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生きる意味などなくていい


「生きることの意味」という大テーマと「幸福感・幸せとは」との関係について考えてみました。

【アリストテレスのキネーシスとエネルゲイア】


私の現在の生き方のバックボーンともなっている思想としてあらためて紹介したい。

それは
人は幸福を求めるから生きられるのか?
それともそうした目的や意味を考えずに、ただ目の前の“今”を生きること自体に幸せがあるのか?
という問いかけに対する考察とも言える。

キネーシス

幸せの定義を、目標(ゴール)を手に入れた時に味わう感覚であるとし、それを求めるのが人生の意味と考える。

例えば『 登山の目的 は頂上に辿り着くこと 』という考えで、この場合ヘリコプターでてっぺんまで行けば、効率的にも最高の結果となるわけだ。
この考えかたをキーネーシスと呼んだ。

エネルゲイア


『登山の目的は、頂上までのルートで、高山植物を見つけたり、周りの景色を堪能したり、途中の休憩でのコーヒーを味わったりすることにある』 とする考えをエネルゲイアと呼んだ。

生きる上で、日々の営みを繰り返すなかで、ふと感じるものが“幸せ“であるという考えである。
   


エネルゲイア説を支持する諸説

⚫️ニーチェの超人・永遠回帰

『過去に自分に訪れた至福の日々。その記憶をもう一度味わいたい。だからそれ以外の永遠に繰り返される虚しい日々も耐えられる。』
この内容には難解かつ長尺の前段があるが、ここでは以下の解説にとどめたい。
……この至福体験というものは、前後に脈脈と続く無意味に思える日々とセットになって存在する。すなわちその日常がなかったらその至福体験も存在しない訳である。

⚫️禅の教えにも通ずる

    坐禅のめざすところは、意識を“今”の瞬間にのみ置くことである。
未来を思えばどうしても不安がよぎり、過去を思えば後悔がどうしてもつきまとうという、人間の危機管理上の習性こそが、その根拠である。したがって次の結論が導かれる。
『今の瞬間は一切の不安もない究極の安らぎである』

この不安のない瞬間の連続が一秒であり、一時間後であり、さらにその一時間の連続が今日一日である。
この考えの延長として、『人生には何も心配することがない』
という究極の悟りに至るわけである。

禅の瞑想は、これをさかのぼって究極の瞬間にのみ全意識を集中する。
それは一切の過去と未来の存在を意識から排除するための修行なのです。

【私の結論】


自己啓発本の多くは、目標設定こそが成功の必須要素であるとしている。
たしかにこのモチベーションがあるからこそ前に進むエネルギーが生まれるのかもしれない。
ただし、それにとらわれ過ぎた時の弊害として、精神の疲弊によるメンタル疾患がある。
すなわち、つい効率の最大化に走りすぎてしまうことが原因なのだ。
したがって、目標を目的とするのでなく方向性を定めるための指標としてのみ意識すべきだろう。
その上で、そこへ向かっての道程を着実に歩みながら、その過程で繰り広げられる目の前の景色をじっくりと味わうこと。ひいては行為そのものが“幸せ“と知ることである。

もう一つこの考え方の良いところがある。
目標が目的になってしまうと、成し遂げられなかった場合、失望でしかなくなる。それまでの過程の一切が無駄だったという解釈になるわけだ。一言で言うとその人生は“失敗“と言うことになってしまう。
ところが、エネルゲイアの場合、歩んできた道程の一つ一つ全て
に失敗という概念が当てはまらない。ということは成功の連続である。
すなわちその人生は“成功”というわけなのです。

結局逆説的に、意味など考えずに「目の前に繰り広げられる瞬間瞬間を味わう」ことが、意図せずともその人にとっての『生きる意味』になっているともいえるのではないだろうか。


【「夜と霧」で描かれた、生きる意味】


「生きる意味」の考察については、もう一つヴィクトール・フランクルが著書、夜と霧で語った言葉も重要です。

それは『人生にもともと意味などというものはない。あなたが人生からどのような意味を持たせるかを問われているのだ。』
すなわち生きていく上で、自ら意味を探し出すことを人生の側から要請されている、というわけである。

過酷なアウシュビッツの中で生き延びた人たちの、最大の理由として、その心のありようこそが生死を分けたと教えてくれている。
その心を支えたのが、自ら「このために私はなんとしても生きなくてはいけないのだ」という意志だったのです。

もちろん一人一人の歩みは異なっている。したがって目的や意味は全く違ったものとなる。まさに神からあらかじめ人間に突きつけられている“生きる意味”は存在しないということをフランクルは伝えているのです。


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