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既婚女性は夜に酒を飲むべきではないのか

先日、以前よく足を運んでいたバーに行き、仲の良い常連メンバーで飲んでいたときのことだ。遅れてきた飲み友達(男)に、出会いがしら「既婚者はさっさと帰れ」と言われた。

 いつも温厚な彼からそんな言葉が出るのは意外だったのだけど、だんだん彼の口調は荒くなり「こんな時間まで飲んでるお前は結婚失敗女だ」とまで言われてしまった。腹がたったけど、その男から結婚前にそんな嫌味を言われたことがなかったし、接客業を担う彼はいつも感じがいい人なのだ。結婚に対してなにか特別な感情があるのかもしれないと思い、何も言い返さずにそのまま適当にかわしながら酔っ払った。

だけど次の日になり、その次の日と徐々に怒りがこみ上げてきた。というかそもそもわたしは反応が遅い。言われた言葉に対して怒りが湧くのは、現場でじゃなく数日経ってからということが珍しくない。結局数日間かけて、なんであそこまで言われないといけないんだろうという気持ちに達した。おそらく彼が言った温度感よりも、わたしは過剰に怒っていた。

人それぞれ、お酒に対する価値観は違うと思う。ひとりで飲みたい人、誰かとしか飲まない人、仕事の付き合いツールだと思っている人、飲まないと眠れない人など。

わたしにとって、酒を飲むと言う行為はコミュニケーションそのものだ。(もしかしたら彼にとって酒は出会うためにあるのかもしれない)つまり「既婚者帰れ」という言葉を「結婚した女は、人とコミュニケーションをとるべきではない」と解釈してしまう。もっと言うと「既婚者は人生を楽しんではいけない」と言われている気さえした。

 「既婚者帰れ」に過剰に傷つく自分の中身

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過剰に傷ついている、と感じたときはいつも、自分に原因があるのかもしれないと考えるようにしているのだが、ひとつ心当たりがあった。

わたしの母は、とても苦労人だった。わたしが5歳になる前くらに離婚した母は、朝から晩までずっと働いていた。実父の記憶はほとんどないが、パチンコでもらったお菓子の景品を大量に持って帰ってくるパチンカスだったことだけは覚えている。

祖母からは「お母さんが家事が苦手だから振られた」と離婚理由を聞いていたが、わたしはずっと(かなりずっと)疑問だった。“なんでパチンコばっかりする人のために、お母さんが家事をして迎えないといけないんだろう”

なぜ男の息抜きは当たり前のものとして認められ、女の手抜きは離婚理由としてあげられるのか。しかもその言葉が、母の実母である祖母の口から、なぜわたしめがけて届けられるのか。(もしかしたら他の理由や事情があったのかもしれないけれど)

 おそらく子供ながらに男女の理不尽について嫌悪感を持ったのだと思う。当時わたしは原因不明の男嫌いを発症しており、親族内で問題になっていたらしい。祖父なども含め、弟以外の男性に対して強い嫌悪感を示していた時期があったようだ。

 いまでも、女について特定の固定概念を持つ男性(いわゆるミソジニスト)は嫌いだ。でも「既婚者帰れ」と言った彼のことは、普通に好きな(もちろん友人として)人間だった。それなのに、その一言(正確に言えばそれ以降言われた言葉のすべて)を思い出すたび、怒りが込み上げてくる。

 もしかしたらわたしは、あのとき感じた“なんでパチンコばっかりする人のために、お母さんが家事をして迎えないといけないんだろう”という違和感をそのままにしたが故に、感情がこじれまくっているのかもしれない。

こじらせ女の言い分も聞いてくれ

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わたしが今の夫との結婚を決めた一番の理由がある。それは、付き合っていても家族になっても、この人となら「お互いの人生はお互いのもの」として生きていけると思ったからだ。

 夫はわたしに干渉しない。わたしにというか、人類全員に対して強制したり「こうあるべき」を押し付けたりしない。この前なんて、どうぶつの森にはまるわたしが「無人島で暮らしたいなぁ」と言うと、「行ってきてもいいよ」と言っていたくらいだ。愛しい。わたしはそういう言葉がとてもとても嬉しいタイプの人間だ。すごい器の持ち主だと我が夫ながら思う。(突然のろけてごめんなさい!!)

彼には既婚者である女友達もいるが、聞かずとも彼がその女性に対して「既婚者帰れ」などと言うことは絶対にないと確信できる。

 けどふと思った。「既婚者帰れ」を言った男性は「自分がもし結婚していたら、嫁には早く帰ってきてほしい」という考えだったのかもしれない。

 ・・うーん、だとしてもやっぱり、それをよその家庭にも押し付けないでほしいなと思う。だってうちの夫はおそらく、”早く帰ってきてほしい”よりも、"今日はひとりか。悪くないな。なんの映画を見ようか。"と楽しむだろうし、それに我慢して帰ってこられるより、楽しかったと笑顔で帰った方が喜んでくれるタイプだ(と思う)。

 仮にそうじゃなかったとしても、申し訳ないけどわたしは自分の時間をすべて捧げることが結婚だとは思っていない。自分の人生を楽しむことは譲れないし、夫にも、自分の人生は自分で楽しんでもらいたいと思っている。

 幸せにしてもらいたいとも、幸せにしてあげようとも思わない。幸せを感じてもらえてたらいいな、とは思うけれど。

 「お互い、幸せになろうね」という結婚

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「幸せにしてね」「幸せにするよ」そういうやりとりが、わたしは昔から気持ち悪い。「わたしたち、親友だよね」という言葉も嫌いだ。

口に出すのはいいと思う。ヤッホーみたいな感じでね。言われてみるとまんざらでもないし。だけど何度もなんども確かめるように言う人は、呪いというか束縛のような心を感じてしまう。これもわたしのこじらせなのかもしれないけど。

 幸せは感じるものだし、親友は約束せずとも親友だと思う。むしろ、どちらか片方だけがそう思っていたとしても別にいいと思っている。

そんな感じで、わたしの夫婦の在り方は「幸せにしてね」「するよ」じゃなくて「お互い、幸せになろうね」だ。夫は「幸せにするよ」なんて絶対に言わないけれど、たまにふと「幸せ?」と聞いてくる。そのほんの少し気にしている姿勢が、わたしは気に入っている。

 既婚女性は夜に酒を飲むべきではないのか

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しつこい性格なので、最後にもう一度この問いに戻る。ぜひこの記事を読んだみなさまのご意見も聞かせていただきたいのだが、わたしの中の結論は「既婚だろうが未婚だろうが、お酒を飲んで人生の幸福度が上がるなら飲めばいい」である。

 楽しむことが罪な属性や人種なんていない。酒が好きなら飲めばいい。ただし、酔って暴れたり、自力で帰れずに夫に迎えにきてもらう等、人に迷惑をかけている場合は考えた方がいいけれど。

 あと既婚未婚問わず、彼氏や夫など同居人が「飲みに行かないでほしい」と言う(考える)タイプの場合は、話し合うべきだとは思う。なぜ行かないでほしいのか、"飲みに行く"ことの価値観はお互いどんな風なのか、頻度の問題なのか酒癖の問題なのか、飲む場所や相手が問題なのか、など。

 要は、大事な人を傷つけてしまうなら、それは話が別。ということで。一緒に暮らす人が嫌がっているのなら、ちゃんと向き合わなければいけないと思う。

 けどお酒って美味しいし楽しいし、酒場で出会った人と、中身のない話をすることでクリアになる悩みだってある。

 そもそも極論「既婚者は酒を飲んではいけない」という法律はないのだ。それでこの話は終わりにしたい。(ご意見待ってます)

 ※この記事は2020年7月に書いたものをリライトしています。

【お詫び】

この記事を見た友人(男)ふたりから「もしかして俺?ごめんなさい」と連絡があったのですが、びっくりするくらいいつも気持ち良く乾杯できるふたりだったため逆にごめんなさいという気持ちです<(_ _)>記事に登場する方は、最初から最後までずっと説教モードで、はたから見ても「え?」ってなるレベル。酔って覚えてないかも、くらいの発言は気にしませんので、お気軽に軽口くださいませ。


 

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