員・支援員が相談で相手に納得の行く相談や提案をしても相談に来た人ができるようになるまで付きっきりで指導することはまずない。本当の意味でのゴールは相談に来た人が自分なりに生活に取り入れられる状況になったことだ。
(生活支援のツールやアプリは開発されているが、最終的に実行するかは結局本人の内的動機にかかっている)
そして、定期的に状況をチェックして一緒に考えるという伴走者のような役割こそ相談の意義かと私は感じている。
…ということなので、ジャンルは違えども自分の相談業務についても色々考えるいい機会だった。
先生は人気者であちこちのイベントなどでも引っ張りだこですが、とても気さくな方なのでブログやインスタグラムでの先生の着姿に惚れた方はぜひ!

追記 佐藤チアキ先生のブログに掲載いただきました!

先生のブログにも相談したことをご紹介いただきました。ありがとうございます!




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