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相手に合わせた寄り添い方



「もうッ!!なんでできないの?!」


何度も試行錯誤を繰り返すうちに
ヨレヨレになった折り紙にむかって

イライラを募らせている
7歳のむすめ。


思い通りにならない紙と指先。

どんどんくたびれていく
クリーム色の折り紙。


キーキーと
顔を赤らめて怒る姿は
威嚇するおさるさんのよう。

学童で作ってきた折り紙を
もういちど作ろうと彼女は奮闘していた。



わたしはそんな娘のとなりで

あの伝説の家政婦、志麻さんが
新しい住まいに選んだ古民家を
リノベーションしていく様子を
ワクワクしながら
テレビ画面に視線をおくっていた。


むすめっこのキーキーと騒ぐ声に
リノベーションの次の工程が
聞き取れない。


わたしにまでイライラがうつる。


「一回休憩してからやったら?」

と気分転換を彼女にすすめた。


とりあえず
静かに、落ち着いてもらいたかった。


けれども本人は全く聞く耳を持たない。
というか、逆効果。


「いーやーだーぁッ!!」


口を尖らせつつ

細切れになってきた集中力を
振り絞りながら 
細かい作業を続けていた。


朝から夕方まで1日学童で過ごしたあと。

あきらかに本人も折り紙と同様、
ヨレヨレにくたびれている。


むすめはできるまで何度も何度も
とことん挑戦する傾向がある。


あきらめない。

折り紙でつくる
ちいさなハンドバッグを
完成させたい、

その一心なのだ。






「もうやだ!!」


折り紙を放り投げ


ついに匙を投げたかとおもいきや


数秒折り紙を睨みつけて
また取り掛かる。


そんな様子をしばらく黙って
見守るわたし。

けれどもこれではいつまで経っても

落ち着いて志麻さんのリフォームを
見届けられない。


わたしはむすめが作ろうとしている
ハンドバッグの折り方は
難易度が高くてわからない。

設計図は彼女の頭の中にある。



手伝って、とも
言われていないのに
 

むすめに手を貸したら、
火に油を注ぐことに
なるかもしれないのを
覚悟の上で、彼女にこう尋ねた。



「これをここに入れたいの?」

コクリとうなずく娘。

「折り目に入れてもすぐ外れてしまうから、
テープで止めながらやるといいよ」

と、うまくできなかった工程を
手伝ってあげた。

テープで止めて形を整え
彼女に差し出すと


「わぁ!✨」とひとこと。

また次の工程に黙々と取り組んだ。


ついさっきまでメラメラと
燃え上がっていた娘のイライラの炎が
一気に消沈した。


わたしのサポートを
心よく受け入れてくれた。

その後もむすめの手先に注目しながら、
つまづいたところは手を貸し、


一緒になって結局さいごまで
ハンドバッグの完成を見届けた。

むすめはわたしと一緒になって
作り始めてからは
ごきげんさんになった。

これでわたしも
落ち着いて志麻さんのリフォームを
見届けられる。




わたしと娘は、タイプがちがう。


まずは自分でやってみたい、

できないところだけ
手を貸してほしい。

あとはそっと見守っていてもらいたい、

そんなタイプのわたし。


仕事も期限や必要なポイント、
ゴールだけ押さえて、
あとはよろしく、

困ったときはいつでも教えてね、と

放り投げてもらえると

自分のペース配分が確立されるので
やりやすい。


誰かに手を貸すときも、
察してほしい、とされるよりも

具体的にこうしてもらいたい、と
確実に力になれることを
示してもらえるほうが動きやすい。


むすめっこは、

わたしと逆だ。

察してほしいタイプ。

どうしたの?とこちらから伺い、
寄り添いながら

いっしょになって、どうする?と

相談しながら、最後まで共に
物事を進めていけると安心できる。


そんなタイプの違いを
目の当たりにした瞬間だった。


お互いに大切にしているポイントがちがう。


もし、これが逆のパターンだったら。

こどもが一生懸命取り組むそばから、

ピタッと隣に寄り添い

ここ、こうじゃない?
これならいいんじゃない?
こうするといいね、と都度

口を出し、手を貸す親、

それを求めていない
まずは自分でやってみたい、
困ったときだけ助けてほしい、
あとはそっと見守っていてほしい、と
思う子ども。




…想像するだけで
ちょっとくるしい。



相手のために、と思ってやっていたことが
裏目にでてしまうケースがある。

これは親子関係だけでなく
夫婦関係、職場、
さまざな人間関係に当てはまる。



わたしから見たむすめは

どうしてもらいたいのか
イマイチ要望が見えない、


常に一緒がいい、察してほしい、
寄り添ってもらいたい、、と


次から次と要望を重ねてくる
娘はちょっとめんどくさい、、


とおもってしまう分類だった。


自分とのタイプの違いを知ってからは

あぁ、こういうことか!

と腑に落ちて、今回のように
すこし余裕のあるときは
対応できるようになった。


子育てが、随分気楽になった。


むすめのいいところは、

わたしが困ったな、と口にする前に
察して、必要であろう物をサッと
差し出してくれる。

すごいとおもう。

これもこの子がもつタイプの良さ。

やさしいのだ。





出来上がったハンドバッグは、
すこし作り方を間違えてしまったのか

持ち手の部分のおさまりが
悪かった。


すると娘は

「ここ、切ってもいい?」と
わたしに伺いを立てると

何かにひらめいた様子で

おもむろに取手部分を
チョキン、とハサミで切った。


切り取った取手を
今度は縦に細く切り

バッグの側面に付け直した。
 


「ランドセルにしたよ♪」


とわたしに見せてくれた。


「すごくいいアイディアだね✨天才!」


右側が学童で作ってきたハンドバッグ。
左側が悪戦苦闘してつくりあげたランドセル。


わたしの手のひらに

ちょこん、と
ちいさなランドセルが
やってきた。



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