見出し画像

【東京工業大学2021年度前期入試数学第4問】ちょっと面倒?な空間ベクトル問題

第4問は球面上の4点の位置によって決まる数を最大化する問題です。一見すると複雑で難しく見えますが、誘導問題が丁寧なので割と簡単な問題になっていると思います。

画像1

東京工業大学 本館
2011年5月19日、03撮影、Wikipediaより

問題

S を,座標空間内の原点 O を中心とする半径 1 の球面とする.S 上を動く点 A, B, C, D に対して
   F = 2(AB^2 + BC^2 + CA^2) - 3(AD^2 + BD^2 + CD^2)
とおく.以下の問いに答えよ.

(1) →(OA) = →a,→(OB) = →b,→(OC) = →d,→(OD) = →d とするとき,→a,→b,→c,→d によらない定数 k によって
   F = k(→a + →b + →c)・(→a + →b + →c - 3→d)
と書けることを示し,定数 k を求めよ.

(2) 点 A, B, C, D が球面 S 上を動くときの,F の最大値 M を求めよ.

(3) 点C の座標が (-1/4, √15/4, 0),点D の座標が (1, 0, 0) であるとき,F = M となる S 上の点 A, B の組をすべて求めよ.

解答解説

基本は素直に解くことです。

(1) ですが、AB^2, BC^2, CA^2, AD^2, BD^2, CD^2 を →a,→b,→c,→d で表します。ここで、|→a| = |→b| = |→c| = |→d| = 1 に注意してください。

・AB^2 = |→b - →a|^2 = |→a|^2 + |→b|^2 - 2(→a・→b) = 2 - 2(→a・→b)
・BC^2 = |→b|^2 + |→c|^2 - 2(→b・→c) = 2 - 2(→b・→c)
・CA^2 = |→c|^2 + |→a|^2 - 2(→c・→a) = 2 - 2(→c・→a)
・AD^2 = |→a|^2 + |→d|^2 - 2(→a・→d) = 2 - 2(→a・→d)
・BD^2 = |→b|^2 + |→d|^2 - 2(→b・→d) = 2 - 2(→b・→d)
・CD^2 = |→c|^2 + |→d|^2 - 2(→c・→d) = 2 - 2(→c・→d)

これを F の式に代入すると次のようになります。

F = 12 - 4{(→a・→b)+(→b・→c)+(→c・→a)} - 18 + 6{(→a・→d)+(→b・→d)+(→c・→d)} = -2(→a + →b + →c)・(→a + →b + →c) + 6(→a + →b + →c)・(→d) = -2(→a + →b + →c)・(→a + →b + →c - 3→d)

したがって、F = k(→a + →b + →c)・(→a + →b + →c - 3→d) のように書くことができ、k = -2 となります。

(2) は F を次のように表記するとわかりやすいと思います。

F = -18 {(→a + →b + →c)/3}・{(→a + →b + →c)/3 - (→d)}

ここで、→g = (→a + →b + →c)/3 とおくと、F = -18 (→g)・{(→g) - (→d)} となります。ここで、→g は三角形ABC の重心を表します。

F をさらに変形すると次のようになります。

F = -18 { |(→g) - (→d)/2)|^2 - |(→d)/2|^2 } = -18×|(→g) - (→d)/2)|^2 + (9/2) × |→d|^2 = -18×|(→g) - (→d)/2)|^2 + (9/2)

したがって、→g = (→d)/2 であるとき、Fは最大となり、M = 9/2 となります。

ここで、→g = (→d)/2 となる4点A, B, C, D が存在することを述べる必要がありますが、それは (3) を解くことで示すことにします。

(注) 線分ODの垂直二等分面と S の共通部分である円周上に正三角形になるように3点A, B, Cを取ると、正三角形ABC の外心=重心(→g)はODの中点(→d/2) と等しくなります。

(3) は座標を当てはめればいいだけです。

→g = (→a + →b + →c)/3 = →d/2 より →a + →b = (3/2) × (→d) - (→c) = (7/4, -√15/4, 0) と書けます。したがって、実数 s, t, u を用いて A, B の座標(→aと→b)を ((7/8) + s, (-√15/8) + t, u),((7/8) - s, (-√15/8) - t, -u) と書くことができます。

この2点はS 上にあるため、次の2本の式が得られます。

・{(7/8) + s}^2 + {(-√15/8) + t}^2 + u^2 = 1
・{(7/8) - s}^2 + {(-√15/8) - t}^2 + u^2 = 1

この式の両辺を足すと (s^2) + (t^2) + (u^2) = 0 が得られるので、s = t = u = 0 となります。よって、A と B の座標は同じで (7/8, -√15/8, 0) となり、これが唯一の解となります。

感想

この問題も計算がちょっと面倒かもしれませんが、誘導問題が素直なので、解くのに困ることはないと思います。

強いて難しい点を上げれば (2) で F = 9/2 となる 4点A, B, C, D を示すことですが、(3) がその一例になっているため、(2) で独自に示す必要はないと思います。一言、「(3) によって存在を示す」と断ればいいでしょう。

ただし、もし (3) が解けなかった場合には、(2) の中で独自に存在を示す必要があると思います。

ちなみに、(2) は →e = →a + →b + →c とおいて、
  F = -2 (→e)・(→e - 3→d) = -2|(→e) - (3/2)(→d)|^2 + (9/2)
と変形することも可能かもしれません。

しかし、→e = (3/2)(→d) が成立するかどうかが問題となり、結局、→g = →e/3 とすることになるだけだと思います。それはあまりにセンスがないと思います。

この問題は (1) がなければ難しいですが、(1) のおかげでかなり簡単になっています。ですので、東工大の受験生にはこの程度の問題で苦戦して欲しくはないです。

(ただし、誘導問題が悪いとは思いません。必要な問題であったと思います。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?