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【東京工業大学2021年度前期入試数学第2問】楕円に内接する正方形

東工大の第2問はタイトルにある通り、楕円に内接する正方形を求める問題です。なかなか凝った誘導ですが、そのおかげでかなり解きやすくなっています。

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東京工業大学 本館
2011年5月19日、03撮影、Wikipediaより

問題

xy 平面上の楕円
   E: (x^2/4) + (y^2) = 1
について,以下の問に答えよ.

(1) a, b を実数とする.直線 l: y = ax + b と楕円 E が異なる2点を共有するための a, b の条件を求めよ.

(2) 実数 a, b, c に対して,直線 l: y = ax + b と直線 m: y = ax + c が,それぞれ楕円 E と異なる 2点を共有しているとする.ただし,b > c とする.直線 l と楕円 E の 2つの共有点のうち x 座標の小さい方を P,大きい方を Qとする.また,直線 m と楕円 E の 2つの共有点のうち x 座標の小さい方を S,大きい方を Rとする.このとき,等式
   →(PQ) = →(SR)
が成り立つための a, b, c の条件を求めよ.

(3) 楕円 E 上の 4点の組で,それらを 4頂点とする四角形が正方形であるものをすべて求めよ.

解答解説

この問題、直感的には E に y = x を代入して x = y = 2√5/5 が求まるので、P(-2√5/5, 2√5/5), Q(2√5/5, 2√5/5), R(2√5/5, -2√5/5), S(-2√5/5, -2√5/5) が出てくると思います。

しかし、これがすべてであるかを問われると考えてしまいます。そこをきちんと議論しようというのがこの問題。(1) と (2) はそのための誘導問題です。ちょっとごちゃごちゃとしてますが、やってることは単純です。

(1) は直線 l の式を E に代入して判別式で終わりです。実際、代入すると次のようになります。

(x^2/4) + (ax + b)^2 = 1 すなわち x^2 + 4(ax + b)^2 = 4 から
{4(a^2) + 1}(x^2) + 8abx + 4{(b^2) - 1} = 0  …①

4(a^2) + 1 > 0 であるので、①は x の2次方程式で、この2次方程式が異なる2つの実数解を持てばよいので、判別式を D とすると次の条件が出てきます。

(D/4) = (4ab)^2 - {4(a^2) + 1} × 4{(b^2) - 1} > 0
4(a^2)(b^2) - 4(a^2)(b^2) + 4(a^2) - (b^2) + 1 > 0
よって、4(a^2) - (b^2) + 1 > 0

(2) は方程式 ① を解いてみます。すると、x = [- (4ab) ± 2√{4(a^2) - (b^2) + 1}]\{4(a^2) + 1} が得られるので、P と Q の x 座標を x(P) と x(Q) で表すと、
x(P) = [- (4ab) - 2√{4(a^2) - (b^2) + 1}]/{4(a^2) + 1}
x(Q) = [- (4ab) + 2√{4(a^2) - (b^2) + 1}]/{4(a^2) + 1}
が得られます。同様に、S と R の x 座標を x(S) と x(R) で表すと、
x(S) = [- (4ac) - 2√{4(a^2) - (c^2) + 1}]/{4(a^2) + 1}
x(R) = [- (4ac) + 2√{4(a^2) - (c^2) + 1}]/{4(a^2) + 1}
が得られます。ここで、(1) と同様に 4(a^2) - (c^2) + 1 > 0 が条件として出てきます。

4点 P, Q, R, S の y 座標をそれぞれ y(P), y(Q), y(R), y(S) で表すと、P, Q は直線 l 上の点、R, S は直線 m 上の点であるので
・y(P) = a x(P) + b,   y(Q) = a x(Q) + b
・y(R) = a x(R) + c,   y(S) = a x(S) + c
となります。したがって、
・→(PQ) = ( x(Q) - x(P), a{x(Q) - x(P)} )
・→(SR) = ( x(R) - x(S), a{x(R) - x(S)} )
であるので、→(PQ) = →(SR) である必要十分条件は x(Q) - x(P) = x(R) - x(S) が成立することになります。

x(Q) - x(P) = 4√{4(a^2) - (b^2) + 1}/{4(a^2) + 1} かつ x(R) - x(S) = 4√{4(a^2) - (c^2) + 1}/{4(a^2) + 1} であることから、b^2 = c^2 すなわち (b - c)(b + c) = 0 が成立することとなりますが、b > c であることから b + c = 0 となります。

また、b + c = 0 すなわち b = - c であるとき、(1) の条件から 4(a^2) - (c^2) + 1 > 0 が導出されるので、求める条件は 4(a^2) - (b^2) + 1 > 0 かつ b + c = 0 (ただし、b > c) となります。

(3) はまず、(1) と (2) の条件を使えることを示す必要があります。それがないと減点でしょう。

楕円 E 上の4点で、それらを4頂点とする四角形が正方形となるものを P, Q, R, S とおく。このとき、直線PQ と直線PS は垂直であることから、少なくともどちらか一方は y軸と平行ではないことになります。

そこで、一般性を失うことなく直線PQ は y軸に平行でないと仮定します。このとき、直線PQ の方程式は y = ax + b とおくことができ、直線PQ と平行である直線SR の方程式も y = ax + c とおくことができます。さらに一般性を失うことなく b > c とおくことができます。

ここで、四角形PQRS が正方形であるとき、→(PQ) = →(SR) であることから、(2) より 4(a^2) - (b^2) + 1 > 0 かつ b + c = 0 が成立します。特に、b + c = 0 より c = -b となります。また、b > c より b > 0 となります。

このとき、→(PQ) = (4√{4(a^2) - (b^2) + 1}/{4(a^2)+1}) × (1, a) となり、→(PS) = (x(S) - x(P), a(x(S) - x(P)) + (c-b)) = (b/{4(a^2)+1}) × (8a, 8(a^2) - 2{4(a^2) + 1}) = (2b/{4(a^2)+1}) × (4a, 1) が得られ、四角形PQRS が正方形であることから ∠QPS が直角なので、→(PQ)・→(PS) = 0 すなわち、4a + a = 5a = 0 より a = 0 が得られます。

ここで、√{4(a^2) - (b^2) + 1} > 0,b > 0,4(a^2)+1 > 0 であることに注意してください。

さて、a = 0 と b = -c から →(PQ) = 4√{1 - (b^2)} × (1, 0) かつ →(PS) = 2b × (0, 1) が得られます。PQ = PS から 16 × {1 - (b^2)} = (2b)^2 が得られるので、5(b^2) = 4 すなわち b = 2√5/5 > 0 が得られます。

a = 0,b = 2√5/5,c = -2√5/5 を (2) の x(P), ..., y(S) に代入することで、
(-2√5/5, 2√5/5), (2√5/5, 2√5/5), (2√5/5, -2√5/5), (-2√5/5, -2√5/5)
が求まり、これが唯一の解となります。

感想

この問題は、計算はちょっと面倒かもしれませんが、問題そのものは特に難しくはないと思います。自然な流れで解答していくことが可能です。

この問題は誘導なしで、すなわち、(1) と (2) なしで解くのが少々難しいと思います。上記の4点を求めることはできますが、解がそれ以外にないことを示すのが簡単ではない。

対角線の交点が O であるときに解は上記の一組しか存在しないことは簡単に示せますが、問題は対角線の交点が O にしかならないことを示すことです。

真面目に考えたわけではないですが、それを示す良い方法が現時点では見つからないので、この誘導は妥当だと思います。

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