幸せであれよ

私の恋愛対象には同性も含まれる。
そのことに気づいたのは大人になってからだ。
異性との交際しか経験のない私には同性へのアプローチがわからない、いや、そもそも人を好きという感情がここしばらく皆無だった。私には異性であれ同性であれ自分からアプローチするなんて発想がなくなっていたのだ。

今、好きな人がいる。相手は職場の同僚で、同性だ。
彼女は色が白くて背が高く、アイドルグループにいそうな清楚で可憐な美しい容姿をしている。一目ぼれだった。
彼女を目で追うようになっていろんな面を知った。
ただ容姿が優れているだけじゃなく、いつもニコニコしていて聞き上手で喋りかたも優しいこと、他人のいいところを見つけて言葉にするのが上手なこと、マルチタスクに対応ができて頭の回転が速いこと、勉強熱心で資格もいくつか取っていること。
私が”こうなれたら”と思うそう言った意味でも理想の女性だった。
だけど彼女は自分に自信がないのだと言う。自分が嫌いなのだと。
彼女は自分のことを話すときだけ、自虐的なことを言った。私がどんなに「あなたは素敵です」と伝えても信じてもらえないのをとてももどかしく感じた。

彼女には恋人がいるそうだ。相手は男性だ。
そのうち結婚することになるだろうと言っていた。
こんな素敵な女性に恋人がいないわけがないと心の準備はしていたつもりだったけど、いざ彼女の口から聞いたとき私ははっきりと動揺して言葉に詰まった。やっぱり聞かなきゃよかったと思った。
彼女は恋愛として彼のことを好きなわけではないと続けた。
彼女の言葉をここでそのまま書くことはしないけど、なんというか、恋はしてないけど結婚相手として安心して付き合っていける相手ではあるようだった。彼女が求めているのは心が浮足立つような恋愛ではなく、将来的にも安定して共に生活を送れる男性なのだ。
彼女も、それに私も、そんな年頃なのだった。
彼女は将来のことを考えている。
私が何も考えてなかっただけか。
そんな彼女に自分の気持ちを伝えることはできない。
私の独りよがりな気持ちを押し付けられたら彼女はめちゃくちゃに困ることだろう。拒絶されるのも怖い。
彼女の言ってくれる「好き」を都合よくとらえて、もしかしたらこの気持ちに応えてくれるかもしれないと淡い期待をしたこともあった。
でもそんな夢みたいな展開があったとして、彼女の人生に責任がとれるか?多分とれない。私にはその覚悟がない。その恋人から彼女をかっさらって、幸せに暮らしていける未来がまったく想像できない。
私はあくまで仲の良い同僚でいることを選んだ。

私も自分に自信がない。自分を好きになれなくて苦しい。
卑屈で臆病で悲観的で、人間性も容姿もキャリアやスキルも何も自慢できるものがない。正直彼女の自虐の内容は私にも心当たりのあることばかりで、聞いていて共感してしまうことばかりだ。
だけど彼女には自信を持ってほしい。勝手なことを言うようだけど。
自分が知的で優しくてチャーミングで素敵な女性であることに気づいてほしい。苦しまないでほしい。彼女は優しいからたくさん傷付いてきたのだ。

人生を一緒に歩むのは私ではないのだろうけど、彼女が選択した方向が幸せに溢れた道であってくれ、とわりと本気で願ってる。

人の心配してる場合じゃないんだけどね

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