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水無月の便り


自宅から歩いて5分ほどの
近所の住宅街に

ひっそりと営む
雑貨店がある。

地元のひとの話によると
その雑貨店はOpenからもう
20年以上になるそうな。

現在は60代のおかあさんと
40代の娘さんで営んでいるようだ。


木の温もりを感じる
こじんまりとした店内では


肌に優しい手作り石鹸や
店主自ら洋裁した服、


残ったハギレで作成した
コースターや鍋つかみ


巾着、ポーチなどを中心に

豊かな手仕事が並ぶ。


ご主人が陶芸し
窯で焼き上げた
風合いのある陶器も
取り扱っている。




梅雨入り前の肌を撫でる
心地よい風が吹く
この季節を迎えると

雑貨店から
毎年企画展の便りが届く。

この時期、
見所は雑貨だけでなく


ご自宅のすぐ隣に建てられた
ちいさな建物を
ツルが覆うほど


たくさんの種類のバラの花が
咲き誇るのです。


その景色は
とても華やかで美しく


日頃から丹念に
手入れをされているのが
容易に想像ができる。




当時この地に引っ越してきて
土地感もなかったわたしは

体を持て余す3歳と1歳の
ちいさな我が子を連れて

よくこの近所を
散歩して歩いた。


あちこち動きまわる
子どもを見守りつつ


バラの花に覆われた
この素敵なちいさな建物が

とても気になった。


窓際に天井から吊るされた
ハンドメイドであろう布バック、
ドライフラワーやカゴ。

"たぶん、お店だよね…?"

と想像する。


いつもいつも

入って見たいなぁ、 

どんな商品が置いてあるんだろう…

といった具合に
気になって仕方なかった。



けれど、ちいさなこどもを連れては
とてもじゃないけど入れない。

自分のために時間を作って
ひとりでお店を訪ねる
勇気や気力もなく

月日がどんどん
過ぎていきました。






数年が経ち

子供たちからすこしずつ
手が離れるようになったころ、

実家の両親が訪ねてきた日に
父と夫に子供たちをお願いし


母を誘ってついに
その雑貨店へ足を運んだ。


じっくりと雑貨を見れるなんて
何年ぶりだろう、

とても心が弾み、
ときめきました。






それからというもの
決まってこの季節に
開かれる企画展に
足を運ぶようになりました。



昨年は都合がつかず
今回は2年ぶり。



夫に断りをいれて
週末、予定の合間に

「いってくるね」

と家族へ伝えると

当時は後追いして
わんわん泣いた
こどもたちも


今ではゲームに夢中で

「いってらっしゃい」

とちいさくつぶやくのみ。

うれしいような、
さみしいような。

複雑な母心。。


久しぶりに
ゆっくり1人で歩く
雑貨店までの道のりも

そこかしこで
当時の思い出が蘇る。


時が過ぎるのは、
本当にはやい。





雑貨店に着くと
今年も綺麗に咲き誇る薔薇の花が
出迎えてくれた。



穏やかな空気が流れる店内を
ゆっくりみせてもらい

どれにしようかと
悩むことすら楽しみつつ。

こちらの3点と
うれしいご来店特典の陶器が
我が家に仲間入りしました。

ハギレとガーゼのお手製布巾
ハギレで作られたちいさなトートバッグ
片面ずつ、異なる柄。
コーヒーカップとご来店特典の器。




買ったばかりのトートバッグに
商品をいれてもらい、

帰り道は思わず顔が
ほころんだ。

ほくほくと家路へついた。

時間にして
ほんの30分ほどの外出。


思い切って行ってみて
よかったナ。


帰宅後、

1度水で洗い流した
ガーゼ布巾を乾かすために

窓際のフックに引っ掛けた。


ひらひらと風にゆれる
柔らかな布巾を眺めながら


それはそれは
心が満たされた。


願わくは


わたしもひっそりと
地域に馴染む
雑貨店の店主に。

こんにちは、と
互いに気軽に
声を掛け合えるような

そんなやさしい空間を。



お客さまをあたたかく
お迎えしているわたしを
創造しながら


新しいカップで
珈琲を啜るのでした。


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