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おんなのひと 七

 小学生の頃、デパートに久しぶりに行って、母親にワンピースを買ってもらった。決して裕福な家庭ではなかったから、デパートでワンピースなんて初めて買ってもらった。かわいいワンピースを買ってもらったことに心躍らせながら歩いていると、裕福でいつも華やかな服を着ている友達がいるのが見えた。自分はとっさにトイレに入って持っていた紺色のワンピースに着替えた。せめて会ったときは、格好のいい姿を見せたいと思ったからだ。着替え終わって鏡で見てみるとそのワンピースは小学生には上品で、白い丸襟がかわいく思えた。でも、よく考えるとむしろ不自然なのではないかと思い始めて、よりその友達に会いたくなくなった。裕福な友達を見つける度に母の手を引いて逃げた。母は何をそんなという表情をしていたが一応ついてきてくれた。大人の女性服の売り場でその子を見つけたとき、母親が服を買うか悩んでいて、その母を移動させるのは悪いと思い、1人で売り場の服の間に隠れた。どうやら遠くに行ったなと思って、出ていこうとした時、突然、肩を叩かれた。振り返るとその子だった。その子はニィと笑って、「何してるの?」と高い声で言った。私はこの時、絶望を知った。

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