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【苺色の結実-Playlist】ピアニスト片山 柊

先月から始めたプレイリスト+コラム企画。第二回目は「苺色の結実」です。

3月といえば年度末、卒業、引越し、新生活への準備、環境の変化など、当てはまる人々にとっては忙しく落ち着かないひと月だと思いますが、そのような中で気温も上がり始め、僕自身は期待や希望を感じられるような不思議な感覚の中で過ごす事が多いです。

ヘッダーの写真は、僕が上京する際の引越し荷物を載せた様子の写真です。地元が北海道の小樽で、3月といえばまだ雪も残っていて寒く、僕の中で冬というイメージがありましたが、東京ではすっかり春ですよね。

このプレイリストも初めは冬に寄せた選曲にしようと思っていたのですが、東京で過ごす暖かな気候に引っ張られて、先月より明るいプレイリストになりました。楽しんでいただけたらと思います。そして、今回から曲目横の音符をクリックするとYouTubeにある音源に飛べるようにしました。全曲フル尺で聴けます(笑)。

M1:Rei Harakami - joy  (♫)

1曲目は尊敬するRei Harakamiで始めます。Harakami氏の音楽は構造が複雑ながらも、音響はシンプルですごくキャッチーなのが魅力と感じます。氏が急死した2011年のRISING SUN ROCK FESTIVALで、砂原良徳氏がこの曲を完コピをしていた映像を見つけました。

M2:Anna Meredith - Killjoy (♫)

「Joy→Killjoy(興ざめ)」タイトルの繋がりを意識しました。こういう事をクラブDJはよくやっているんですよね(笑)。Anna MeredithはBBC Promsの音楽やBBC Scotish Symphony Orchestraのコンポーザー・イン・レジデンスなどアカデミックな分野で活躍する一方、電子音楽も手掛けている作曲家です。

M3:Chassol - Odissi, Pt. III (Farewell) (♫)

3曲目に「Ⅲ」が入り「Farewell(別れ)」がタイトルに付けられている、このプレイリストにシンデレラフィットな一曲。Chassolはパリのコンセルヴァトワールで学んだのちジャズに転向したキーボーディストで、ビヨンセの妹、ソランジュのアルバムに参加していたのをきっかけに知りました。ライヒっぽいピアノのリフが好き。

M4:SND - 4 (♫)

しつこいようですが、4曲目に「4」とついた曲です(笑)。この曲が収録されているアルバムの中では一番好きで最近よく聴いていたのです。マニアックなこだわりなんですが、2~4曲目まで連打するリズムや音型が特長なのを共通点に繋げました。これは多分言わないと聴き出してくれないだろうな…(笑)そして、SNDのメンバーMark Fellのライヴ見てみたいな〜…

M5:Jacob Mann - Sloth Dream (♫)

Jacob MannはLA在住の鍵盤奏者で、以前Kieferのサポートで来日した際に生演奏も聴いた事があります。彼が主宰するビックバンドも有名ですが、ソロではRoland Juno-106(大好きなシンセです)の音色のみで構成される新たなジャズを提案してくれています。今回選んだ「Sloth Dream」もその一つで、タイトルを訳すと「ナマケモノの夢」。

M6:Iannis Xenakis - Pléïades Ⅳ. PEAUX (♫)

ここまで電子音楽、ジャズと続きましたが一気に現代音楽にシフトします。建築家で作曲家のクセナキスですが、僕はクセナキスの打楽器作品が好きで、この「プレイアデス」は実演を聴いた事があり、感銘を受けた作品のひとつです。打楽器ということもあり、曲のピークはすごく音が大きいんですよね。その迫力に圧倒されてしまうのと、特に現代音楽は特殊な楽器や奏法が多く見られるので、実演に立ち合った方が楽しめると思います。

M7:Visible Cloaks - Cave (♫)

Visible Cloaksはポートランドを拠点にする電子音楽のユニットです。日本の環境音楽に造詣が深いようで、作曲家・尾島由郎とアルバムの制作も行なっています。アンビエントや環境音楽の好きなところは、広い空間を感じさせるところで、特に外で聴くと音と音楽の境目が曖昧になる感覚が心地よいです。

M8:Nick Luscombe - Tokyo Spring Birdsong (♫)

アンビエントで音と音楽の境目が曖昧になったところで、フィールドレコーディングにたどり着きました。おそらくタイトルにある通り東京の春の音風景でしょう。これは今回ディグっていてたまたま出会ったもので、この曲が収録されているコンピレーションがリリースされているUKのレーベル「nonclassical」の主宰は、かの有名なセルゲイ・プロコフィエフの孫、ガブリエル・プロコフィエフなのです。ガブリエルもまたロンドンを拠点にする作曲家であり、代表作として「ターンテーブル協奏曲」などがあります。

M9:John Carroll Kirdy - Blueberry Beads (Live at The Blue Whale) (♫)

John Carroll Kirdyもソランジュのアルバムに参加していたのをきっかけに知ったキーボード奏者です。先述のKieferやJacob MannとともにJohnもLAのアーティストなのです。LAのジャズシーンはここ最近すごく熱くて、Louis ColeMoonchild 、Sam Gendel など名を挙げればキリがない程です。

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いかがでしたでしょうか? 今回はインスト多めでお送りしました。ちなみにこういった選曲のノウハウは沖野修也の「DJ選曲術」という本を昔読んで身に付けました。ご興味のある方はぜひご一読を!

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片山 柊
北海道札幌市出身。小樽市で育ち7歳よりピアノを始める。東京音楽大学(ピアノ演奏家コース・エクセレンス)を首席で卒業し、現在同大学院修士課程2年在学中。第64回全日本学生音楽コンクールピアノ部門中学生の部全国大会第1位、第41回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、および聴衆賞ほか受賞多数。2018年ワーナークラシックスジャパンよりアルバム「Landscapes」を発表。日本各地のほか欧州でのリサイタルやコンサート、東京フィルハーモニー交響楽団ほかオーケストラとの共演も重ね、ソロに限らず室内楽の分野でも積極的に活動している。これまでにピアノを日向加代子、斉藤香苗、音楽理論を浅野宏之の各氏に師事し、現在ピアノを武田真理、東誠三、広瀬宣行の各氏、室内楽を藤原亜美氏、和声を土田英介氏に師事。
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