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【名古屋大学2021年度前期入試数学(理系)第1問】見かけより重い問題

さて、大学入試も早大、東大、京大、東工大、一橋大ときましたが、今度は名古屋大学を取り上げることにしました。ときどき強烈な変化球を入れてくるのでちょっとだけ期待しています。

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名古屋大学東山キャンパス
2016年4月17日、DrKssn撮影、Wikipediaより

問題

a を正の実数とする。放物線 y = x^2 を C1,放物線 y = -x^2 + 4ax - 4a^2 + 4a^4 を C2 とする。以下の問に答えよ。

(1) 点 (t, t^2) における C1 の接線の方程式を求めよ。

(2) C1 と C2 が異なる2つの共通接線 l, l' を持つような a の範囲を求めよ。ただし C1 と C2 の共通接線とは,C1 と C2 の両方に接する直線のことである。

以下,a は (2) で求めた範囲にあるとし,l, l' を C1 と C2 の異なる 2つの共通接線とする。

(3) l, l' の交点の座標を求めよ。

(4) C1 と l, l' で囲まれた領域を D1 とし,不等式 x ≦ a の表す領域を D2 とする。D1 と D2 の共通部分の面積 S(a) を求めよ。

(5) S(a) を (4) の通りとする。a が (2) で求めた範囲を動くとき,S(a) の最大値を求めよ。

解答解説

それほど難しい問題ではないですが、決して舐めた問題でもないです。入試らしい入試問題です。

とはいえ、(1) は必要ないでしょうとツッコミを入れたくなりましたが。苦笑

y = x^2 を微分すると y' = 2x となるので、接線の方程式は y = 2t (x - t) + t^2 すなわち y = 2tx - t^2 となります。

(2) はまず、C1 と C2 の共通接線 = C1 の接線が C2 に接する、と考えればよいので、(1) の方程式が C2 に接するためには C2 の共有点がちょうど 1 つである必要があります。(また、ちょうど 1 つのときに接します。)

ということで、C2 の方程式 y = -x^2 + 4ax - 4a^2 + 4a^4 に (1) の式を代入します。

すると、x^2 + 2(t - 2a)x + (4a^2 - 4a^4 - t^2) = 0 という x の2次方程式が得られますので、この方程式の判別式D1 = 0 となればよいことになります。よって、

(D1)/4 = (t - 2a)^2 - (4a^2 - 4a^4 - t^2) = 2t^2 - 4at + 4a^4 = 0 … ①

が得られます。共通接線が2本存在するということは、この t の2次方程式が 異なる 2 つの実数解をもつことに等価であるので、判別式を D2 とおくと、

(D2)/4 = (2a)^2 - 2×4a^4 = 4a^2 (1 - 2a^2) > 0 … ②

が得られます。a > 0 より a^2 > 0 であるので、1 - 2a^2 > 0 すなわち a^2 < 1 が得られ、再び a > 0 より 0 < a < √2/2 が答えとなります。

(3) はまず2本の接線を求める必要があります。そのため、式① の解を求めると、t = (2a ± √{(2a)^2 - 2×4a^4} )/2 = a ± √{a^2(1 - 2a^2)} が得られます。

そこで、α = a + √{a^2(1 - 2a^2)},β = a - √{a^2(1 - 2a^2)} とおいておくことにします。このとき、(2) の範囲から α - β = 2√{a^2(1 - 2a^2)} > 0 であることに注意してください。

さて、2本の共通接線の方程式は y = 2αx - α^2 … ③ と y = 2βx - β^2 … ④ となるので、この交点を求めると ③ - ④ より

2(α - β) x - (α - β)(α + β) = 0 すなわち x = (α + β)/2 = a

③ × β - ④ × α より

(β - α) y = αβ (β - α) すなわち y = αβ = 4a^4

が得られ、交点の座標は (a, 4a^4) となります。(α - β ≠ 0 であることに注意)

(4) は β < a < α であることから、C1 と y = 2βx - β^2 と x = a で囲まれた部分の面積を求めればよいので、x^2 - (2βx - β^2) = (x - β)^2 より、

S(a) = ∫_{β}^{a} (x - β)^2 dx = [(1/3)(x - β)^{3}]_{β}^{a} = (1/3)(a - β)^{3} = (1/3) × {a^2(1 - 2a^2)}^{3/2}

が得られます。

(5) は 0 < a < √2/2 の範囲での S(a) の最大値すなわち a^2(1 - 2a^2) の最大値を求めればよいので、z = a^2 とおくことで、g(z) = z(1 - 2z) の 0 < z < 1/2 の範囲での最大値を求めればよく、g(z) = -2z^2 + z = -2{z - (1/4)}^2 + (1/8) となるので、z = 1/4 のとき g(z) の最大値 g(1/4) = 1/8 が得られ、a^2 = 1/4 すなわち a = 1/2 のとき S(a) の最大値 S(1/2) = (1/3) × (1/8)^{3/2} = √2/96 が得られます。

感想

個々の問題を見ると大した難しい問題はないのですが、1つのパッケージとしてみると時間がかかりそうで面倒な問題かもしれません。

こういう問題はいかに効率よく処理していくかがカギで、まずは慌てないことです。

意外と (2) と (4) あたりでつまずく受験生も多そうですので、確認をしておくとよいでしょう。

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