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【お茶の水女子大学2020年度前期入試数学(理学部、文教育・生活科学部)第1問】対数の基本的な使い方

今回は対数の問題を取り上げたいと思います。基本的なことを復習するにはちょうどいい問題です。ただし、最後の問題は慎重を期してください。

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お茶の水女子大学 南門
2006年5月4日、Lombroso撮影、Wikipediaより

[問題] 以下の問いに答えよ.ただし,必要があれば,
   0.3010 < log 2 < 0.3011, 0.4771 < log 3 < 0.4772
であることを用いてもよい.
(1) 3^{53} の桁数を求めよ.
(2) 3^{53} の最高位の数と 1 の位の数をそれぞれ求めよ.
(3) |3^{53} - 2^{m}| が最小となる整数 m を求めよ.
(注) log の底は 10 です。問題文には底が明記してありましたが、log_{10} と書くと見にくいので省略しました。

問題を解く前に、log 2 ≒ 0.3010、log 3 ≒ 0.4771、log 7 ≒ 0.8450 は覚えておくといいでしょう。基本です。

なぜこの 3つかというと、log 1 ~ log 10 を計算するのに十分だからです。

log 1 = 0
log 2 = 0.3010
log 3 = 0.4771
log 4 = log(2^2) = 2 log 2 = 0.6020
log 5 = log(10/2) = log 10 - log 2 = 1 - 0.3010 = 0.6990
log 6 = log(2×3) = log 2 + log 3 = 0.7081
log 7 = 0.8450
log 9 = log(3^2) = 2 log 3 = 0.9542
log 10 = 1

さて、まず (1) ですが、3^{53} の桁数を計算するには 3^{53} の対数をとれば分かります。

log 3^{53} = 53 log 3となりますが、53 × 0.4771 = 25.2863 < log 3^{53} < 53 × 0.4772 = 25.2916 であるので、log 3^{53} の整数部分は 25 となります。よって、それに1を加えて 3^{53} の桁数は 26 となります。

(n桁の最小の数は10^{n-1} で、この対数を取ると log 10^{n-1} = n-1 となるので、桁数と対数の整数部分には 1 だけ差ができます。)

(2) の最高位の数も log 3^{53} を見れば分かります。ただし、今回は小数部分が必要になります。

log 10^{25} = 25 < log 3^{53} < 25.3010 < log 2×10^{25}

が成立するので、最上位の数は 1 となります。

1の位の数はmodを使えばいいでしょう。

3^{0} mod 10 = 1
3^{1} mod 10 = 3
3^{2} mod 10 = 9
3^{3} mod 10 = 7
3^{4} mod 10 = 1

となるので、あとは繰り返しです。よって、1の位の数は 3^{53} mod 10 = 3^{4×13+1} mod 10 = (3^{4})^{13} × 3^{1} mod 10 = 3^{1} mod 10 = 3 となります。

(3) は 3^{53} = 2^x を解いてみましょう。すると x = 53 log 3 / log 2 となり、

83.9797... < x < 84.0252...

が得られます。ここでいきなり m = 84 としないでください。答えは 83, 84, 85 のいずれかにはなりますが、厳密性を要します。ここまでが下調べ。

m = 84 であることを示すためには、3 × 2^{82} = (2^{83} + 2^{84})/2 < 3^{53} < (2^{84} + 2^{85})/2 = 3 × 2^{83} を満たせば十分なので、これを示します。

・log 3 × 2^{82} = log 3 + 82 × log 2 < 0.4772 + 82 × 0.3011 = 25.1674
・log 3 × 2^{83} = log 3 + 83 × log 2 > 0.4771 + 83 × 0.3010 = 25.4601

ですが、25.1674 < 25.2863 < log 3^{53} < 25.2916 < 25.4601 であるので、log 3 × 2^{82} < log 3^{53} < log 3 × 2^{83} すなわち 3 × 2^{82} < 3^{53} < 3 × 2^{83} が成立する。

したがって、|3^{53} - 2^{m}| が最小となる m = 84 である。

最後の問題は、対数の差がすぐに絶対値の差に結びつかないため、別途上記のような議論が必要となります。それだけ気を付ければ難しい問題ではないでしょう。

特に (1) と (2) は基本的な問題なので、(共通テストも含めて)数学を必要とする受験生は必ず解けるようにして下さい。

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