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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜         P65

5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑥

「へぇ……今日はウェルカムドリンク制じゃないんだ」
そう呟いた黒田さんは我々を振り返って
「席に荷物や飲み物を置いてから食べ物を買いに行きませんか?」
と、提案した。
「オマカセシマス」
本当に何が何だかわからない。

 黒田さんはカトラリーがセットされたトレイをかかえて飲み物が瓶で並んでいる場所に進んだ。
「好きな飲み物を選んで買って席に行きましょう」
 そう言って彼は日本の銘柄のビールを1本購入した。
 野崎課長もビールを購入し歩いていく。
 私もビール…できることならドイツのビール!
 …にしたいがドイツ産のビールはあいにく無かった。
 まぁ…当たり前か……。
 だが別に日本のビールも嫌いではない。
 だから彼らに倣って日本の銘柄(ブランド)のビールを購入する。
 ジャンはジャンで「何でワインが無いんだ……」と、呟くとやっぱり日本の銘柄(ブランド)のビールを手に取った。

「日本の夏はビールだよ。ジャン」
「わかってるよ…。でもワインが良かったんだ」
 私はジャンの肩を叩いて慰めた。

 我々は黒田さんの後に続き止まっていた特急列車に乗り込んだ。
 どっからどう見ても日本の一般的な特急列車の車内だ。
 まさか…動かないよな……。
 ドキドキしながら席を探す。

「あ、ここだ」
そう言うと黒田さんは2つ繋がっている席を"クルッ"と回転させて向かい合わせにセッティングした。

「か…勝手に動かしちゃって良いんですか?」
「ん、こっちも私達の席だから大丈夫だよ」
「良かったら窓側の席を使いなよ。ホームの様子が良く見えるから」
 野崎課長にまで促されて私もジャンも窓側の席にビールと荷物を置いた。
「財布だけ持って行けば大丈夫だよ。食べ物買って来なくちゃ」

居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑦ へ続く。


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