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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜         P66

5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑦

 黒田さんに誘われるまま財布を持って列車から降りる。
 ホームのあちこちにはワゴンが設置してあり看板や大きな液晶画面で食べ物を調理している様子が流れていた。
 つまりワゴンを屋台風に飾り付けたなんちゃって(フェイク)屋台だ。

「なんかいつもより照明が暗い感じがします」
「夜祭仕様なんだろうね」
 ふ〜ん……
 【いつも】はどんな様子なのだろう……。
 後で聞いて見なければ……。
 しかし暗めの照明は幻想的な演出になっている。
 なんちゃって屋台の液晶から流れている画像が柔らかく光り、屋台自体がボンヤリと佇んでいるかのように見えた。
「お! タコ焼き発見」
「祭りと言えばタコ焼きだよね」
 日本人二人は勝手にもりあがっている。

 私達が屋台に近づくと浴衣姿の女性が接客をしてくれるようで声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。タコ焼きは如何ですか?」
「一つ頼むよ」
 黒田さんも野崎課長もニコニコとタコ焼きを買っている。
 だが、私はタコは食べる物ではないと頑なに信じている。
 ついでに魚介類も食べ物ではない。
 別にアレルギーが有る訳ではないが小さな頃に無理矢理食べさせられてから食べられなくなってしまったのだ。
 日本で一番困った事が食事に当たり前に魚介が使われている事だったりする。
 当然、寿司は食べられない。
 最近は肉がネタの寿司も有るのでそういう寿司なら食べている。
 もちろん魚介だと知らなければ食べた事もある。
 タコ焼きは…知らずに食べた事が有ったが、タコが入っていると知ってからは食べていない。
 やっと鰹節や昆布や練り物が平気になったところだ。

居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑧ へ続く


 


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